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2008年05月06日 (火)
真夜中の長電話も仕事中のこっそりメールも、歩くときに手を繋ぐことも、そして獣じみた生々しい欲望をぶつけ合う行為も、その相手は彼以外には考えられない。それに残念ながらと言うべきか、自分で言うのも少し寂しいが、わたしはもてるタイプでは決してない。平坦な身体つきは、女性としての魅力――いわゆるセックスアピールも乏しい。わたしに言い寄ってくる奇特な男性は彼ひとりしかいない。
そんなわたしのどこに、彼以外の男性とそういう関係になりえる可能性があると言うのだろう。浮気などという言葉がどこから出てきたのだろう。
「だったらいいんだ、うん」
独り言のようにそう言って頷くと、彼は真正面を見たまま器用に新しく取り出したタバコを咥えた。サイドに光の帯が流れるお洒落なライターで火を点け、ふうっと白い煙を吐き出す。
「シズくん、なんかあったの? わたし、何かした?」
彼は機嫌が悪いからと言う理由で、わたしに奇妙な言いがかりを吹っかけるようなタイプではないと思う。単なる冗談にしては彼のまなざしの暗さが気になる。彼はわたしにそういう疑いを掛けているのだろうか? 疑われるような行動をわたしが取ったと、そう言うことだろうか?
「ん? 別にー? って言うか、美雪さんなんか心当たりあるの?」
「ないわよ。ないけど」
ないけど。
「シズくんが、シズくんらしくないこと言うから――」
反論しかけて、けれど言葉は途中で途切れた。
久しぶりのデート、せっかくのホワイトディ。それをこんなつまらない口ゲンカで台無しにしてしまいたくない。ここでわたしが譲れば、彼も奇妙な疑問を引っ込めてくれるかもしれない。
「そう? 俺ってもともとこういうヤツだよ。疑い深いし、嫉妬深い。自分のことを棚に上げて相手を責めるような、心の狭い男なの」
唇の端を歪めてわざとのように悪そうな笑みを見せる彼に曖昧に頷き返して、この話題を続けることを拒否する気分で窓の外に小さく呟いた。
「変なシズくん」
-つづく-
そんなわたしのどこに、彼以外の男性とそういう関係になりえる可能性があると言うのだろう。浮気などという言葉がどこから出てきたのだろう。
「だったらいいんだ、うん」
独り言のようにそう言って頷くと、彼は真正面を見たまま器用に新しく取り出したタバコを咥えた。サイドに光の帯が流れるお洒落なライターで火を点け、ふうっと白い煙を吐き出す。
「シズくん、なんかあったの? わたし、何かした?」
彼は機嫌が悪いからと言う理由で、わたしに奇妙な言いがかりを吹っかけるようなタイプではないと思う。単なる冗談にしては彼のまなざしの暗さが気になる。彼はわたしにそういう疑いを掛けているのだろうか? 疑われるような行動をわたしが取ったと、そう言うことだろうか?
「ん? 別にー? って言うか、美雪さんなんか心当たりあるの?」
「ないわよ。ないけど」
ないけど。
「シズくんが、シズくんらしくないこと言うから――」
反論しかけて、けれど言葉は途中で途切れた。
久しぶりのデート、せっかくのホワイトディ。それをこんなつまらない口ゲンカで台無しにしてしまいたくない。ここでわたしが譲れば、彼も奇妙な疑問を引っ込めてくれるかもしれない。
「そう? 俺ってもともとこういうヤツだよ。疑い深いし、嫉妬深い。自分のことを棚に上げて相手を責めるような、心の狭い男なの」
唇の端を歪めてわざとのように悪そうな笑みを見せる彼に曖昧に頷き返して、この話題を続けることを拒否する気分で窓の外に小さく呟いた。
「変なシズくん」
-つづく-
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