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2006年11月11日 (土)
「え? ええっ?」
早足気味に廊下の突き当りへと進んで行く彼女に強く腕を引かれて、まるで連行される犯人のようによろよろと歩く。
「ちょ、ちょっと……」
「あたし。入るわよ」
それだけを言うと、彼女はノックもなしにドアを開けた。そのまま遠慮のない足取りでずかずかと入って行く。
部屋には、サイズ違いのソファが三つとガラス製の灰皿が乗った小さ目のテーブル、そして小さな本棚と引き出しが壁際に並んで置かれていた。ドアの真正面に置かれた一人がけのソファには、見知らぬ男性が座っていた。
ウェスタン調の、胸の切り替えにフリンジのついた茶色のシャツと白いパンツ。少し開いた胸元からターコイズブルーのペンダントが覗いている。身体つきが大きくて顔もちょっといかつい感じだけれど、垂れ気味の目元のせいか、とても優しそうに見える。茶色の前髪を全部後ろに流して、スパイラル状の鈍く銀に光るカチューシャで留めているのがなぜか可愛い。
「お、どうした?」
有理と、そしてわたしに目を留めて、その人は少し野太い低い声でそう言った。この人がオーナーで、シズくんを助けてくれた人で、そして有理の友だちなのだろう。
「ダメだよー、聞こえない」
「聞こえなかったのか?」
「うん。肝心のところが全然ダメ」
彼の驚く顔に拗ねた口調で答えると、彼女はわたしの手を強く引っ張った。
「ほら、美雪も来なって」
有理の声に、三人がけのソファの端に浅く腰をかけて俯いていた男性が弾かれたように顔を上げた。きれいに光る黒髪と、普段よりしわの目立つ白いシャツ。いつも優しく笑っていた瞳は今は、驚きに強く見開かれていた。薄く開いた唇が震えている。
「みゆ、き……、さん?」
彼に会わなかったのはほんの数日のあいだだったというのに、随分と久し振りのような気がした。
「なんで? なんで、ここに……いんの?」
-つづく-
早足気味に廊下の突き当りへと進んで行く彼女に強く腕を引かれて、まるで連行される犯人のようによろよろと歩く。
「ちょ、ちょっと……」
「あたし。入るわよ」
それだけを言うと、彼女はノックもなしにドアを開けた。そのまま遠慮のない足取りでずかずかと入って行く。
部屋には、サイズ違いのソファが三つとガラス製の灰皿が乗った小さ目のテーブル、そして小さな本棚と引き出しが壁際に並んで置かれていた。ドアの真正面に置かれた一人がけのソファには、見知らぬ男性が座っていた。
ウェスタン調の、胸の切り替えにフリンジのついた茶色のシャツと白いパンツ。少し開いた胸元からターコイズブルーのペンダントが覗いている。身体つきが大きくて顔もちょっといかつい感じだけれど、垂れ気味の目元のせいか、とても優しそうに見える。茶色の前髪を全部後ろに流して、スパイラル状の鈍く銀に光るカチューシャで留めているのがなぜか可愛い。
「お、どうした?」
有理と、そしてわたしに目を留めて、その人は少し野太い低い声でそう言った。この人がオーナーで、シズくんを助けてくれた人で、そして有理の友だちなのだろう。
「ダメだよー、聞こえない」
「聞こえなかったのか?」
「うん。肝心のところが全然ダメ」
彼の驚く顔に拗ねた口調で答えると、彼女はわたしの手を強く引っ張った。
「ほら、美雪も来なって」
有理の声に、三人がけのソファの端に浅く腰をかけて俯いていた男性が弾かれたように顔を上げた。きれいに光る黒髪と、普段よりしわの目立つ白いシャツ。いつも優しく笑っていた瞳は今は、驚きに強く見開かれていた。薄く開いた唇が震えている。
「みゆ、き……、さん?」
彼に会わなかったのはほんの数日のあいだだったというのに、随分と久し振りのような気がした。
「なんで? なんで、ここに……いんの?」
-つづく-
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