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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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花を召しませ 番外編~White HESH -終話
2009年01月31日 (土)
 それはつまみ出そうとした彼の指に抵抗し、変形しながらケースに残り、引き剥がす指にまとわりついた。中に入れたシリアルは完全にふやけ、噛めば噛むほど舌にねちょねちょとくっつく。湯せんでかたまりのチョコを溶かすときに牛乳を入れすぎたのが原因だった。チョコレートという表現をするのは申し訳ないような気味の悪い代物だ。あんなものを人にあげるなんて嫌がらせだ。
「でも、あれは、さー」
「美雪さんが俺のために作ってくれたんだ。嬉しかったに決まってんじゃん」
 わたしの語尾を遮るように彼は強い声で言う。
「美味しかったよ。チョコも、美雪さんも」
 真面目な顔のままわずかにいやらしい笑いを口元に浮かべて、そして彼は軽くキスをしてくれた。
「じゃあ、そろそろ。俺、もう行かないと」
 言いながら彼はゆっくりと身体を放した。
「今日はとっても楽しかった。ああいうデートもいいね。カバ、おかしかった」
「うん、そうね。おもしろかったね」
 今まで経験したことのなかった昼間のデートは新鮮だった。キリンに餌の木の枝を差し出してはしゃいでいた彼の姿は、普段の生活ではなかなか見ることができなかっただろう。動物園という場所は自然と誰もが子どもに帰ることができるのかもしれない。
「次は多分、間が空いちゃうと思うけど。でも、また電話するから」
「う、うん」
 少し言い辛そうに申し訳なさそうに目を伏せる彼に頷き返した。
 彼のこれからしばらくの仕事時間は過酷なものになるらしい。ホワイトディの、しかも金曜日をむりやり休んだせいなのだろうと想像はつく。名残惜しそうに髪を撫でてくれる仕草にずきんと胸が痛くなる。
「じゃあ、ね」
 曖昧な笑みを浮かべながら手を引いて、そのまま腰をひねるようにして彼は後部座席に上半身を伸ばした。そっと差し出されるわたしのバッグを受け取り、寂しげな彼の目に頷き返す。きっとわたしも、彼と同じような目をしているのだろうと思う。もう少し。あともう少しだけ。胸の内側で叫びながら彼の優しい表情を見つめた。
「うん、じゃあ、ね。またね」
「うん、また」
 同じような言葉を二人で交互に繰り返す。嫌がる腕をなだめながらいつもより重い車のドアを押し開け、アスファルトにパンプスを伸ばした。ドアを閉めてからゆっくりと振り返る。丸いヘッドライトが白く道を照らし出していた。
 ぶおんと響くエンジン音、白く吐き出される排気ガス。油の混じった嫌なにおいさえ愛しい。彼が好き。彼に関することが好き。嫌いなことさえ好き。なんのためらいもなくそう言い切れる。
「じゃあね、また」
 そして何よりも、白く照らし出されたその笑顔が、大好き。

 -おわり-
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名乗ってもいいけど表には出さないでと言うかたは名前をカッコで閉じてください→例(にゃお)