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2006年11月20日 (月)
「ね、いいの?」
だって、そんなこと。そんなこと言ったって。
「そうよねえ。そりゃ、そうよねえ」
わたしがまだ何も言わないうちに、有理は納得したような口調で天井を見上げた。半分ほどになったタバコを器用に指先にはさんで、ふうっと白い煙を吐く。
「まあ、こんなめんどくさい男、普通は……」
彼女の言葉にオーナーとシズくんがわたしに視線を向ける。そのまなざしの意味に慌てた。
「え、ちょっと待って、有理。わたし――」
「はい、ストップ、美雪」
え?
キレイに光る唇を尖らせると、有理は突き出した右手人差し指を悪戯っぽい仕草でちょんと動かした。優しい笑みと軽いウィンク。
「さあ、シズ。クイズです。答えはどっち?」
「は?」
ぱちぱちとまばたきをすると、彼は有理とわたしを交互に見た。
「んもー、鈍いわね。だから、美雪の答えはどっちでしょう、って」
「え、でもそれは……」
「あんた、ホントにバカね」
くすっと彼女は笑う。言葉とはうらはらの、優しい笑顔。
「この状況で、だいたいわかるでしょ? 真面目なOLの美雪が、あんたがケガしたからって夜中の二時に飛んできたのよ。あんた、好きでもなんでもない相手がケガしたって聞いて、寝てたのにわざわざ起きる? んで、出かける? 顔見て泣く?」
「あ、えっ……ええと……?」
そのときわたしに真っ直ぐ向けられたシズくんの表情は、いけないと思いながらも笑ってしまうくらい、間抜けすぎるほどに真面目だった。おかしくないのに、口元が緩んでしまう。けれどそれはわたしだけではなかったようだった。笑いを堪えているのだろうオーナーは、顔を半ば歪ませてゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、まあ、俺らはこの辺で」
「そうね。ずっと座ってたら逆に疲れちゃった。踊ってこよう」
組んでいた脚を解くと、有理も立ち上がる。大きく伸びをしながらわたしに視線を向けてにっこりと笑った。
「じゃあね、美雪。明日は休みでしょ。せっかくだしゆっくりしてってよ。その下、毛布とかも入ってるから、要るのなんでも使って」
めくれあがったシフォンブラウスの裾を直しながら、彼女はシズくんの座っている三人がけのソファを目で示した。
-つづく-
だって、そんなこと。そんなこと言ったって。
「そうよねえ。そりゃ、そうよねえ」
わたしがまだ何も言わないうちに、有理は納得したような口調で天井を見上げた。半分ほどになったタバコを器用に指先にはさんで、ふうっと白い煙を吐く。
「まあ、こんなめんどくさい男、普通は……」
彼女の言葉にオーナーとシズくんがわたしに視線を向ける。そのまなざしの意味に慌てた。
「え、ちょっと待って、有理。わたし――」
「はい、ストップ、美雪」
え?
キレイに光る唇を尖らせると、有理は突き出した右手人差し指を悪戯っぽい仕草でちょんと動かした。優しい笑みと軽いウィンク。
「さあ、シズ。クイズです。答えはどっち?」
「は?」
ぱちぱちとまばたきをすると、彼は有理とわたしを交互に見た。
「んもー、鈍いわね。だから、美雪の答えはどっちでしょう、って」
「え、でもそれは……」
「あんた、ホントにバカね」
くすっと彼女は笑う。言葉とはうらはらの、優しい笑顔。
「この状況で、だいたいわかるでしょ? 真面目なOLの美雪が、あんたがケガしたからって夜中の二時に飛んできたのよ。あんた、好きでもなんでもない相手がケガしたって聞いて、寝てたのにわざわざ起きる? んで、出かける? 顔見て泣く?」
「あ、えっ……ええと……?」
そのときわたしに真っ直ぐ向けられたシズくんの表情は、いけないと思いながらも笑ってしまうくらい、間抜けすぎるほどに真面目だった。おかしくないのに、口元が緩んでしまう。けれどそれはわたしだけではなかったようだった。笑いを堪えているのだろうオーナーは、顔を半ば歪ませてゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、まあ、俺らはこの辺で」
「そうね。ずっと座ってたら逆に疲れちゃった。踊ってこよう」
組んでいた脚を解くと、有理も立ち上がる。大きく伸びをしながらわたしに視線を向けてにっこりと笑った。
「じゃあね、美雪。明日は休みでしょ。せっかくだしゆっくりしてってよ。その下、毛布とかも入ってるから、要るのなんでも使って」
めくれあがったシフォンブラウスの裾を直しながら、彼女はシズくんの座っている三人がけのソファを目で示した。
-つづく-
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