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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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あたしの彼はご主人さま(3)-5
2006年05月01日 (月)
「そりゃ、多少の知識は必要だけどさ。でも大丈夫だよ。俺だって最初はなんにも知らなかったし」
 千紗ちゃんなら大丈夫だって。
 その声があまりにも真面目すぎたから、あたしは思わず眉をひそめた。
「本気で言ってるの?」
「うん、結構。よそにバイトに行くくらいなら、俺のところへ来てよ」
 ユーキさんがそう言ってくれるのはとても嬉しいけど、あたしだってできることならそうしたいくらいだけど、でも。
「でも、本当は違うんだよね」
 意地悪かなとも思ったけど、でもあたしはそれを言った。案の定、ユーキさんは黙り込んでしまったけど。
「ユーキさんは、ホントはあたしと一緒に仕事がしたいんじゃないよね」
 ユーキさんは、ホントはあたしの能力を認めてくれてるわけじゃない。
 高校生相手に仕事の話をして、学校のレベルがどうとかって問題じゃないくらい、あたしにだってわかる。そうじゃなかったら会社で新人研修なんてする必要ない。千紗ちゃんなら大丈夫って俺の仕事手伝ってってユーキさんの言葉は、そう言う意味じゃなくって。
 もっと単純な望みがそこに隠れてるだけ。
「逢いたいね」
 言っちゃいけないと思うよりも先に口から滑り出てしまった言葉は、心からの願い。
「――うん。逢いたいね」
 ぽつりと呟くようなユーキさんの声にあたしは息を止める。
「ごめん。もうちょっとだから」
 言いにくそうな苦しそうな響きに、本当は泣きそうになったけど。
「うん。待ってるから」
 信じてるから。
 信じてるから、平気じゃないけど大丈夫。あたしはまだ我慢できる。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-6
2006年05月02日 (火)
 その日は、店長の奥さんが体調を壊したということで、どうしてもとお願いされて模擬テストのあとにアルバイトに出た。
 あたしのバイト先のお店は、最近どこかのフリーペーパーで口コミ紹介されて以来、繁盛しているらしい。あたしが着いたときには、日曜のお昼過ぎだと思えないほどのお客さんが狭い店内にいた。慌ててブラウスの袖をまくってエプロンと三角巾をつけてレジ前に立つ。次々に並べられるパックの値段を打ち込んでいるうちに時間は過ぎて、そして気が付くと天井近くのスピーカーから閉店間際の「蛍の光」が流れ始めていた。
 気のいい店長のおじさんに、ありがとう、助かったよ、またよろしくねと頭を下げられて、ちょっといい気分であたしは暗くなった道を辿る。
「あー、疲れたー」
 呟くように言いながら、鞄を片手にあたしはてくてく歩いた。なんだかとてもいいことをしたような、すごく頑張って働いたような気がしていた。
 家への帰り道は、たまには車が走ることもあるくらいの狭い生活道路で、すれ違う人も犬を散歩させてるみたいなのどかさで、当然だけれどあたしは無防備だった。後ろを誰が歩いているとか気にしてなかったし、その人があたしの腕をいきなり取るなんて、全く思っていなくて、だから。
「こんばんは、千紗ちゃん」
 ぐいと抱き寄せる腕とその声に、金縛りに遭ったように動けなくなる。聞き慣れた響きと見慣れたシルエットに、一瞬ユーキさんかとも思ったけど。
「ひさしぶり。元気だった?」
 明るく笑うメガネの奥の細まった目とタバコのにおいに全身が硬直した。


  -つづく-
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ゴールデンウィークですからねっ☆
2006年05月02日 (火)
 おはようございます、にゃおです☆
 ゴールデンウィーク始まりましたね!
 ということで、ダーリンが明日からお休みなんだそうです。えーと、そういうことで、どれくらいの割合で更新できるかわかりません。
 というのも、第三部が始まって以来、全然書き溜められないのです。毎日が綱渡りなのですっ!うわーい、新聞小説みたいー☆
 そんなわけで、気が向いたらまた覗きに来てやってくださいね☆

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 にゃお頑張りますねvv
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あたしの彼はご主人さま(3)-7
2006年05月03日 (水)
「きゃあっ……」
「おっと、それは勘弁して」
 痴漢と叫ぼうとした口を彼は片手で簡単に押さえた。あたしの顔を覗き込み、そして気障ったらしく左眼を瞑って笑って見せる。
 相変わらず、一瞬見とれるくらいにユーキさんそっくりだけど、でもどこか違う。この人は、目の奥に冷たいものがあるような気がする。笑ってるときでも、本当は笑ってないような感じがする。
 怖い人なのはもう知ってるから、だからあたしが勝手にそう思い込んでるだけなのかもしれないけど。
「おとなしくしてくれれば、怖いことしないから。ね?」
 言いながら強く抱き寄せてきた。その言葉なんて何一つ信用できないけど、でも徐々に強まってくる力に、あたしは仕方なく頷いた。
 ここで騒いでもこの人はすぐに逃げちゃうだろうとは思うけど、でももし警察沙汰とかになったらまずいのはあたしも一緒。この人はともかく、ユーキさんに迷惑がかかっちゃう。
「よしよし、嘘ついたらダメだよ」
 そういうの、俺は許さないからね?
 耳元で囁く、優しい声が怖い。目で肯定を伝えながら細かく何度も頷くと、口を押さえていた手が離れた。顔をそむけて大きく息を吸い、呼吸を整える。
「あ、あの。こっちの手も放してください」
「んー? どうしよっかなー」
 楽しそうな言葉と一緒に、腰に回した腕の力が強まる。思わず「ぐえ」と変な声が出たあたしをまじまじと見て、そして彼は弾けるように笑い出した。
「千紗ちゃんってホントおもしろいなー。可愛い」
「放してったら!」


  -つづく-
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お言葉いただきましたv
2006年05月03日 (水)
 おはようございます、にゃおです☆
 いいお天気ですねー。って全国的にはそうじゃないのかな? にゃおがいるとこはいい天気なんですけど。
 ちなみにダーリンは隣でゲームしてます。格闘ゲーム。とても楽しそうです。お腹すいたなーとか言いながら、でもしつこくゲームしてます。
 こういうとき、おとこの人って子どもみたいって思います。ちょっとかわいいーっ。

 お言葉、ひさしぶりにいただきました!
 うわーい、嬉しいな♪第三部始まって初めてのお言葉だーっ!
『お兄さん再登場!! やっぱ好きですねコノキャラ。』
 はい、そうなんですよー。いつもありがとうございます、寿さん♪ にゃおも、おにーさん結構好きなのです♪おもしろい人ですよねー。
 はい、にゃおがんばりますv これからもどうぞよろしくお願いしますねvv

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あたしの彼はご主人さま(3)-8
2006年05月06日 (土)
 ひじで胸を押し返しながら暴れると、彼は明るくあははと笑った。
「そんなに怒るほどのことじゃないだろ?」
「とにかく放してっ!」
「わかったわかった。でも一つお願いがあるんだけど、いい?」 
 図々しい言葉に呆れて見返すと、彼はくすっと笑った。その目元が唇の感じがあごのラインが、ものすごく似てて、似過ぎてるくらいで、もうっ!
「……わかったわよ」
 あああ、あたしってバカっ!!


「もしもし、ママ? あ、バイトはさっき終わったんだけど、帰りに友だちに会っちゃって、そんでちょっとお茶でもって話になって……。あ、うん。それは大丈夫。うん、気をつける。ママもお仕事頑張ってね」
 ぱちりと携帯電話を閉じると、隣の席の『バイトの帰りに出会った友だち』に視線を向けた。
「これでいいんでしょ?」
「うん、完璧」
 彼はちらりとあたしを横目で見ると、唇の端だけで微笑った。そう言う表情をすると似すぎるから、ホントにやめて欲しい。
「あのさあ、あなたってユーキさんのお兄さんなんでしょ? なんであたしにこう言うことばっかりするの?」
「確かに和真は弟だけど。あ、俺は司。よろしく」
「あ、うん。よろしく」
 信号が変わった隙を狙ったように差し出された左手を、なぜかおとなしく握り返してしまう。何やってんだろあたしとも思うけど、でも彼はあたしのそんな行動を揶揄することもなく、その視線は真正面を向いたまま。その横顔をそっと見る。
 つかさ、かぁ。
 身長や体型がユーキさんと似てるからごまかされちゃうけど、でも違う。髪が全体的に長くて、前は眉を隠してるし横は耳に後ろは衿にかかってる。ちょっとだけど声がユーキさんより低い。細い銀縁のメガネかけてるのが決定的かも。目も二重でユーキさんよりおっきい。
 これだけ違うところがあるのに、それでも一瞬間違えるくらいに似てるってのは逆にすごいかも、なんて思った。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-9
2006年05月07日 (日)
「で、あたしをどこへ連れて行く気?」
「まあ、一種のご飯屋さん。千紗ちゃんに会いたいって人がいるんだ」
 一種のご飯屋さん、なんて、なんか微妙な表現だけど。
「あたしは別に、会いたい人なんていないわよ」
 言いながら胸がちくりと痛んだ。でも連れて行かれた先にユーキさんがいるなんてことはないと思う。だってこの人、そんな親切な人じゃない、と思うんだけど。
「まあまあ、そう言わずに」
 そう言って明るく笑う横顔はユーキさんに似てるせいで、そんなに悪い人には見えない……ような気もするけど、でも本当は怖い人。それはもう知ってるんだけど、それでもどこかで納得できない。
 あたしは一人っ子だから、兄弟って感覚がわからない。でもママはママだけど、母親ってよりお姉さんに近い感じだから、だからきっとお姉さんがいてもあたしはきっと仲良くやってると思う。
 これだけ顔も身体つきも話しかたも声も似てるなんて、そんな人が身近にいるのって、どんな気分なんだろう?
「千紗ちゃんって、和真と付き合ってんでしょ。いつから? もうセックスした?」
 思い切って訊いてみようと思った瞬間に先を越されて、しかも呆れるくらいにストレートな質問に、あたしはその横顔を見つめてしまう。そう言えばこの人はこういうことを平気で言う人だったっけ、なんて思い出した。
「もしかして違うの? なんも関係ないとかは言わないよね?」
 答えが返ってこないのを不審に思ったのか、少し声が低くなった。一緒にちらりと向けられたその眼がとても優しく見えて、なぜか鼓動が早くなる。指先が震えるような気がする。だから気持ちをはぐらかすように、あたしは言葉をすり替えた。
「せめて、もうちょっと遠回しに訊くのが礼儀ってもんじゃない?」
「いや、俺、そういうのって苦手で」
 あははと明るく笑う様子は、お兄さんというより、弟みたいだけど。
「あいつはでも、ダメだよ。やめときな」
 もう、公認の人がいるから。
 鋭く突き刺さる言葉に、反論の言葉もなく俯いてしまった。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-10
2006年05月08日 (月)
「それとも、二番目でもいい?」
「でも、ユーキさんは!」
 ユーキさんは、絶対になんとかするって言ってくれた。迎えに行くからって言ってくれた。あたしはそれを信じてる。ずっと待つんだって決めてる。
 ――だけど。
「なんとかするって言ったって、方法はいろいろあるんだよ」
 男はズルいからね。
 嘲笑うような声音にこもる真実味はきっと、彼の経験とか記憶とか、そういう素地が関係しているのだと思う。彼のお母さんは、ユーキさんのお母さんが来ることでいなくなった。そこにどんな事情があったのか、そのことを彼がどう思ったのかは、あたしには全然わからないけど。
「あいつと付き合ったんなら、うちのことだって多少は知ってるんだろ」
 誰にも言えないような関係でもいいの?
 低い声にこめられた言葉の意味はすぐにわかったけど、でも。
「だって、ユーキさんはっ」
 ママにちゃんと言ったもの。あたしと約束してくれたもの。
「あいつのこと信じてるの? あいつのことわかってるの?」
 彼の声は穏やかでその眼は静かで、おどけたところもあたしをからかって遊んでいる様子もなかった。だけど、それはあたしには受け入れられない言葉で、だから。 
「それって、どういう意味よっ」
「和真はそんな真っ正直なヤツじゃないよ、ってこと。他人を利用したり嘘をついたりくらい平気でするよ。現に、今だってそうしてるだろ」
 そのせいで、千紗ちゃんはこんなことになってるんだろ?
 あたしが今ここに居るのは、ムリヤリ連れてこられたからであってユーキさんのせいじゃないとも思ったけど、でも彼が言ってるのはそういうことじゃないのはわかっていた。それに、あたしの今の状況だってユーキさんが遠因であると言われればそうだし、だから穏やかな声の指摘に対抗する言葉をあたしは持ってなかった。

  -つづく-
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ど、どうしようっ!
2006年05月08日 (月)
 おはようございます、にゃおです。
 今、とってもとっても困っているのです。だって、お話が全然えっちくならないんですものっ! これじゃ「ちょっとえっちな」じゃなくって「ちょっとだけえっちな」だよーっ(≧ο≦)
 だいたいみんなが何を考えてるのかはわかったので、ちゃんとストーリィも進むとは思うんですが。といっても全然書き溜められない状況は続いてるんで、毎日ホントに綱渡りなんですけどね☆
 ということで、別口でえっちメインの短編でも書こうかなーとかちょっと思ってます。でも第三部ギリギリで書いてるから、そんな余裕ないしなー。
 うー、困ったっ

 あ、あともう一つ。
 番外編を書かずに第三部に先に取り掛かった理由なんですが。
 なんていうか、あのあいだユーキさんがどんなことを考えてたかとか、どんな生活をしてたかなんて、もうみなさんわかっちゃってるだろうなーってのが一つ。もう一つはユーキさんって千紗ちゃんらぶらぶですけど、でも実は結構悪人というか、ひどい人なんですよ。なのでね、その辺がね、書きにくくて。
 まあそのあたりに関してはいずれ出てくると思うので「本来は番外編で書こうと思ってた部分が、第二部と第三部に入っちゃった」と思ってくださると、とっても嬉しいなー。

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あたしの彼はご主人さま(3)-11
2006年05月09日 (火)
「ごめん。ちょっとタバコいいかな?」
 あたしが頷くのを確認してから、彼はハンドルを握っていない右手でスーツの内ポケットを探った。すぐに戻ってきた大きな手のひらにはタバコの箱が握られていた。メーターを照らす曖昧な灯りが、その箱が赤いことを教えてくれる。
「俺はこれでも、千紗ちゃんのこと心配してんの。千紗ちゃんはまだ若いから、勢いついちゃうと止まれないんじゃないかって。まあ、初対面があれだったし、俺が信用されてないのはわかってるけど」
 後半は呟くように言いながら、片手で器用に箱から一本を抜き出して、どこからともなく取り出したライターで火を点けた。
 先が赤く燃えたタバコを軽く咥えて大きく息を吸い込んで、そして彼はふうっと溜息をつくように白い煙を吐きだした。前面パネルの一部を慣れた手つきで引き出す。吸い口だけが残ったタバコの残骸がいくつかそこにあった。
 ママは家ではタバコは吸わないけど、でも仕事でイライラすると吸うらしい。だから、仕事から帰ってきたママからそんなにおいがすることがある。いいにおいだとはとても思わなかったけど、でも。
「もう一回考え直しなよ。悪いことは言わないから」
 タバコを吸う横顔は、不思議なくらい優しく見える。それはきっとこの人がユーキさんにとても似てるからだと、あたしは強くそう思い込もうとしていた。
 だってこの人、あのときあたしのことレイプしようとしたもの。信用できない人なんだもの。この人なんかよりユーキさんのほうがずっと信じられるけど、だけど、ユーキさんは……でもこの人の言うことなんか……でも……。
「あああ、もうっ!」
 頭を抱え込んで、ひざの上の鞄に額を乗せて、髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
「なんかもう、わかんないよおー」
 考えすぎて混乱しすぎて、破裂しそう。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-12
2006年05月10日 (水)
「まあ、別に結論なんて急がなくてもいいんだけどさ。少し立ち止まって考えたほうがいいよ、ってこと。俺が言いたいのはね」
 眼を閉じてれば、その心地いい優しい声はユーキさんかと思うくらいだから、あたしは顔を上げて彼を見た。もしゃもしゃになって視界を覆う髪のあいだから透けてるその横顔は、眉を隠す長い前髪が銀色のメガネがタバコを吸う唇が、ユーキさんじゃないってはっきり教えてくれる。
「どこ、連れて行くつもり?」
「ん、ああ、もうすぐ着くよ」
 いきなり話を変えても彼は動じたりしない。正面を見て運転したまま、なんでもないように答えを返してくれる。それはなんとなくわかっていた。だって、ユーキさんもそうだから。
「そこの角を曲がってすぐ」
 言いながら彼は咥えていたタバコを指に取った。
 タバコを吸う男の人はセクシーに見えるって、誰だったかが言っていた。でもあたしはタバコのにおいが苦手だったから、そのときは否定したような気がするけど、でも今はちょっとそういうのわかるような気がする。だって、長くなった灰を灰皿に落とすために軽く弾く指の動きは、とてもきれいだもの。
 ――あたしはいったい、何を考えてるの?
 方向指示器のカチカチいう音と、ちょっとだけ感じる横向きの重力。ゆっくりスピードを落としながら車が曲がって、ネオンサインが踊る黒い高い壁が目の前に現れた。
 このビルの中のどこかに、あたしに会いたいって言う人がいるんだろう。その人はユーキさんじゃないけどユーキさんの関係者で、そして多分、この人と……司さんとそれなりに親しい人。
「さあ、着いた」
 天井の低いビル地下の駐車場に車を停めると、彼はタバコを消してからサイドブレーキを引いた。あたしを見て、にっこり笑いながら腕を伸ばしてくる。
「髪、直そうか。千紗ちゃん」
 彼の手を避けるように上半身をひねって、それ以上近寄らないでと目で訴える。彼は曖昧な笑みを浮かべたまま、ちょっとだけ頷いた。視線を外すように顔を伏せて急いで髪を整えて、その場の雰囲気から逃げるようにあたしはドアを開けた。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-13
2006年05月11日 (木)
「随分と、可愛らしいお嬢さんだこと」
 ビルの地下二階のその店の特別室の、芸術品みたいな長椅子に優雅に寝そべっていたその人は、あたしを見るとそう言って笑った。
 今を盛りと咲き誇るバラを連想するような美女が身にまとっているのは、シンプルなドレスとひじまでの手袋とハイヒール。喪服のように黒一色だけど、それがなぜかゴージャスなドレスと同じくらいにあでやかに見える。大胆にカッティングされた胸元に紅い宝石が下がっていて、ちらちら見える胸の谷間とあいまって、一度見てしまうと目が離せなくなりそう。
「いきなり呼びつけてごめんなさいね。どうしてもお会いしたかったものだから」
「あ、いいえ。そんな、全然っ」
 大きくカールした、黒というにも茶色というにも微妙な色合いの長い髪を、レースに包まれた指先で弄びながら、濡れたようなまなざしで彼女があたしをじっと見た。
「あの、あたし、千紗です」
 慌ててペコリと頭を下げて、そしてあたしは俯いた。これ以上見ていると魂を吸い取られそうな気がする。
「そう固くならないで」
 金髪の女の子が持ってきた銀のお盆に載ったグラスをあたしに勧めながら、彼女はにっこりと笑った。その笑顔にドキドキしてしまう。ひとつひとつの仕草が優雅で上品で、でもとても扇情的で、まるで魔力を持っているみたいなすごい美女。彼女に見られてると思うだけで落ち着かなくなってしまう。
 あたしでこれなんだから、男の人なんか大変なんじゃないかな。そう思って、あたしの背後で黙って立っている筈の司さんに、内心でちょっとだけ同情した。
 でも、この人と司さんってどう言う関係なんだろう。というより、ここ……。
「あたくしは葵。よろしくね、可愛いお嬢さん」
 言いながらゆっくりと彼女は起き上がった。
「和真の姉よ」
 うげっ。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-14
2006年05月12日 (金)
 思わず硬直したあたしを見て、彼女はおかしそうにくすくす笑った。
「まあ、お座りなさいな」
 そう言いながら長く伸ばしていた身体をまっすぐにして、空いた隣を軽く手で示す。こんなきれいな人の、しかもユーキさんのお姉さんの横に? なんか……気後れするんだけど。別の、そっちの小さい椅子でいいんだけど。
「遠慮しないで。あたくしがあなたにここに座って欲しいの。さあ」
「はい。じゃあ、失礼します」
 再度促されて、あたしは仕方なく頷く。ちらりと視線を流すと、司さんが苦笑いしているのが見えた。かすかに『全く』と呟いたのも聞こえた。どういう意味?
「あの、姉さん」
「司。あたくし、このお嬢さんとお話があるの。席を外してて」
 あたしが長椅子の端に座るのを溜息をつきながら見ていた司さんが強い口調でそう言った瞬間、ユーキさんのお姉さん……葵さんは顔を上げてにっこりと笑った。
「いや、でも、そういうわけにも……」
「司ちゃん」
 優しくて穏やかだけれど、なんとなく逆らい難い雰囲気で彼女は笑う。威厳ってこういう感じをいうのかな、なんて考えながらあたしはその横顔を見た。
 二重の大きな目は司さんに似てるかな。でも胸はおっきいけど身体つきが細いから、印象として全然違う。姉弟って言われてもちょっと首を傾げてしまう感じ。お母さんが違ってもやっぱり同性のほうが似るんだなあ、なんて埒もないことを考えながら、あたしは二人のやり取りを見ていた。
 ちょっと妖しい笑みを浮かべた葵さんと困ったような顔をした司さんは、会話の流れから察するに、司さんのほうが分が悪いみたい。お姉さんの貫禄ってカンジなのかな。
「ほんのちょっとのあいだよ」
「わかりました」
 渋々といった感じで頷いてドアノブに手をかけかけて、そして肩越しに振り返った。照明がメガネのレンズに反射して、その表情は読めないけど。
「でも言っときますけど、そのコは和真の……」
「わかってるわよ」
 おかしそうにくすくす笑うと、彼女は軽く手を振った。
「あとで呼ぶわ」
 謎の溜息一つを残して司さんは部屋を出て行った。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-15
2006年05月13日 (土)
「さあ、邪魔者も追い払ったことだし、乾杯」
「乾杯」
 邪魔者って表現はちょっと可哀想な気がするけどな、なんて思いながらあたしは細く高く伸びたグラスを彼女のそれと打ち合わせた。彼女が少しあごを持ち上げるように優雅に飲み干すのを見ながら、グラスの縁に唇をつける。ちょっとだけ泡立った淡いグリーンの液体は、なんだか今まで飲んだことのないような不思議な味と甘さで。
「おいしいー」
「ここのオリジナルカクテルよ」
 笑みを含んだ目に促されるままそれを飲み干した。空になったグラスをあたしの手から取り上げると、葵さんは自分のと一緒に小さな丸テーブルに置いた。そのまま流れるような仕草で手を伸ばして、壁際の分厚いカーテンで覆われていた窓を開ける。ここは地下だから、窓の向こうにあったのは夜空ってわけじゃなくて、それはいいんだけど、でも。
「――や、やだあっ! あ、あうっ、く、ううっ」
 いきなり飛び込んできた、甘く湿った声にびくっとする。何が起こったのかと確かめるまでもなく、窓の向こうの赤いライトに照らし出されていた光景は。
「いや、だめ、ああんっ」
 広いというほどでもないくらいのホール。半円形になった後ろの壁には小窓が並んでて、そこはここと同じような個室になってるみたい。全体的に暗くて、二人がけのソファが並んでいるのが見える。この部屋は二階くらいの位置でホールを少し見おろすようになってるから、半分くらいの席が埋まっているのが頭の影でわかった。
 でも、最初に目に入ったのはそんなことじゃなくて。
 真正面にあるホールの中央に、背後をカーテンのような布で飾った半円形の空間があって、天井から下がってきた鎖で両手を吊られたスレンダーな美少女がいた。身に付けているのは手錠と首輪だけで、その周囲には全裸よりもいやらしいようなスケスケのランジェリーを着た女の人が三人。ひとりが横に立ってちょっとふくらみの足りない胸を揉みながら首すじにキスして、ひとりが後ろから抱きつくように手を回してあそこを指で広げて、もう片方の手でクリトリスをイジって、残りのひとりが足元に座って脚に抱きつきながら、あそこに指を挿れていた。足元には細切れの布がいくつか落ちてて、目を凝らすまでもなく、それが切り刻まれた下着だってことがわかる。
「いやっ! あ、あっ、ああっ! 気持ちいいようっ」
 六本の手に弄ばれている少女が背をそらして叫ぶ。スピーカから、激しい四人分の息遣いと、くちゅくちゅといやらしい音が聞こえてくる。
 ――こ、これは、なに?


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-16
2006年05月14日 (日)
 なに。この店、なに。
 確かに、普通のというにはちょっと妖しかった気もするけど、お酒を飲む店はこういうもんかなって思うくらいの店構えだった筈なのに。
 この店、なんでこんなことしてるの? こういうこと、ホントにしていいの? 女同士だから大丈夫とかって関係ないよね。見つかったらヤバいんじゃないの? それとも、秘密のお店なの? こんな大通りに?
 そっと隣に目を向けてみると、葵さんは長い脚を優雅に組んで背中をクッションにもたれさせて舞台を見ていた。相変わらずのあでやかな笑みのままで、驚いた様子なんてどこにもない。あたしの視線に気付いたようにちらりとこっちを見て、キスするときのように唇を尖らせて笑った。悪戯っ子みたいな可愛い表情に、何も言えなくなる。
「あ、はあっ、も、もうイっちゃいそうっ」
 口の端からよだれを垂らしながら、のどの奥から声を振り絞るように女の子が叫んだ声が、生々しくホール全体に響いた。
 あの感覚ってわかる。直前って、息ができないくらいにくらくらして自分がどうなってるのかわからなくなって、でもすごくよくて。
「まだイっちゃだめよ」
 くすくす笑いと一緒に穏やかな声が聞こえる。
 三人のうちの誰かなんだろうけど、それが誰だかまではわからない。こういう言葉って、あたしもいつも言われてたけどみんなも言うんだなあ、なんてちょっとズレたことを一瞬だけ思う。それとも、こんな人に見せる用のショーみたいなことだから言うのかな? 普通は言わないものなのかな?
「あう、うっ。で、でも、イっちゃうよおっ」
 女の子は痙攣するように震えながら喘いでたけど、誰も聞いてないみたいにその手が止まらなかった。赤いライトに照らし出された空間は拷問を連想するような異様な雰囲気で、腰をくねらせながら三人からの攻めに耐える姿は可哀想なくらいで、でもだからそれが逆に……。
 やだ。
 なんかあたし、火照ってきちゃった。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-17
2006年05月17日 (水)
 久し振りにお酒を飲んだりしたせいかな、それともやっぱり欲求不満なのかな。なんかこう、身体が熱くて息が苦しい。
 どうしよう。ユーキさんのお姉さんと一緒なのに、あたしがそんなことになってるってわかっちゃったら、どうしよう。こんな子なんだってバレちゃったら、どうしよう。
「気持ちいい、気持ちいいの! もうダメ、もっとっ! もっとおっ!」
 舞台上の女の子は、今にも崩れ落ちそうなほど脚をガクガクさせてる。でも天井からの鎖で両手を吊られてるから、そうはできないみたい。激しく抜き差しされる指を伝ってとろっと液が床に落ちるのが見えた。
「ああっ、もうダメっ。いや、イくっ!」
 びくっと女の子が跳ねる。ああ、イったんだなあってわかる。でも周囲の手が止まらないから戻れないみたいで、そのまま全身を震わせてイき続けてる。
「あああっ、ダメ、イく、またイくっ!」
 少女の嬌態に、暗く照明を落としたホール内の客席がざわめいた。影程度にくらいしか姿が見えないから断言できないけど、男の人も女の人もどっちもいるみたい。もしかしてここって、前にユーキさんが言ってたお金持ちの秘密クラブなのかな。
「ああ、もうダメぇ! ああ! あああっ、あ、あっ、ああああっ!!」
 叫び声がどんどん意味不明に、ケモノっぽくなってきてる。そう、あのときって狂っちゃいそうなカンジで、苦しいくらい気持ちよくておかしくなりそうで……。
「ふふふ。可愛い顔」
 耳元で聞こえた声にびくっと身体が震える。慌てて隣を見ると、驚くほど間近にきれいな目があった。ぬめるように光る紅い唇がなまめかしい。
「ちょ、え、ちょっと!」
 細い腕が腰にするりと抱きついてくる。背中に当たるやわらかな感触と耳に吹きかけられる楽しそうなくすくす笑いに、どう反応していいのかわからない。
「あ、葵さん、あ、あの、あたし」
「あなた、和真が好き?」
「ほえ?」
 状況から一瞬だけ想像した『いけないコト』とは全く違う言葉に、あたしは間抜けな声で訊き返してしまった。そんなあたしを見て、彼女はおかしそうに笑った。


  -つづく-
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おことばいただきましたっ☆
2006年05月17日 (水)
 おはようございます、にゃおです☆
 うわーい、またお言葉いただきました! とっても嬉しいです! ありがとうございますっ!!


『久しぶりに見たら意外な展開になっててびっくりしました!』
 ありがとうございますっ☆意外な展開って言っていただけてとても嬉しいです♪
 ちょっと意外すぎるのか、やっぱり前回ヘンなとこできっちゃったのがいけないのか、それとも番外編書かないのがいけないのか、反応がちょっと……なんですけど(^_^;)でもまあ、それは仕方のないことなので、あきらめますねv
 この先がどうなるのか、いろいろ想像してみてくださいねv にゃおもがんばります!

『5月14日(日)の分がダブってますよ。 』
 あうー、そうなんですよー!思いっきりミスっちゃってたんですよ!全然気がついてなくて、教えていただいて蒼白になっちゃいました!
 これからは気をつけます(^_^;)

『いつも楽しみにしてます。今後の展開にドキドキ☆』
 ありがとうございますーっ! 今後の展開はにゃおもドキドキですっ☆ だってだって、まだなんにも書いてない……
 そして16話が二重になってました! 本当にすみません! 以後気をつけますっ!

 そしていつも「よかったよ♪」やブログランキングへのぽちっとありがとうございますv にゃおこれからも頑張りますので、また気が向いたときにでも押してやってくださいねvv
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あたしの彼はご主人さま(3)-18
2006年05月18日 (木)
「和真がね、急に言い出したの。美倉のお嬢さんとの婚約を解消したいって。他に好きな子ができたのですって」
 バカみたいに口を開けたまま、あたしは彼女の唇が動くのを見つめていた。
「あ、でも、でも……」
 司さんは、ユーキさんと婚約者のお嬢さまとはうまくいってるから、あたしはユーキさんのことをあきらめたほうがいいって、そんな口振りだったのに。でもそれを言うと、葵さんは頬をすり寄せながら、ふふっと囁くように笑った。
「勿論、和真がひとりで言ってるだけだから、なかなか通らないわ。美倉との提携事業ももう始まってるから、結城もここで手を引くわけにもいかないし。お祖父さまがカンカンで、あたくしたちも困っているのよ」
 そう言いながら、葵さんの手がスカートのベルトの辺りを撫でる。わき腹のすごく弱いところに当たった指に、一瞬びくっとしてしまったけど。
「それでも、好きになってしまったものは仕方ないでしょう。あのコのことだから、そのうち飽きるとみんな踏んでるのだけれどね」
 そっか。そういうことなんだ。
 ユーキさんが嘘ついてるわけでも司さんが嘘をついてるわけでもなくて、どっちの言ってることも本当なんだ。ユーキさんはそれでも何とかしようとしてくれてて、司さんは多分ダメだろうなって思ってて、だからあたしに忠告してくれただけで。
「それで、こないだから大変なのよ。まあ、あたくしは後継ぎ問題に関係ないから、どっちに決まってもいいのだけれど」
 斜め後ろからあたしの腰に腕をまわして頬をすり寄せたまま、葵さんは明るく声を立てて笑う。口では、大変だって困ってるって言ってるけど、でもむしろ葵さんの様子は楽しそうで。
「和真は詳しくは言わなかったのだけれど、司があなたのことを知ってるって教えてくれたから、今日連れてきてもらったの。一度くらいは顔を見ておきたかったし」
 多分、この人は楽しんでるんだ。ユーキさんとあたしのことも、ユーキさんと司さんのことも、おうちが大騒ぎになってることも、この人にとってはおもしろい遊びなんだ。
「まあ、あの子に限って、女に騙されるとは思ってないけれど」
「それは、ええと……。すみません」


  -つづく-
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お言葉いただきましたv
2006年05月18日 (木)
 おはようございます、にゃおです☆
 またまたおことばいただきましたー♪ とっても嬉しいです、ありがとうございますっv 

『毎日お邪魔させていただいています。 めちゃめちゃ楽しみにしていますよ~vv』
 きゃーパスちゃんーっ! ありがとうございますっ☆ 楽しみにしているって言ってくださって、とっても嬉しいです☆
 えっち描写、イイカンジに裏切ってます?そう思っていただけてると嬉しいな♪
 今回の女の子同士のえっちは、実は初めて書いたので、自分でもドキドキなのです☆ここんとこストーリィメインだったので、思い切って書いてみました。えへv といってももうしばらくストーリィもーどが続くかなー。ややこしい話って苦手だー。
 早く出てきて、ユーキさんっ!らぶらぶえっちが書きたいよーっ!

 そして、いつも「よかったよ♪」やブログランキングへの一票ありがとうございますvv にゃおこれからも頑張りますので、また気が向いたらぽちっと押してやってくださいねv
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あたしの彼はご主人さま(3)-19
2006年05月19日 (金)
 確かにユーキさんは、騙されるより騙すタイプよね。
 あたしには優しくしてくれるけど、頭もいいし口も巧いし何よりすごくプライドが高いから、騙されておとなしく引っ込むような人じゃないとは思う。まあ、男の人ってみんなそんなものなのかもしれないけど。
 そんなことを考えながらあたしは曖昧に頷いた。ついでに『そろそろ手を放してください』って言えたらいいのにとちょっと思う。さっきから、ゾクゾクするのが止まらなくて困ってるんだけどな。
「謝らなくてもいいわ。あたくしはあなたのこと気に入ったもの。可愛いから」
「そ、それは、どうも」
 くすくす笑いながら抱きついてくる細い腕をムリに振り解くこともできなくて、あたしは居心地悪くもぞもぞと身動きした。舞台から聞こえ続けてるえっちな声のせいか奇妙な火照りのせいか、それとも葵さんの色っぽい目を間近で見続けてるせいか、どうにも落ち着かない。なんだか頭がぼーっとしてくる。
「ねえ、千紗ちゃん。あなた、それでも和真が好き?」
「え、あの、それはその……」
 ゆっくりと腰から上がってきた指がブラのラインを撫でた。ぞくりと背中に寒気に似た感覚が走る。
「和真はね、とりあえず今のところ、あなたのことは本気だと思うのよ」
 その言葉はあたしは嬉しいけど、でも結城の人たちにとっては迷惑なんだろうな。あたしが責任感じても仕方ないんだろうけど、でもなんとなく申し訳ない。
「でも誰しも、望みが全て叶うとは限らないわ。人間がひとりで頑張ってもできることなんて限られてくるから、ダメだってことのほうが多いと思うの。そんな薄い希望でも、千紗ちゃんは待つつもり、ある?」
 表現はちょっと違ったけど、でもその言葉の意味は、ここへ来るまでに司さんに言われたことにひどく似ていた。
 司さんは、一回考え直すように、一度立ち止まるようにと言ってくれた。葵さんはもしかしたらダメかもしれないけど、それでもいいのと言ってくれている。二人とも、あたしのことを心配してくれているんだと思う。それだけユーキさんの立場が難しいってことなんだろう。もしかしたら、ユーキさんがそれだけ二人に信用されてないってことなのかもしれないけど。

  -つづく-
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