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2008年04月26日 (土)
あまりと言えばあまりの言葉に、反論の声さえ出ない。絶句したわたしに彼はひどく鋭いまなざしを見せ、けれど次の瞬間にはそれが錯覚であったかように、弾けるような明るい笑い声を上げた。
「冗談だよ、冗談」
美雪さんの驚く顔が見たかっただけ。
悪びれもせずくすくす笑うと、彼は灰の長くなったタバコを灰皿に打ち付けた。
「俺と一緒でも、イヤじゃないんでしょ?」
「あ、あたりまえ、じゃないっ」
なんとか搾り出した声に彼が肩を震わせて笑う。
「ひどい、シズくんっ」
思わず抗議すると、彼はハンドルを軽く叩きながらのどをそらすようにしてなおも笑った。彼が疲れているみたいだからと気を使ったつもりの行動の一部を摘み上げてからかわれた、そのこと自体は決して嬉しくはないけれど、でも楽しげに変わった車内の雰囲気にホッとする。
「ひどいー」
「ごめんごめん。ちょっとね、拗ねてみただけ」
上目遣いに睨みつけると彼は真顔になった。それでも口元に笑みは残っている。そのことに安堵しながら、わざとらしくそっぽを向く。
「美雪さんが変にそわそわしてるからさ、なんかやましいことでもあるのかなって思ってさ」
やましいこと?
「そんなの、ないよ?」
思わず眉根の寄ってしまったわたしに彼は軽く頷いた。
「だよね。美雪さんに限ってね」
「それって、どういう意味?」
意味不明の彼の言葉に、問い掛ける声が無意識に低くなってしまう。訝しげなわたしの態度に気付いたのか、彼は短くなったタバコを灰皿で押し潰すように消すと、流すようにちらりとこっちへ視線を向けた。
「どう言う意味もこう言う意味も、そのまんまだよ。美雪さんに浮気なんかされたら、俺がまともじゃなくなるよってこと」
相手の男、殺しちゃうかも。
物騒な言葉を簡単に言うと、彼はくくっと低く笑った。
「浮気? 相手の男?」
唐突に彼の口から出てきた言葉に首を捻る。
「わたしが? どうして?」
「だから、もしもの話さ。もしもそんなことになったら、ってこと。俺、自制する自信ないもの」
話題とはうらはらに、おかしそうにくすくす笑う横顔がいつもと違うように見えてしまう。生温かい疑問が綿ぼこりのようにふわふわと心の中に舞い降りてくる。
「わたしにそんな人、いないよ?」
わたしにはシズくんしかいない。
-つづく-
「冗談だよ、冗談」
美雪さんの驚く顔が見たかっただけ。
悪びれもせずくすくす笑うと、彼は灰の長くなったタバコを灰皿に打ち付けた。
「俺と一緒でも、イヤじゃないんでしょ?」
「あ、あたりまえ、じゃないっ」
なんとか搾り出した声に彼が肩を震わせて笑う。
「ひどい、シズくんっ」
思わず抗議すると、彼はハンドルを軽く叩きながらのどをそらすようにしてなおも笑った。彼が疲れているみたいだからと気を使ったつもりの行動の一部を摘み上げてからかわれた、そのこと自体は決して嬉しくはないけれど、でも楽しげに変わった車内の雰囲気にホッとする。
「ひどいー」
「ごめんごめん。ちょっとね、拗ねてみただけ」
上目遣いに睨みつけると彼は真顔になった。それでも口元に笑みは残っている。そのことに安堵しながら、わざとらしくそっぽを向く。
「美雪さんが変にそわそわしてるからさ、なんかやましいことでもあるのかなって思ってさ」
やましいこと?
「そんなの、ないよ?」
思わず眉根の寄ってしまったわたしに彼は軽く頷いた。
「だよね。美雪さんに限ってね」
「それって、どういう意味?」
意味不明の彼の言葉に、問い掛ける声が無意識に低くなってしまう。訝しげなわたしの態度に気付いたのか、彼は短くなったタバコを灰皿で押し潰すように消すと、流すようにちらりとこっちへ視線を向けた。
「どう言う意味もこう言う意味も、そのまんまだよ。美雪さんに浮気なんかされたら、俺がまともじゃなくなるよってこと」
相手の男、殺しちゃうかも。
物騒な言葉を簡単に言うと、彼はくくっと低く笑った。
「浮気? 相手の男?」
唐突に彼の口から出てきた言葉に首を捻る。
「わたしが? どうして?」
「だから、もしもの話さ。もしもそんなことになったら、ってこと。俺、自制する自信ないもの」
話題とはうらはらに、おかしそうにくすくす笑う横顔がいつもと違うように見えてしまう。生温かい疑問が綿ぼこりのようにふわふわと心の中に舞い降りてくる。
「わたしにそんな人、いないよ?」
わたしにはシズくんしかいない。
-つづく-
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