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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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マスカレイド2-38
2009年06月18日 (木)
「えっと、その……。失礼します」
 さよならとかまたねとか、ましてやバイバイなんて言えなくて、あたしは運転席の先生に頭を下げた。無言で小さく頷く先生を一呼吸だけ見つめてからドアを開ける。鞄と傘を引っつかんで、まだ少し雨の残った中を裏門に向かって走る。
 裏門は道向こうが雑木林になってることもあって、人通りがほとんどないから大丈夫だとは思うけど、でも用心に用心を重ねて、素早く車の乗り降りをする。先生の車から降りるところを誰かに見られちゃダメ。疑いを持たれたらなにもかもおわり。
「うわ、濡れたー」
 錆びた門の横から道に大きく伸びた枝の下へ駆け込むより早く、先生の車は流れるようにすうっと発車して行った。鞄についた水滴をパタパタはたきながら遠ざかる影をそっと見送る。
 多分、ぐるっと回って正門から学校へ戻って行くんだろう。そして何事もなかったように午後の教壇に立つんだろう。瞳にハートマークを浮かべたデキの悪い生徒たちを相手に、いつもの冷たい表情で数Ⅱの公式を黒板に書いて淡々と説明していくんだろう。
 ――そんなの、前からわかってることじゃん。
 口の中で小さく呟きながら傘を開いて、そしてあたしは溜息をついた。
 先生とえっちできるだけでいいって本気で思ってるけど、でも先生が無言で立ち去って行く、この瞬間だけはイヤ。優しい笑顔を見せて欲しい。別れの言葉が欲しい。次の逢瀬の約束が欲しい。望めば望むほど自分が惨めになっていくのはわかってるけど――。
「やめやめやめっ」
 視界を歪ませるように浮き上がってきた涙を振り払った。
 どうしようもないことを考え続けてもどうにもならない。いつまでもヘコんでちゃダメ。元気に振る舞えば、ウソでも元気になる。元気。あたしは元気。
「さぁーってと、もう帰ろっ」
 くるりとかかとを返して、駅に向かう坂道を降りる。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-94
2009年06月27日 (土)
「これ、すっごいおいしい!」
 銀に光るフォークの先に小さく巻いたタリアテッレを一口で食べて、理香はお世辞抜きの歓声を上げた。皿の飾りのように丸く並べられた薄切りのトリュフとミニアスパラガスをフォークに突き刺してからふわふわに泡立てられたソースをたっぷりと取って味わい、次いでパスタを先ほどより大きめに巻き取ってぱくりと食べる。
「んー、おいひー」
 もっちりした生パスタを口いっぱい頬張って目を細める理香に、フルート型のシャンパングラスに口をつけかけていた同席者はぷっと小さく笑った。本人は意識していなくとも、理香の様子はまるで大好きなお菓子を与えられた子どもだ。無邪気だと言えば聞こえはいいが、成人しているのが信じられないほどに幼く見える。今時の高校生のほうがよっぽど大人びているだろう。けれどそこが理香のいいところだと頷く。
「あ、なんかバカにしましたね?」
 笑顔の意味を鋭く読み取り突っ込んでくる理香に『これが女のカンか』と驚きながらも、いや、と小さく首を振って否定する。それでも疑いのまなざしは変わらない。
「ホントですかぁ?」
 目だけは不満そうに、けれどうきうきとパスタを口に運ぶと、理香はまぁいいです、と渋々の体を装って頷いた。
「主任にはこんな美味しいランチ奢っていただいてるんで、今回は許します」
「そう、それは助かった」
 知らず笑みをこぼしながら、主任と呼ばれた男――高瀬浩志はグラスを置いた。ナイフとフォークを取り、注文したほうれん草とリコッタチーズのカネロニを切り分け始める。やや大きめの一口大に切ったカネロニをフォークに刺して口へと運ぶ。器用にナイフを操る長い指先に、高瀬が総務課の女子社員が指の動きがキレイでセクシーだと騒いでいたのを思い出し、理香はなるほどと頷いた。
 いきなり主任に声を掛けられた時はびっくりしたけど、でもラッキー。
 想像していたよりゴージャスなランチに、理香はパスタを口へ運びながらうきうきと考えた。
 高瀬はつい先日の突然異動まで総務課で理香の直接の上司だった。歳は亮治よりいくつか上だ。社内の雑事を一手に引き受けるどちらかと言えば地味な総務課にあって、唯一対外的な仕事をしているためか、他の社員より身だしなみに気をつけていて、既婚者ではあったが女子社員によくモテていた。そう言う子を相手に、家庭にヒビが入らない程度に遊んでいると噂で聞いたこともあった。

 -つづく-
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