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2006年05月02日 (火)
その日は、店長の奥さんが体調を壊したということで、どうしてもとお願いされて模擬テストのあとにアルバイトに出た。
あたしのバイト先のお店は、最近どこかのフリーペーパーで口コミ紹介されて以来、繁盛しているらしい。あたしが着いたときには、日曜のお昼過ぎだと思えないほどのお客さんが狭い店内にいた。慌ててブラウスの袖をまくってエプロンと三角巾をつけてレジ前に立つ。次々に並べられるパックの値段を打ち込んでいるうちに時間は過ぎて、そして気が付くと天井近くのスピーカーから閉店間際の「蛍の光」が流れ始めていた。
気のいい店長のおじさんに、ありがとう、助かったよ、またよろしくねと頭を下げられて、ちょっといい気分であたしは暗くなった道を辿る。
「あー、疲れたー」
呟くように言いながら、鞄を片手にあたしはてくてく歩いた。なんだかとてもいいことをしたような、すごく頑張って働いたような気がしていた。
家への帰り道は、たまには車が走ることもあるくらいの狭い生活道路で、すれ違う人も犬を散歩させてるみたいなのどかさで、当然だけれどあたしは無防備だった。後ろを誰が歩いているとか気にしてなかったし、その人があたしの腕をいきなり取るなんて、全く思っていなくて、だから。
「こんばんは、千紗ちゃん」
ぐいと抱き寄せる腕とその声に、金縛りに遭ったように動けなくなる。聞き慣れた響きと見慣れたシルエットに、一瞬ユーキさんかとも思ったけど。
「ひさしぶり。元気だった?」
明るく笑うメガネの奥の細まった目とタバコのにおいに全身が硬直した。
-つづく-
あたしのバイト先のお店は、最近どこかのフリーペーパーで口コミ紹介されて以来、繁盛しているらしい。あたしが着いたときには、日曜のお昼過ぎだと思えないほどのお客さんが狭い店内にいた。慌ててブラウスの袖をまくってエプロンと三角巾をつけてレジ前に立つ。次々に並べられるパックの値段を打ち込んでいるうちに時間は過ぎて、そして気が付くと天井近くのスピーカーから閉店間際の「蛍の光」が流れ始めていた。
気のいい店長のおじさんに、ありがとう、助かったよ、またよろしくねと頭を下げられて、ちょっといい気分であたしは暗くなった道を辿る。
「あー、疲れたー」
呟くように言いながら、鞄を片手にあたしはてくてく歩いた。なんだかとてもいいことをしたような、すごく頑張って働いたような気がしていた。
家への帰り道は、たまには車が走ることもあるくらいの狭い生活道路で、すれ違う人も犬を散歩させてるみたいなのどかさで、当然だけれどあたしは無防備だった。後ろを誰が歩いているとか気にしてなかったし、その人があたしの腕をいきなり取るなんて、全く思っていなくて、だから。
「こんばんは、千紗ちゃん」
ぐいと抱き寄せる腕とその声に、金縛りに遭ったように動けなくなる。聞き慣れた響きと見慣れたシルエットに、一瞬ユーキさんかとも思ったけど。
「ひさしぶり。元気だった?」
明るく笑うメガネの奥の細まった目とタバコのにおいに全身が硬直した。
-つづく-
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