2ntブログ
R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
スポンサーサイト
--年--月--日 (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
花を召しませ 番外編~White HESH -40
2009年01月28日 (水)
「ん、んん……」
 三月の午後五時半は十二分に暗いけれど、だからと言って周囲の目をまったく気にせずに済むほどでもない。買い物帰り、仕事帰り、そんな人が行き交う時間帯だ。その中で助手席に覆い被さるようにしてキスをする男性の背中に気付く人はどれくらいの割合だろう。すぐに理解し目をそらす人もいれば、もっとよく見ようと車内を覗き込む人だっているかもしれない。鮮やかなエメラルドグリーンの可愛い軽自動車はそれでなくても目立つ。しかもその場所が自分が住むアパートの真ん前の道路となればならばなおさらだった。
 見た人の口が軽かったらどうなるか。周囲に立つうわさはどれくらいの速さで広まるのか。もしかしたらわたしのことを直接的に知る人に伝わってしまうかもしれない。そう考えても彼を押しのけられないのは、それ以上にわたしが彼を求めているからだろう。
「ん、ん……」
 小さく吐息を漏らしながら髪をかき分けていた繊細な指がゆっくりと首すじへ流れ、鎖骨のあいだのくぼみに心地よさげに収まったプチペンダントを弾いた。すうっと離れた唇が、親指の爪ほどのサイズの小さな銀色の四つ葉のクローバーを見て満足そうに微笑む。優しい目がわたしをじっと見て、そしてまた笑う。ワックスをつけていないせいで、セットしきれていない少しボサボサの髪が驚くほどに可愛くて、その笑顔に心臓が胸を突き破って出てくるんじゃないかと思う。
「ん、やっぱ似合う。美雪さん可愛い」
 可愛い。可愛い。
 ためらいもなく何度も繰り返される真っ直ぐな褒め言葉に、知らず頬に笑みが浮かぶ。自分がきれいな女じゃないことはわかっていても、褒められるのはやっぱり嬉しい。その相手が唯一の男性であれば、なおさら。
 彼にだけは可愛いと思われたい。可愛いと言われたい。その望みがすべて叶う、今が至福の瞬間。
「ありがとう、シズくん」
「どーいたしましてー」
 嬉しそうに何度も頷きながら、彼は二本の指の上にクローバーを乗せた。四枚の葉っぱのうちの一枚にピンクのハートを秘めたペンダントが彼の指で踊るように回る。
「でも、いいの? こんな高そうなもの……」
「いいのいいの。男は倍返し、が世間の常識ですから」
 わたしをからかうように軽い口調で彼は笑うけれど、自分が贈ったものを思い返せばこんなアクセサリーをもらうのはおかしい。
「え、でも……」
 三日遅れのバレンタインで彼に渡した手作りチョコは、ひどいの一言に尽きたからだ。

 -つづく-
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
名乗ってもいいけど表には出さないでと言うかたは名前をカッコで閉じてください→例(にゃお)