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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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花を召しませ-63
2006年11月13日 (月)
 わたしを見上げるその顔の左の頬に、五センチほどの傷があった。白い肌の赤い切り口が痛々しい。そう言えば、お客さんとトラブルになったと聞いた。まさか、殴られたりしたのだろうか。そんなことまであったのだろうか。考えるとぎゅっと息が詰まる。
「だってシズくん……、ケガしたって、聞いた、から」
 彼の両腕は力なく落ちた肩からひざへと、だらりと投げ出されていた。右の手首から手の甲までが、元の形がわからないほどに包帯でぐるぐる巻きになっている。手首から先が白いボールに変わってその先に指が生えている、そんなふうに見えた。
「ああ、これ?」
 そう言いながら彼はゆっくりと右手を持ち上げた。曖昧な、照れているような困ったような顔で、溜息混じりに笑った。
「なによ、それ。なにを……してたのよ!」
 縫う傷というのがどの程度のケガなのか、経験のないわたしにはわからない。それでも軽いものでは決してないだろう。痛いだろう。血もたくさん流れたのだろう。そう思うと苦しくなってくる。彼は右利きなのだから、右手をケガなどしたら、仕事にも日常生活にも支障がある筈だ。食事をするにもお風呂に入るにも、もしかしたら着替えるときにさえも不便かもしれない。
「いや、それが、俺もよくわかんなくて。ちょっとぼーっとしてて、気がついたらザックリ切れて、血が出てて」
 不思議な物を見るような目で包帯に包まれた自分の手のひらを眺める横顔は、いつもの彼の表情に限りなく近かった。あまりの安堵にひざの力が抜ける。体重を支えられなくなった脚がかくんと折れて、薄いベージュのカーペットが敷かれた床に崩れるように座り込んだ。
「美雪さんっ?」
「美雪っ!」
 力が入らなくて、顔さえ上げられない。
「ばか」
 全てを篭めた言葉を口の中で呟いた途端に、世界がゆらりと揺れた。まるで水中にいるときのように焦点の合わない視界は、限界まで膨れ上がったあと、まばたきと同時にジーンズの上に円球の黒い染みを作る。その周囲にぽつぽつと、大きく小さく丸の数が増えて行く。

  -つづく-
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