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2007年08月03日 (金)
亮治の言う通り、三十七階にはダークスーツを着込んだ中年の男性がエレベータ前のロビーのソファで待っていた。時間に遅れたわけではなかったが、相手より遅く着いたことを亮治が詫びてから、三人は部屋に入った。
六畳程度と思われる部屋の中央には上質のソファセットが置かれていた。窓際のキャビネットの中は電気ポットとティーセット。
こんな部屋があるんだ。
驚きながらも理香はベッドがないことに安堵していた。そこまで亮治を疑っているわけではないが、だからと言って信用しているわけでは決してない。亮治に下心があることは明白だった。それが情愛なのか、手近な女相手の卑猥な遊びなのかの違いが未だ読み切れない。用心するに越したことはないと理香は考えていた。
「ではやはり、そちらの名簿は見せてはいただけない、と?」
「残念ながら、そう言うことになります」
亮治の真正面に座った男性が曖昧に笑いながら頷く。それを受け、亮治は難しい顔で腕を組んだ。
「弱ったな。田坂さんが頼みの綱だったんですが」
「すみませんね。こっちも、現状ではこれ以上はちょっと。また事情が変われば別なんですが」
互いに初対面らしい二人の簡単な挨拶と名刺交換のあとで始まった穏やかな雰囲気の秘密会談は、一時間以上に及んでいた。いくつかも案件が提示され、等価とされた何がしかの情報もしくは金額と交換されていく。話の内容から、亮治が自分の所属している会社に関する情報を得ようとしているのだと気付き、理香はそっと眉をひそめた。
先輩の仕事って、なんなんだろ。
この場にいても、実質のところ理香にはすることがない。だからと言ってあくびをする訳にも行かない。暇潰しにと目の前に広がったファイルを目で辿ってみるが、意味のわからない数字の羅列は催眠術そのものだった。
あー、すっごい眠くなってきた……。
必死であくびを噛み殺したそのとき、亮治がちらりと理香を見た。
「今西くん」
「はいっ」
慌てて返事をする理香に低く笑うと、亮治は目の前の男性に『ちょっと失礼』と断り、ソファから立ち上がった。付いてくるようにと目で理香を促しドアを開ける。廊下へ出るものと思っていた理香が驚き立ち止まる。その背中を押し込むように亮治はドアをくぐり抜けた。
「えっ? ちょ、ちょっと……ええっ?」
「ビジネスウィートだからな」
理香の反応に亮治は面白そうに唇の端を歪めた。
-つづき-
六畳程度と思われる部屋の中央には上質のソファセットが置かれていた。窓際のキャビネットの中は電気ポットとティーセット。
こんな部屋があるんだ。
驚きながらも理香はベッドがないことに安堵していた。そこまで亮治を疑っているわけではないが、だからと言って信用しているわけでは決してない。亮治に下心があることは明白だった。それが情愛なのか、手近な女相手の卑猥な遊びなのかの違いが未だ読み切れない。用心するに越したことはないと理香は考えていた。
「ではやはり、そちらの名簿は見せてはいただけない、と?」
「残念ながら、そう言うことになります」
亮治の真正面に座った男性が曖昧に笑いながら頷く。それを受け、亮治は難しい顔で腕を組んだ。
「弱ったな。田坂さんが頼みの綱だったんですが」
「すみませんね。こっちも、現状ではこれ以上はちょっと。また事情が変われば別なんですが」
互いに初対面らしい二人の簡単な挨拶と名刺交換のあとで始まった穏やかな雰囲気の秘密会談は、一時間以上に及んでいた。いくつかも案件が提示され、等価とされた何がしかの情報もしくは金額と交換されていく。話の内容から、亮治が自分の所属している会社に関する情報を得ようとしているのだと気付き、理香はそっと眉をひそめた。
先輩の仕事って、なんなんだろ。
この場にいても、実質のところ理香にはすることがない。だからと言ってあくびをする訳にも行かない。暇潰しにと目の前に広がったファイルを目で辿ってみるが、意味のわからない数字の羅列は催眠術そのものだった。
あー、すっごい眠くなってきた……。
必死であくびを噛み殺したそのとき、亮治がちらりと理香を見た。
「今西くん」
「はいっ」
慌てて返事をする理香に低く笑うと、亮治は目の前の男性に『ちょっと失礼』と断り、ソファから立ち上がった。付いてくるようにと目で理香を促しドアを開ける。廊下へ出るものと思っていた理香が驚き立ち止まる。その背中を押し込むように亮治はドアをくぐり抜けた。
「えっ? ちょ、ちょっと……ええっ?」
「ビジネスウィートだからな」
理香の反応に亮治は面白そうに唇の端を歪めた。
-つづき-
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