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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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この指を伸ばす先-21
2007年03月22日 (木)
 先ほど亮治に散々に弄られ煽られた性感がまだ治まりきってはいないのも関係しているのだろう、理香の目元は赤く染まり吐息も熱く震えている。そしてそれ以上に深いところで反応している自分を理香自身はまだ気付いてはいない。
「だめ。そこはだめ」
 パンツのベルトにかかった手に理香が慌てる。けれど細い指での抵抗は達也には無意味だった。逆に、それが男をムキにさせるのだとは理香にはわからない。
「だめ。ねえ、井出さん。おねがい、もう……」
「だから、これからですって。もうちょっと我慢してください」
 穏やかに倣岸な言葉を放つと、達也は細い両手首を左手だけで押さえた。両腕を戒められ無防備になった下半身をなぶるように撫で回す。
「やだ。ねえ、もうおねがい、やめて」
 許しを乞う理香の声を耳のないような顔で聞き流しながら、達也はパンツのホックを外しジッパーを降ろし、パンストと肌の狭い隙間に右手を滑り込ませた。手の中に隠したチューブを親指で握り潰すとジェル状の中身をたっぷりと指先に絡め、さらに奥へと手を進める。レースのショーツに覆われたやわらかな翳りを探し当て、そこへぬるりと指先のジェルを塗りつけた。
「あっ! やぁん」
 いきなり秘部に触れられた理香が声を上げる。それにも構わず、達也は女の身体中でもっとも敏感な小さな肉芽へ、くちゅくちゅと淫靡な音を立ててジェルを塗り込んで行った。わずかに熱を感じるそのぬるぬるした感触は、驚くほど理香の感覚を鋭敏にした。軽く擦り付けられるだけで腰がひくりと震え、内側から熱がこぼれようとする。
「あ、んっ。な……、なに?」
「ああ、これ、結構効くらしいんです。自分に使ったことはないのでわからないんですけどね、みんなそう言うんですよ」
 言いながら達也は再び理香の胸へと顔を伏せた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-22
2007年03月23日 (金)
 ちゅぱと音を立ててレース越しに乳首を攻めながら、引っ張られたレースがきしりと悲鳴を上げるのにも構わず、達也は大きな手をショーツにもぐりこませた。薬の効果を早く出すためにと、理香のもっとも敏感な肉芽へとジェルを擦り込む。電流のように身体を走った快感に理香は知らず腰を揺らした。
「あ、やああんっ」
「ちょっとだけ待ってくださいね。すぐによくなりますから」
 にっこりと笑いながら達也はごつごつした指に似合わない優しさで理香を擦り続けた。非常階段の壁と達也の身体に挟まれた理香は身動きさえできない。ちゅくちゅくと卑猥な水音が聴覚からも理香を犯した。粘膜から吸収されたジェルの効果か、あるいは達也のテクニックか、理香のその部分がじきに熱を持ち始めた。
「あ……、や、ぁ……?」
「効いてきたみたいですね。すごくいい感じでしょう?」
 甘い声を上げる理香は、笑みを含んだ達也の卑猥な問いかけにも胸をそらして喘ぎ続けるだけだった。拒絶の言葉さえ思いつかないまま、深いところから揺らされるような快感にひくひくと身体を震わせる。達也の指に応えるように、理香の身体の奥へと続く秘めやかな入り口がひくひくと震えながら透明な液をこぼした。それを察した指が素早く愛液をすくい取り、クリトリスの上でぬるりと円を描く。
「ああっ! あっあっ、あ、ん……っ!」
「ね、気持ちいいでしょう?」
 くすりと笑みを漏らしながら、達也はわずかに口を開いた秘部の奥へ続く道へ、指を差し込んだ。ひくんと震える理香の唇を覆い被さるように塞ぎ舌をねじこむ。身体の奥から湧き上がる快感に弄ばれる理香を食い尽くすように、絡めた舌を吸い上げた。不可解な快感に涙を浮かべ肩で息をする理香の頬に首すじにあごに胸元に唾液の跡をつける。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-23
2007年03月26日 (月)
「あっ、ん……、く、ぅっ」
 ゆっくり抽送を始めた指に理香が押し殺した喘ぎ声を上げる。涙目で背をそらし快感を否定するように首を振る理香の様子に目を細めながら、達也は指のスピードと押し上げる場所を微妙に変える。ひくひくと震える身体を押さえつけるように抱きしめ、口づけるように舌先で軽く耳を舐めた。
「今西さんが一番気持ちいいのってどこですか? ここ? それともこっち?」
「あっ! あ、んん……っ! あ、はぅん!」
 突くように何度も押し上げられた箇所に反応して理香の内部がびくんと震える。知らず知らずのうちに腰が激しく揺れ、さらに達也の指を誘ってしまう。のけぞるようにそらした胸に達也が強く吸い付いた。黒いレースを透かして赤く立ち上がった乳首に軽く歯を立てられ、理香はガクガクと全身を震わせた。ぐいと強く差し込まれた指に悲鳴に近い声を上げる。
「あぁっ! あ、ふ……、も、もう、やぁ……っ!」
「イきそうですか? イってもいいですよ」
 興奮にわずかに乱れた息遣いでそう囁くと、達也は差し込んだ指を増やし、親指をクリトリスに当てた。
「さあ、可愛い顔見せてください」
 細かい振動をクリトリスに加えながら、達也は理香の内側を犯した指の抜き差しを繰り返す。白く泡立った液体が達也の手のひらを通ってショーツへと垂れた。吸収されきれなかった愛液が薄いレースのあいだからこぼれ落ち、理香の白い内ももに卑猥な跡を付けながらぬめぬめと流れた。
「だ……だめ、だめぇっ!」
 一気に激しさを増した達也の攻撃に耐え切れず、理香は快楽の淵へと転がり込んだ。上半身をくねらせる背を反らせ、跳ねるように腰を振り、強くつむったまぶたの隙間から涙を流しながら、息も絶え絶えに声を上げる。
「ああっ! あっ、あ……、ああああっ!」
 達也の指を食い締めて、理香は快楽に全身を硬直させた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-24
2007年03月28日 (水)
「すごく可愛かったですよ、今西さん」
 間欠的にぶり返してくる快感にひくひくと上半身を震わせながら虚ろなまなざしを天井へと向ける理香に、達也は穏やかな口調のまま早まった息遣いで低く囁いた。涙の跡のついた頬に音を立ててキスをすると、力なく投げ出された理香の手を取る。
「私も我慢できなくなってきました」
 くすくす笑いながら、達也はスラックスのジッパーを下ろした。隙間から固く勃ち上がった自らを引きずり出すと理香の手の中に押し付ける。快感に理性を吹き飛ばされたままの理香はさしたる抵抗もせず、達也の指に導かれて熱く火照ったそれを指に絡ませた。
「そう、そんな感じで」
 すでに薄く先走りの液でぬめり始めた昂ぶりを理香の指で包み込み、その上から自分の手を被せて強く握ると、達也はゆっくりと動かし始めた。じきにその息遣いが荒くなり、動きも激しくなる。
「気持ちいいですよ。今西さんの手って、すごくやわらかいんですね」
 耳元に囁いた低い声に理香が未だ理性の戻っていない視線を返す。まるで寝起きのように焦点の合っていない目にくすりと笑うと、達也は覆い被さるように半開きの小さな唇を奪った。細い身体を壁に強く押し付け手の動きに加えて腰を動かしながら、理香の胸へと舌を這わせて行く。治まりかけていた感覚を再び煽られた理香がぴくんと反応するのを確認しながら、痛々しいほどに赤く色づいた乳首へ歯を立てる。
「今西さん。私は……」
 荒い息遣いの合間に理香に何事かささやきかけたとき、卑猥な空気に満ちた非常階段の踊り場に似つかわない現実的な電子音が達也のスーツの胸ポケットから鳴り響いた。快感に熱い息を吐いていた達也は驚きに一瞬身体を強張らせ、けれど指先で携帯電話を引っ張り出した。通話相手の確認をするより先に理香の口を片手で塞ぎ、そして通話ボタンを押す。
「はい、井出です。あ、マネージャー」
 達也の言葉に理香がひくりと身体を震わせた。快感に流され虚ろだったまなざしに理性の色が湧き上がる。
「あ、はい。了解です。はい、はい、すぐに戻ります。はい。では」
 早口で会話を終えると、達也は溜息と同時に携帯電話をポケットに戻した。ぼんやりと見上げてくる理香に明るく笑いかけながら、その口を塞いでいた手を外した。次いで自らへと奉仕させていた理香のやわらかな指も抜き取り、ゆっくりと身体を離す。
「残念ですが、マネージャーからの呼び出しです。私は先に行きますので、今西さんは顔でも洗って、少し落ち着いてから戻ってください。この向かいに女性用のトイレがありますから」
 穏やかに言いながら達也は素早く身支度を整え、防火扉の向こうへと消えた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-25
2007年03月29日 (木)
「どうしよう、あたし」
 達也に言われるまでもなく、理香は乱れたままのブラウスの前を隠すように両手で掻き抱くと、非常階段の斜め向かいにあった女性用のトイレに駆け込み、そのままの勢いで素早く個室に滑り込んだ。ウォッシュレットが標準完備された上品な温かみにベルトを緩めて腰を降ろし、ペーパーが溶けるほどに濡れそぼった自らの秘所を清める。
「どうしよう。こんなことになっちゃうなんて」
 きゅっと強く拭くと、奥からさらにぬるりと流れ出てくる。軽く触れるだけで背筋に軽い電流が走る。痺れに近い感覚は先ほどまでの強い快楽に通じる。その事実が理香には怖かった。
「初対面の人と、あんなこと……しちゃった……」
 しかも、抵抗もしないで。
 それを思うたびに後悔に近い震えがくる。もっとはっきり『やめて』と言えばよかったのだと理香は唇を噛んだ。達也の暴挙もそうだが、それに流されてしまった自分にも腹が立つ。
 優しい人だと思ったのに。
 ううん、あの人たちに比べればずっと優しかったけど。優しく……してくれたけれど。
 達也の指遣いを言葉をどう感じたのか、それに自分の身体がどう応えたのか。思い出すだけで理香のずっと奥から熱が湧いてくる。震えるようにひくりと口を開けたそこからトロっと熱く滴るものが溢れてくる。
「あ……や、だ……」
 長く糸を引くように身体からこぼれ落ちたそれに気付き、羞恥心に理香の頬がカッと染まる。些細なことにも激しく反応してしまうのは、達也に使われた薬の効力が残っているだけなのだが、理香にはそれとわからない。自分がひどく淫らな女になってしまったようで、そんな自分にうろたえながら、さらにペーパーを引き出してそこを強く拭った。けれどやわらかな紙がこすれるたびに、達也が残して行った小さな炎が、理香の中で燻り続けた。
「あっ! あぁ……っ?」
 執拗に拭いていた紙の溶け始めた部分を、力の入ってしまった理香の人差し指がつぷりと突き破った。次々と内側から流れ出る熱い潤みが、触れただけの指先をやわらかなフリルから女のもっとも敏感な芽へとぬるりと滑らせる。その事実への驚きと自分へ与えてしまった一瞬の感覚に、理香は思わず声を上げた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-26
2007年03月30日 (金)
 ペーパーを握っていた力が抜け、ぺちゃりと濡れた音を立てて、半ば以上溶け残骸と化したかたまりが小さな水溜りの中へ消えたが、理香はそのことにも気付いていない。背筋に走った一瞬の快感が、ようやく再生しかけていた理香の理性に、小さなくさびを打ち込んでしまった。
「な、なんで……こんな……」
 その理由を確かめるように、理香は赤く腫れ上がり卑猥にぬめる肉厚のフリルへと指を進めた。快感を与えすぎないように、ひだのあいだをゆっくりと辿る。動くたびに指にまとわりつくそのぬめりが立てる音を、理香は耳ではなく頭の中で聞いていた。ちゅぷちゅぷと奇妙なまでに生々しい音が、わずかにアイボリーがかった陶器で囲まれた丸い空間の中で反響し、さらにその音が理香の性感を高めていく。
「あ、あたし……、なんでこんなに……」
 はぁっと熱い溜息を吐きながら理香はためらいがちに探っていた中指を、上下に擦り付ける動きに変えて行った。痛みを与えないように包皮の上からそっとクリトリスに触れ、ゆっくりと円を描く。加えられた愛撫に応えるように、赤く腫れ上がった襞の奥から透明のしずくがあふれ出た。粘着質な光が指先を通ってポタポタと滴る。
「や……きもちいい、よぉ……」
 ひくひくと震えながら理香は空いた左手で胸元をまさぐった。先ほどまでの達也の仕草を辿るように、レース越しに乳首を爪でカリカリと引っ掻く。あっという間に赤く隆起したそれをつまみ、転がす。
「あ……、ど、どうしよう。あたし、あたし……」
 切なそうに眉をひそめ荒い息を吐きながら、理香は虚ろに呟いた。
 自分が何をしているのかはわかっていた。五年ぶりに会った昔の彼氏にレイプされたあと初対面の同僚に犯され、それでも足りず、トイレにこもって自分の指で快楽を貪っている。大学卒業と同時に、地元に帰って就職した同級生の彼氏とは遠距離恋愛になり、物理的な距離と新しい生活と仕事疲れに流されるように自然消滅をした経緯もあって、理香にとってオナニーはそれほどの禁忌というわけでもない。
 それでも、この状況は違う。間違っている。
 もしもこの現状を知られたら、誰もが自分を淫乱だと言うだろう。とんでもない女だと口をそろえ、それほどまでに男に飢えているのかと卑猥にはやし立てるだろう。そう思い、理香はぶるりと身を震わせた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-27
2007年03月31日 (土)
 今までに、これ以上の行為を強要されたことがなかったわけではなかった。亮治に捨てられた直後は、快楽そのものと言うよりは愛されることを求めて、男からの誘いに簡単に乗った。その行動の結果として、しなくてもいい後悔も悪夢も涙の夜も経験した。そんな無様な自分に嫌気が差したこともあった。それでも、これほどまでに自分自身が汚れていると実感したことはなかった。
 あたしって、やっぱり淫乱、なの……?
 耳の奥に残る言葉をうわ言のように呟きながら、理香は身悶えるように否定するように強くかぶりを振った。それでも、蕩けた身体は停まらなかった。中指と人差し指をそろえると、ずぷりと脚の付け根のその奥へ、ゆっくりと沈めて行く。
「やっ、あ、やあ……っ」
 理香の意思とはうらはらに、ぬるぬるした粘膜は嬉しげに蠢きながら指に絡み付いてくる。その中のさらにもっとも感じる部分を探して、細かく抜き差しを繰り返す。程なくその一点を捉えると、理香は大きく腕ごと動かして自らを犯し始めた。
「あっ、あ、あ、ああ……っ」
 狭い個室に、苦しげな吐息と卑猥な抽送音が響く。指に合わせて腰を揺らし、もっと奥へと誘い込む。快感を貪るように腰を繰り出しながらもさらなる悦楽を求めて、乳首を弄んでいた左手を下ろしクリトリスをやわやわとつまんだ。
「んんっ! ん、あ、あ、んんん……っ!」
 伝って流れ出てきた蜜がかき回される勢いに白く泡立ち、指のあいだからぽたぽたと落ちて行く。左手が痛みを与えるほどに肉芽を強くつまみひねり上げる。一刻も早くこの自慰行為を終わらせたいとの思いを体現する激しい自分の指遣いに、あっというまに理香は追い詰められた。ぐうっと仰け反りながらその先を求めて加速して行く。つま先を浮かせ、痙攣するようにガクガクと腰を揺らす。喘ぐ唇のあいだから、つうっとひとすじヨダレが流れた。
「あっあっあっ……あ、あああ……っ!」
 早く早く。あと、少し。あと……。
 コンコン。
 何の前触れもなくすぐそばで聞こえたノックの音に、理香はビクンと身体を硬直させた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-28
2007年04月02日 (月)
 自らに指を突き込んだ淫らな姿のまま、スイッチを切られたダンシングドールのような不自然な体勢で理香は停止した。宙に浮いた体勢で振り回され、必死でつま先にしがみついていたパンプスが一瞬のラグタイムの後、ころりと床に落ちる。けれどそれにも気付かず、理香は恐怖に震えていた。
 そこに誰かがいる。この薄いドアの向こうに、誰かが。
 いつからいたの? 聞こえていた? それとも聞かれていた?
 ……だれかが、そこに……?
 その先を考えることすら拒否する理香を面白がるように、ドアの向こうから低い笑みを含んだ楽しげな声が聞こえてきた。
「理香。オナニーするなとは言わないが、今は就業時間中だぞ」
 せんぱ、い?
 聞き覚えのあるその声に、息を止めたまま固まっていた理香の肩が大きく揺れた。相手が見知らぬ他人ではなくてよかったとの一瞬の思いは、けれどもすぐに違う不安となって理香の理性を脅す。
 先輩、いつから……? もしかして、さっきからずっと……?
「さっさと出てこい、理香。仕事だ」
 仕事と言う言葉に理香は慌てて指を抜き取り、急いで巻き取ったペーパーで両手指と秘所を拭いた。丁寧に擦り取りながらも指から立ち昇る卑猥な女の匂いに唇を噛む。今さらどれほど取り繕うと亮治は全てを知っているのだ。
「こら、聞こえてるのか。早く出てこい」
 個室にこもって自慰に耽っていた自分を亮治はどう思っているのだろうか。所詮はこの程度の、簡単に快楽に流される女だと、亮治は自分を侮るだろう。再会したときのように、理香の意思を無視し言葉でなぶりながら押し倒すだろう。自分が亮治に襲われる場面を一瞬思い浮かべ、理香は恐怖に強く首を振った。身体の奥に残っている熱が、屈辱的な想像にすら反応する。その事実が何より理香に怖かった。
「今すぐ出てこなければドアをぶち破る。俺に見られたいか? 見られながらやりたいのなら、サボりも特別に許してやってもいいぞ。真正面でおまえが恥ずかしい格好でイくところをじっくり眺めてやる」

 -つづく-
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この指を伸ばす先-29
2007年04月03日 (火)
「そ、そんな……」
 まさかそこまでを望まれるとは思わなかった理香は絶句する。大きく息を吐いてドア越しにいるであろう亮治へ強い視線を向けた。
「そんなことしません!」
「じゃあ、出てこい」
 奇妙なほどに明るい声がクスクスと笑った。不自然なまでに穏やかな亮治の言葉の響きに理香はわずかながら安堵した。亮治がこの状況をどう思っているのかはまではわからないが、理香に対する態度にさほどの変化がないことだけは確かのようだった。それがなぜか希望であるように理香は思う。亮治の知る自分と今の自分にそれほどの違いがないのだと、そう思えるような気がした。
「すぐに行きます。ちょっとだけ、待ってください」
「まあいいだろう。五分以内だ」
 軽い吐息と共にコツコツと固い音がして人の気配が遠のいた。男物の靴音は重く強く響く。平常ならば気付かないはずはないのに、それさえ聞こえないほど没頭していたのかと理香は今さらながら頬を赤らめる。
「もう、なんか、もう……」
 ぶんぶんと頭を振ると、下着や内ももにこびりついた半ば乾いた液体をペーパーで強くこすり、素早く身支度を整えた。パンプスを穿き直しながら立ち上がり、カギを外してドアを押し開ける。一度だけ肩越しにちらりと個室内へ視線を送ってから唇を強く尖らせてドアを抜けた。
「あー、やだやだ」
 照れ隠しにブツブツ言いながら洗面スペースへ走り寄る。洗面ボウル内に手を差し込むと人体を感知したセンサーが、白鳥の首のように長く伸びた蛇口からじゅわっと勢いよく水を吐き出す。普段はあまり使わない液体ソープをたっぷりと使って、理香は執拗なほど丁寧に手首から爪のあいだまでを洗った。丸く合わせた両手に水を溜めて何度もうがいをしてからようやく顔を上げる。
 本当は、顔も身体も洗いたいところだけど。
 冷え切ったショーツと未だにぬめる下腹部を思って理香は顔をしかめながら鏡に向かった。想像したよりも顔色や表情に普段と変りがないことに、ほっと息を吐く。髪留めを外して手櫛で梳き流しながらもう一人の自分へと呟いた。
「これなら……大丈夫かな」
「ああ、大丈夫だな。誰も気付かない」
 ふいに背後からかかった声に理香は慌てて振り返った。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-30
2007年04月04日 (水)
「先輩っ。い、いつ、そこに……」
「時間だ。行くぞ」
 短く帰ってきた答えにならない言葉に、理香はわずかに眉をひそめる。
「行くってどこへ?」
「仕事だ。さっきもそう言った。覚えろ」
 左脇にファイルをはさんだまま、欧米人のようなオーバーアクションで両腕を広げると、亮治はわざとらしく肩をすくめた。あごを上げるように理香を見おろすと深い溜息をついて見せる。
「上司が、仕事をサボって隠れてオナニーしていた部下を、わざわざこんなところまで迎えにきてやったんだぞ。もっとありがたがったらどうだ?」
「な……っ! あたし、そんなこと頼んでませんっ!」
 自分に向けられた、卑猥な色の混じった恩着せがましい言葉に、理香は耳まで真っ赤になりながらも反射的に怒鳴り返した。二十センチ以上も上空から向けられる薄い笑みを浮かべた表情を睨みつける。
「それに、ここは女子トイレです! 先輩が入ってきていいところじゃないんです! もし誰かに見られたら……!」
「まあ、昼休み直前のこの時間帯にわざわざ便所に駆け込むヤツは普通はいないだろ。よっぽど切羽詰っていたなら、ともかく」
 おまえのようにな。
 半ば照れ隠しの、そして残りの半分は亮治を心配しての理香の言葉にも、低く茶化すような声だけが返ってくる。
「それに、そこまで切羽詰っていたのなら、俺のことを詮索する余裕もないだろう? まあ別にそれならそれで構わんが。学校を出たての若造とは言え、社長の甥で役員の俺に、どうこう言える人間はあまり居まい?」
 全てを見透かしたように細まったまなざしに、先ほどからの続きのように噛み付こうと口を開きかけて、けれど理香は黙って亮治から視線を外した。俯くように両手で髪を後頭部にまとめ、ぱちりと髪止めではさむ。珍しく反論してこない理香をちらりと見下ろして、亮治は手にしたファイルケースを理香に差し出した。
「まあ、それは今はいい。おまえの初仕事だ。付いてこい」

 -つづく-
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