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2007年08月02日 (木)
「車をよろしく」
「はい。お預かりします」
普段よりも穏やかな笑みを浮かべた亮治が車のカギを握った手を差し出す。軽く頭を下げながらカギを受け取ると、近崎と呼ばれたドアマンは理香へも視線を向けた。ぎくりと固まる理香へ穏やかに笑いかけ深々と頭を下げる。
「どうぞ、ごゆっくり」
「は、はあ……」
曖昧に笑い返しながら理香が一歩下がる。その肩を素早く抱き寄せると、亮治は穏やかに頷いた。
「急いでるんでこれで失礼するよ。行くぞ、理香」
「あ、はいっ」
人目があったことからその手を無下に振り解けなかった理香は、早足で歩き出した亮治に引っ張られたまま、回転ドアへと入った。ゆるやかに回るドアを抜け、理香の部屋どころかアパート敷地ごと全部が入りそうなフロントロビーへ出る。
「う、わーっ」
思わず感嘆の声を漏らした理香に亮治がわずかに苦笑を滲ませる。フロアの中央の、巨大なフラワーアレンジメントの四方を囲むように並べられた一人がけのソファを指差すと、亮治は持っていた紙袋を理香に押し付けた。
「理香、そこでちょっと待っていろ」
「え? あ、えーっと」
否応もなく手渡されたずっしりと重い紙袋を手に、慌てて顔を上げた理香の視界には、カウンタに向かう亮治の背中が映った。背が高く肩幅の広い亮治の後ろ姿は、積年の恨みを差し引いても、すらりと美しい。その事実に理香は内心で舌を出した。
いくらカッコよくたって、性格悪いのは消せないんだから。
毒づきながらも亮治に指示された通りにソファに理香は座った。ふわりと沈み込むやわらかな座り心地に、温泉に浸かったような溜息が出る。
「何やってんだろ、先輩」
フロントマンと話す亮治は背中しか見えない。壮年のホテルマンが丁寧に頭を下げると同時に亮治がくるりときびすを返し、早足でこちらに向かってくる。ゆっくりと立ち上がった理香の手から紙袋を取りながら亮治は小さく頷いた。
「もう相手は着いているそうだ。急げ、理香」
「はいっ」
-つづく-
「はい。お預かりします」
普段よりも穏やかな笑みを浮かべた亮治が車のカギを握った手を差し出す。軽く頭を下げながらカギを受け取ると、近崎と呼ばれたドアマンは理香へも視線を向けた。ぎくりと固まる理香へ穏やかに笑いかけ深々と頭を下げる。
「どうぞ、ごゆっくり」
「は、はあ……」
曖昧に笑い返しながら理香が一歩下がる。その肩を素早く抱き寄せると、亮治は穏やかに頷いた。
「急いでるんでこれで失礼するよ。行くぞ、理香」
「あ、はいっ」
人目があったことからその手を無下に振り解けなかった理香は、早足で歩き出した亮治に引っ張られたまま、回転ドアへと入った。ゆるやかに回るドアを抜け、理香の部屋どころかアパート敷地ごと全部が入りそうなフロントロビーへ出る。
「う、わーっ」
思わず感嘆の声を漏らした理香に亮治がわずかに苦笑を滲ませる。フロアの中央の、巨大なフラワーアレンジメントの四方を囲むように並べられた一人がけのソファを指差すと、亮治は持っていた紙袋を理香に押し付けた。
「理香、そこでちょっと待っていろ」
「え? あ、えーっと」
否応もなく手渡されたずっしりと重い紙袋を手に、慌てて顔を上げた理香の視界には、カウンタに向かう亮治の背中が映った。背が高く肩幅の広い亮治の後ろ姿は、積年の恨みを差し引いても、すらりと美しい。その事実に理香は内心で舌を出した。
いくらカッコよくたって、性格悪いのは消せないんだから。
毒づきながらも亮治に指示された通りにソファに理香は座った。ふわりと沈み込むやわらかな座り心地に、温泉に浸かったような溜息が出る。
「何やってんだろ、先輩」
フロントマンと話す亮治は背中しか見えない。壮年のホテルマンが丁寧に頭を下げると同時に亮治がくるりときびすを返し、早足でこちらに向かってくる。ゆっくりと立ち上がった理香の手から紙袋を取りながら亮治は小さく頷いた。
「もう相手は着いているそうだ。急げ、理香」
「はいっ」
-つづく-
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