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2006年05月09日 (火)
「ごめん。ちょっとタバコいいかな?」
あたしが頷くのを確認してから、彼はハンドルを握っていない右手でスーツの内ポケットを探った。すぐに戻ってきた大きな手のひらにはタバコの箱が握られていた。メーターを照らす曖昧な灯りが、その箱が赤いことを教えてくれる。
「俺はこれでも、千紗ちゃんのこと心配してんの。千紗ちゃんはまだ若いから、勢いついちゃうと止まれないんじゃないかって。まあ、初対面があれだったし、俺が信用されてないのはわかってるけど」
後半は呟くように言いながら、片手で器用に箱から一本を抜き出して、どこからともなく取り出したライターで火を点けた。
先が赤く燃えたタバコを軽く咥えて大きく息を吸い込んで、そして彼はふうっと溜息をつくように白い煙を吐きだした。前面パネルの一部を慣れた手つきで引き出す。吸い口だけが残ったタバコの残骸がいくつかそこにあった。
ママは家ではタバコは吸わないけど、でも仕事でイライラすると吸うらしい。だから、仕事から帰ってきたママからそんなにおいがすることがある。いいにおいだとはとても思わなかったけど、でも。
「もう一回考え直しなよ。悪いことは言わないから」
タバコを吸う横顔は、不思議なくらい優しく見える。それはきっとこの人がユーキさんにとても似てるからだと、あたしは強くそう思い込もうとしていた。
だってこの人、あのときあたしのことレイプしようとしたもの。信用できない人なんだもの。この人なんかよりユーキさんのほうがずっと信じられるけど、だけど、ユーキさんは……でもこの人の言うことなんか……でも……。
「あああ、もうっ!」
頭を抱え込んで、ひざの上の鞄に額を乗せて、髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
「なんかもう、わかんないよおー」
考えすぎて混乱しすぎて、破裂しそう。
-つづく-
あたしが頷くのを確認してから、彼はハンドルを握っていない右手でスーツの内ポケットを探った。すぐに戻ってきた大きな手のひらにはタバコの箱が握られていた。メーターを照らす曖昧な灯りが、その箱が赤いことを教えてくれる。
「俺はこれでも、千紗ちゃんのこと心配してんの。千紗ちゃんはまだ若いから、勢いついちゃうと止まれないんじゃないかって。まあ、初対面があれだったし、俺が信用されてないのはわかってるけど」
後半は呟くように言いながら、片手で器用に箱から一本を抜き出して、どこからともなく取り出したライターで火を点けた。
先が赤く燃えたタバコを軽く咥えて大きく息を吸い込んで、そして彼はふうっと溜息をつくように白い煙を吐きだした。前面パネルの一部を慣れた手つきで引き出す。吸い口だけが残ったタバコの残骸がいくつかそこにあった。
ママは家ではタバコは吸わないけど、でも仕事でイライラすると吸うらしい。だから、仕事から帰ってきたママからそんなにおいがすることがある。いいにおいだとはとても思わなかったけど、でも。
「もう一回考え直しなよ。悪いことは言わないから」
タバコを吸う横顔は、不思議なくらい優しく見える。それはきっとこの人がユーキさんにとても似てるからだと、あたしは強くそう思い込もうとしていた。
だってこの人、あのときあたしのことレイプしようとしたもの。信用できない人なんだもの。この人なんかよりユーキさんのほうがずっと信じられるけど、だけど、ユーキさんは……でもこの人の言うことなんか……でも……。
「あああ、もうっ!」
頭を抱え込んで、ひざの上の鞄に額を乗せて、髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
「なんかもう、わかんないよおー」
考えすぎて混乱しすぎて、破裂しそう。
-つづく-
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