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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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花を召しませ-1
2006年07月29日 (土)
「さっき、俺のこと、見てたでしょ?」
 耳元に囁く声と、強い力。長い腕が背中からまるで蛇のように巻きついてくる。両手ごと抱きしめられて身動きすることもできない。
「え、ちょ、ちょっと。ええ?」
「ね。俺のこと、見てたんでしょ?」
 少しかすれたその声も、わたしを見おろす少年の面影が残った悪戯っぽい目も、そして優しく歪んだ口元も。
「ち、ちがうわよっ。あれは……あなたを見てたんじゃなくって!」
「嘘ばっか」
 厭味なくすくす笑いが耳をくすぐる。それと同時にぎゅっと抱きしめられて、一瞬息が詰まった。
「あなたは俺をずっと見てた。気付かないとでも思った?」
「放してっ、放してってば!」
「だって、俺もあなたを見てたもの」
 その言葉に思わず身体が止まる。それを見計らったように、彼の大きな手のひらがあごをつかんだ。軽く吹きかけられる吐息にかすかに混じるタバコのにおい。
「や、やだ……ダメ」
「うん、俺もダメ。もう我慢できない」
 笑みを含んだその声が、やわらかく唇に触れた。


 初めてここにきたのは、一ヶ月と少し前のことだった。割と派手に遊んでいる友人からの電話で、学生の頃から常連だった店の人が独立したから、お祝い替わりに顔を出してって頼まれたとかで、だから一緒に行かないかと誘われた。
 久し振りの夜遊びに少しドキドキしながら向かった先は、ダンスフロアがメインの、いわゆるクラブだった。実はクラブに行ったのはこのときが初めてで、音とカクテルライトの洪水にどうしていいかわからなくなって壁に張り付いていたわたしに話し掛けてくれたのが彼だった。
 長髪の茶髪、茶肌にピアス。派手な服と変に馴れ馴れしい口調と、身体中にくっついたアクセサリー。店員も客もそんな感じの人ばっかりの中で、彼は一人だけ異彩を放っていた。
 短めの黒髪、白い肌。真っ白のぴしっと糊の効いたシャツと、穏やかな口調。バーカウンター内で見せる、二十歳そこそこだとはとても思えない落ち着いた雰囲気と、どこか幼く見える笑顔のギャップが不思議な感じで。瓶を手に取る仕草がなんだがちょっとカッコよくて、カクテルを混ぜる指先がきれいで、タバコを咥えるときの伏せた目が少し憂いを含んでて、グラスを洗っているときの横顔がちょっとよくて、注文を受けたときの頷く笑顔がドキッと来る感じで。だから踊りはそれほど好きじゃないのに、二度、三度と通ったのかも。
 その彼が今、わたしの背後にいて、そしてわたしを抱きしめている。
 これはいったい……なにがどうなっているの?

  -つづく-
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花を召しませ-2
2006年07月31日 (月)
 軽く重ねられたキスは一度唇を離すごとに、少しずつ少しずつ深くなる。いつのまにかわたしは、真正面から向かい合うように抱きしめられていた。
「ダメ、こんなとこで」
 唇が離れた瞬間に引き寄せた腕で彼の胸を押した。右手のひらに当たる固いものは、タバコの箱だと思う。強く押すとやわらかく潰れて行く感じがする。
「こんなとこじゃなければいいの? 誘ったらついてきてくれる?」
 低く小さく押さえられた、楽しそうな笑い声。
「そりゃないよね。美雪さん堅いもんね。俺なんか相手してくんないでしょ」
「だからって、こんなとこで……」
 こんなところ。お店のトイレ。
 トイレと言ってもドアを開ければ個室が五つ並んでいるフロアのトイレとは違って、こっちはちょっと広めの洗面台のついた完全個室タイプ。それでもバースペースはフロアに比べるとお客さんの数が段違いに少ないから、ニ室しかなくてもこっちのほうが空いている。ここの場所にトイレがあるのを知らない人もいるらしい。そりゃ、クラブなんて踊りに来るところだと思うから、お酒を飲みに来るところじゃないから、当たり前なのかもしれないけど。
 でもその至極当然の抗議には楽しそうな低い笑い声が返ってきた。どうやら彼は、私の言葉なんて聞き入れるつもりはないらしい。
「美雪さん、前に来た日がいつだか覚えてる?」
「前、に……?」
 訊き返した瞬間にまたもや唇を奪われた。そのまま深く舌を差し込まれる。
 無理やりされてるキスなのに、その相手が彼だと思うと抵抗できない。隙間から入り込んだ舌がぬるぬると歯の裏をなぞって、タバコのにおいのする苦い唾液を流し込んだ。
「どうせ覚えてないんでしょ。俺は覚えてるのに。ずっと待ってたのに」
 恨みがましい言葉が明るく囁かれる。そのまま耳たぶを軽く咥えられて身体がびくっと震えた。

  -つづく-
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花を召しませ-3
2006年08月01日 (火)
「教えてあげる。答えは十二日前。ニ週間近くも俺がどんな気持ちだったのか、それも今から教えてあげる」
 言いながら彼はわたしの胸をさわった。全体をぎゅっとつかんで、そしてやわらかく揉んでくる。ブラの上からの手の動きにそれほどの刺激は感じないけれど、それでもさわられているという事実に頬に血が上ってくる。
「んーと、この辺、かな」
「や、やだ。ちょっと!」
 爪先で胸の先端をカリカリと引っかかれて、自分が反応していくのがわかる。ブラカップとこすれる、もどかしい感じがなんだか逆に……。
「ね。直接さわってもいい?」
「ダメに決まってるでしょ! お願いだから放して。こんなことやめて」
「ここで放せるくらいなら、最初からこんなことしてないと思わない?」
「そんなの知らないわよっ」
 それでもどんなに暴れても、優しく強く抱き寄せる腕の中から逃れられない。彼の指先がブラウスのボタンをつまんで、そして器用に外して行く。あいだから見える自分の肌に思わず顔をそむけた。
「美雪さん、顔赤いよ。恥ずかしい?」
「そんなの……」
 決まってるじゃない。
 その言葉を飲み込んだのは、違う声が出そうになったから。彼は背中を丸めるように身を屈めると、ブラと肌のギリギリの境に唇を押し当てて、そして強く吸い上げた。
「……あっ、くんっ」
 身体を走った鋭い痛みの直後、優しく舐められて、さっきと違う意味で身体が固まる。背に回った手が器用にブラウスをたくし上げて、そしてぱちりと金具を弾いた。緩んだ胸元にそのままするりと潜り込んで、そしてやわらかく肌にふれた。力の入れ加減を微妙に変えながら胸を揉まれると、自分が昂ぶってくるのがわかる。先端をきゅっとつままれて身体が震えた。

  -つづく-
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花を召しませ-4
2006年08月02日 (水)
「乳首も勃ってきてるね。気持ちいい?」
「やだっ」
 身体とはうらはらに、否定の言葉を吐きながら首を横に振ると、彼は低く笑った。
「ね、声、出して。あんまり大声も困るけど、これじゃつまんないよ」
 そんなことを言いながら、彼は何度もキスを繰り返した。固く尖った乳首を軽くつまみながら手のひら全体で擦るように揉む。少しざらざらした親指の先が乳首にこすりつけられるたびに、身体がビクビクと震えてしまう。
「やっ! あ、んんっ……」
 弄ぶような指先と首へと吸い付いた彼のキスに、耐え切れない声が洩れた。
「そうそう、いい声。もっと聞かせて」
 くすくす笑いながら彼は再び顔を伏せた。ずれたプラの隙間から覗く、赤く自己主張した突起を口に含んで、舌でざらりと舐め上げる。
「やだ……ん、ん……んんっ……あ、んっ」
 背中を這う指の動きと軽く吸い上げる舌に、理性を全てを絡め取られそうになる。ううん、盗られそうに……なる。
「あ、やっ! ダメ、いやっ」
 それでも身をよじるよりも先に、悪戯な手はスカートの中に潜り込んだ。
「やっぱり、ナマ脚だった。すべすべだね」
「や、やめっ」
 少しひんやりとした手のひらが、触れるか触れないかのギリギリラインを保ったまま、ふとももの内側へと巧みに滑って行く。それだけでうなじの産毛がちりちりと立ち上がるのがわかる。それは不快では決してないけれど。
「さあてと。そろそろ……」
 さわさわと太ももを撫で回していた手が、ふいにショーツに当たった。いくら何でも、軽くこすりつけられるその部分がどこなのか、彼がどこに触れようとしているのかくらいはわかる。
「やだ、やめて」
 恥ずかしさに腰を引こうとしたけれど、彼がそれを許してくれるわけはなかった。

  -つづく-
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花を召しませ-5
2006年08月04日 (金)
 布越しの指がピンポイントでそこを攻める。そうされれば自分がどうなって行くのかもわかる。身体の奥でじわりと発生した熱が形を成して行くのもわかる。
 こんなところでこんなことされてるのに、襲われてるのに、どうして? やっぱり、相手が彼だから……?
「やっ。だめ、やめ……っ」
 慌ててショーツの上を這い回っている彼の手を抑えた。引き剥がそうとしてもできないとは思うけれど、それでも彼の好きにさせるわけにはいかない。このままだと本当に……わたし自身が、停まれなく……なる……。
「あっ。あ……あっ」
 彼の指先がこりっと当たった感触に身体が震えた。一瞬の強い快感に耐え切れず、のどをそらすように喘いでしまう。とろりと出てくるのが自分でもわかる。
 どうしよう、気持ちいい。
「うわ、やば。すげー興奮する……」
 うめくようにそう呟くと、彼はその手で逆にわたしの手をつかみ返した。洗面台に押し付けるように体重を掛けるように圧し掛かられて、男性にしては細めの指が素早くあごにかかった。覆い被さるようにキスをされる。呼吸を制限されたまま指先に攻められて、息が苦しい。
「ん、んんんんっ!」
 ひざがガクガクと揺れるのがわかる。自力で立っていられなくて、さっきまで拒絶していた筈の手で彼の服をつかんだ。握りしめた布地の奥にかすかな体温を感じながら、すがりつくように身体をすり寄せる。唇の隙間からぬるぬると入り込んできた舌も受け入れてしまう。。
「美雪さん……。直接、さわるよ」
 離れた唇がすぐ目の前でかすかに動いて、その声が聞こえた。答える暇もなくショーツの中に手が入って、そして。
「あっ……、ああっ!」
 いやらしい水音と一緒に彼の指が蠢いた。
「やっ! ひ、いっ、あああっ! や。やめっ……!!」
 痛みにも似た鋭い快感は感電したのだと思った。今まで感じたこともない感覚に身体が跳ねる。声にさえならない。視界がぐにゃりと歪んで、そして白く弾けた。

  -つづく-
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花を召しませ-6
2006年08月05日 (土)
「あれ? もうイっちゃった?」
 低い囁き声が耳にかかる。息を荒げたまま答える余裕もないわたしに、彼は楽しそうに笑った。ガクガクする身体を支えようと彼のシャツを握りしめてしまい、自然と彼の胸に顔を埋めるような体勢になる。思っていたよりずっと強い力で抱きとめてられて、なぜか心が熱くなる。
 わたしって、変。こんなことされて、襲われて……。それでも、抱きしめられて嬉しいの? わたし、そんなにこの人のこと……?
「美雪さん……」
 あごに指がかかって仰向かされる。細まったまなざしがわたしを見る。それは今まで全然気付かなかった、『おとこの人』の顔だった。
 熱を持ったその表情が徐々に近づいてきて、そして彼もわたしも眼を閉じた。唇にやわらかく触れる感触に息が詰まる。合わせた隙間からぬるりと入り込んでくる舌を受け入れると、身体に軽い痺れが走った。唾液が絡まる音がちゅぷっと頭の中で響いて、それがとてもいやらしく感じる。
「ん……」
 合わせた唇のあいだからうめくと、抱きしめる腕の力が強まった。キスを続けたままの彼の手がわたしの身体の上を動く。わき腹から背中へ、なぶるように撫ぜるように指先が辿った。普段はこそばゆいだけの箇所が彼の手に触れられると、なぜか違う感覚が湧き上がってくる。
「あ、んっ」
 唇が離れた瞬間にスカートからブラウスが引き抜かれた。一瞬だけ持ち上げられたベルトの金具がちゃりんと鳴る。隙間に入り込んだ指先が直接わたしの肌に触れた。その感触にぞくりと背が震える。
「美雪さんって結構敏感だね」
 その言葉の意味がわからなくて、問い掛けるように顔を上げると、彼はにっこりと笑った。
「よいしょっと」
 その掛け声と一緒に、身体をつかまれて抱き上げられる。もたれかかっていた洗面台に深く腰を降ろされた。
「さてと。じゃあ、美雪さんを見せてもらおうかな」


  -つづく-
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花を召しませ-7
2006年08月07日 (月)
 わたしを見下ろす笑顔がその言葉が、何を意味する気なのかを理解するよりも先に、脚を大きく開かされた。抵抗する暇もなくふとももを押し上げるように後ろに倒されて腰が浮いた。そのまま、一瞬でショーツを抜き取られる。
「え、あ、いやぁっ!」
 スカートの中を覗き込むようにしゃがんだ彼の頭を押して、視線を避けさせようとした。けれども両手はあっというまに絡め取られて、彼の左手に鷲づかみにされた。閉じようとした脚は彼の右手と拘束されたわたし自身の両手で支えられて、その部分を大きく晒してしまう。
「や、やだ。おねがい、シズくん……」
 けれど彼は肩を入れるようにして顔を近づけてくる。ふとももとその付け根を彼の吐息がくすぐる。そのことが現す事実に身悶えしそうになった。
「すごく綺麗だよ。綺麗なピンクで、濡れて光ってる」
 彼が何を差してそう言っているのか、考えるだけで羞恥で震えた。
「やだ……。見ないで、おねがい」
 どんな懇願も彼には届かない。それは薄々感じてはいたけれど。
「美雪さんのここを見たの、俺で何人目? あんまり多くないよね。そういう感じ」
 ふっと吹きかけられた息は、濡れた部分に少し冷たく感じる。その刺激に自分が反応するのはわかった。
「やだ。放し……ん、あっ」
「ね。何人目?」
 言いながら彼はわたしのそこに触れた。手ではなく、唇で。
「きゃあっ! だめ、そこ、汚い……あ、あっ」
 じゅっと音を立てて吸い上げられる感覚に腰が浮いた。
 たった今、排泄を済ませたばかりの場所なのに、それが目的でトイレに入ったのに。なのに、その部分に口をつけるなんて。
「汚くなんかないよ。すごく……美味しい」
「あ、だ、め……んくぅっ」
 そしてそれが、こんなに……気持ちいいなんて。

  -つづく-
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花を召しませ-8
2006年08月08日 (火)
 生温かいぬるぬるした感触が、ちゅぷちゅぷと卑猥な水音を立てながら這い回る。恥ずかしい汚い部分を舐められているという意識と、今まで感じたことのない快感に、身体が腰が、ガクガクと震える。どんなに耐えようとしても耐え切れない声が出てしまう。
「あ、やっ! い、ああんっ。く、う……くうっ!」
 さっきまでの、痛みを伴った痺れるような快感とは別の種類の、全身が蕩けてしまいそうな優しい感覚。耳に入ってくる卑猥な水音と時折吹きかけられる彼の吐息に、理性が融けてしまいそうで自分が自分でなくなってしまいそうで、怖い。
「ね、教えて。俺って何人目?」
「何人目って、っ……ふ、ふたり……あ、く、うっ」
 高校生の頃、付き合っていた彼の家に遊びに行ったとき、脱がされてしまった。そのときは恥ずかしさと驚きと、彼がわたしのことが嫌いになってしまうのじゃないかという心配で、拒絶できなかった。男性の無骨な指にさわられるのは、気持ちいいというよりも怖かった。
 その後、抵抗しないわたしに勘違いした彼が鼻息も荒く覆い被さってきて、そのあまりの恐怖に泣き出してしまった。行為は中断されたものの、その時の記憶がどこかで引っかかっているのか男性に対して積極的になることができなくて、だから二十歳を過ぎてもそれ以上を経験することはなくて、でもそれをいうのは恥ずかしくて。だから。
「俺で二人? 今までたった一人?」
「そう……あ、やっ……。ひ、ああっ……あああ……っ!」
 ぺっとりと舐め上げられると、その部分がびくびくと震えた。両手を戒められ脚を広げさせられ、身動きもままならない状態でガクガクと腰を揺らしてしまう。それは逃げようとしているのか、それとも彼の口に擦り付けているのか……。
「そっか。二人なんだ」
「あ、くうっ! あ、はぁっ……あっ……あぁ、ひっ!」
 舌先が入り込んだ途端、それがじゅぷっと音を立てて流れ出るのがわかった。

  -つづく-
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花を召しませ-9
2006年08月09日 (水)
 身体の内側を舐められているという未知の感覚に、思考が反転するような衝撃が走る。彼の唾液とわたしの恥ずかしいものが混じった液体が、肌を辿ってトロトロと流れて行く。それを彼の唇がじゅっと音を立てて吸う。そのまま舌がてろりと舐め上げて、そして。
「ひあっ! あ、ああっ、あ、はぁっ、く、うううっ」
 思わず大声を上げてしまう。軽く舌先で叩かれる感覚に全身が痙攣する。舌を絡み付けるようにこすられて、吸われて、自分のそこがヒクヒクするのがわかった。
「あ、こ、これ、なに? い、いやぁっ、だめ、あ、ああっ!」
 さっきの、雷に打たれたような一瞬の感覚とは違うものが、身体の奥からゆっくりと湧き上がってくる。それはまるで大きな波のようで、そこに巻き込まれて飲み込まれてしまいそうで。
「中とクリトリス、どっちが好き?」
 キスするようについばむ合間に彼はにっこり笑いながらとんでもないことを問い掛けてくる。わたしのふとももを抑えている筈の右手の位置を器用にずらして、はしたなく濡れ光らせているそこを指でなぞった。そのままゆっくりと沈めて行く。
「あ、ああっ」
 痛みに近い異物感に声をあげると、彼はそのまま指を抜いた。入り口近くを軽く突くように抜き差しながらわたしを見上げる。
「これだけ濡れてるのに指二本がキツいな。ここ、慣れてない?」
 いいながらまたもや入り込んでくる。その感触に忘れかけていた恐怖が戻ってくる。あのときのあの彼も――。
「やだ、シズくん。やめてっ」
 静止しようと両手を握られたまま暴れると、彼は軽く眉をひそめた。入れたままの指を回すようにしながら奥へ奥へと入れて行く。
「ここで引っかかるな。これ、もしかして……」
 びくんと身体に走った痛みに唇を噛んだ。必死で声を堪えていると、痛みと恐怖が混じったものが視界を歪ませる。彼のまなざしが曇って行く。ゆっくりと指を抜くと彼はわたしをじっと見て、そして探るような眼のまま口を開いた。
「美雪さんって、もしかして、処女?」
 頷いた拍子に涙がこぼれた。

  -つづく-
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花を召しませ-10
2006年08月10日 (木)
 二十四歳、OL、男性経験なし。
 この年で処女なんて、さすがにちょっと引くよね。
 わたしの手を放してゆっくりと立ち上がる彼を歪んだ視界のまま見つめながら、内心で呟いた。
 処女って重いって言うし、そんなにもてなかったのかって思われるのもシャクだし。そりゃ、もてたってほどもてたわけじゃないけど。大学でも会社でもみんなにお固いイメージで取られて、ちょっと敬遠されてるっぽいのは事実なんだけど。
「ごめんね。怖かった?」
 大きな手が頬を撫でてくれた。ぽろりと落ちたしずくを指先で拭き取って、そしてそれを口へと持って行く。ちゅっと音を立てて涙を吸うと彼はわたしを見た。
「ごめんね。こんなことなら、もっと普通のアプローチすればよかった。俺もちょっと我慢効かなくなってきてて」
 そう言いながら彼はわたしをゆっくりと抱き起こした。今まで遠くに消えていた、フロアのダンスミュージックが耳に入り始める。MCの最中らしい、DJの軽快な話し声が途切れ途切れに聞こえてくる。
「えっと、これ」
 渡されたショーツを黙って受け取って、そして顔をそむけた。泣いている顔を見られるのがイヤで、それ以上に彼にどう思われたのとかを考えると、どうしていいのかわからなくて。
「あのさ、美雪さん。えっと、あの――」
「穿くから、あっち向いてて」
「あ、はい」
 くるりとおとなしく背を向けた彼を二秒だけ見つめて、そしてわたしも背を向けた。サンダルのかかとに引っかからないように注意しながらショーツを穿く。クロッチの部分が湿っていてそれが冷たくて、ちょっと気持ち悪い。
 やっぱり、処女だから途中でやめたのかな。これ以上は手を出してこないかな。もうこんなふうに……はないかな。ないだろうな。そう思うと悲しいのはなんでだろう。やっぱりわたし、今も彼が好きなのかな。そうなんだろうな、きっと。そんなことばかり考えながらショーツを穿いて、ブラの留め金を留めて、ブラウスのボタンを直して、ふうっと息をついた。
 なんか……寂しい。

  -つづく-
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