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R18 らぶえっち小説Blog
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マスカレイド2-81
2010年08月12日 (木)
「おい、仁?」
 お箸片手の藤元先生の訝しげな声なんて全然聞こえてないみたいに、佐上先生の目はまっすぐあたしに向けられていた。その視線にその表情に、寒気がした。
 あたしはわかっている。たった今、わかってしまった。佐上先生がなにを考えているのかを理解してしまった。でもそれは認めたくなくて、認められなくて――。
「せんせ、でも、まだ……」
 卒業まで半年もあるんだよって、まだまだあたしは高校生だよって、明日だってガッコにくるんだからって言いたいのに、乱れた前髪のあいだから見える物憂げなまなざしにのどをぎゅっとつかまれたみたい。言えることも言いたいこともいっぱいあるのに、気持ちは焦ってるのに、なのに。
「今日で終わり、か」
 思った通り、そして願わなかった通り、佐上先生は静かにそう言った。
「せんせ……」
 わかっていた。最初っから、こんな日がくるってわかっていた。先生の好みの『イマドキじゃない女子高生』に当てはまってたからあたしに手を出しただけ。あたし自身に興味なんてなかった。手近にいて便利だから、抱きしめたりキスしたり、大切にしてるふりをしてただけ。
「芝口。さよなら、だ」
 キレイな指が髪を梳くように撫でて、背を丸めるように顔を覗き込んできて、そして触れるだけのキスをした。
「せん、せっ……」
 わかってても嬉しかった。大好きだった。何度でも抱かれたかった。卒業したらそれっきりだってわかってたし、納得もしていた。でも、それはもっと先のことだって、卒業までは続くんだって思っていたのに。安心していたのに。信じていたのに。
 でも、これが最後なんだ。次にもし会っても先生は知らん顔する。あたしのことなんか知らないふりをする。ううん、見もしないかもしれない。視線を合わせることさえしてくれないかも。
「さようなら、芝口」
 それでも、細まった目が寂しそうだと、それはあたしのせいだと、先生はあたしと別れるのはホントはイヤなんだと、そう思いたかった。思っていたかった。あたしの勝手な思い込みでいいから、せめて、それだけ――。
「仁! おい、待て! 待てってばよっ!」
 涼しげな後ろ姿と大きなポロシャツの背中と怒鳴り声が競うようにドアの向こう側に消えていくのを、あたしは食べかけのトマトサンドを手に、パイプ椅子に座ったまま見送った。

 そのあと、そのサンドウィッチを食べたのか、午後の授業にちゃんと出たのか、帰るまでに誰となにを話したのか、そしてどうやって家に帰ったのか……。実は、ほとんど覚えてない。

 -つづく-
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