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R18 らぶえっち小説Blog
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花を召しませ-64
2006年11月15日 (水)
「なんで、美雪さんが泣くの?」
 頭にふわりと優しく触れるのは、きっと彼の左手なのだろう。大きな手のひらのわずかな重みと、ゆっくり前後する度に少しずつ髪の中へ入ってくる指先の感触に、子どもになったような気がする。頭を撫でられることがこれほどまでに安らぐとは思わなかった。忘れていた。
「なんでって……そんなの知らないわよ。勝手に出てくるんだもん」
 耳を伝ってゆっくりと降りてきた手が頬を撫ぜて、そしてあご先にかかった。わずかな指先の力だけで上を向かされる。されるがままに視線を上げる。
 優しく細まった目と短い黒髪。広い額に浮いた汗の理由はなんだろう。
「ね。俺のことで泣いてくれてるの? 俺のために泣いてくれてるの?」
 普段よりも白い頬は、ケガのせいだろうか。それとも照明が違うからだろうか。
「はいはいはいはい、そこまで」
 パンパンと手を叩く音に振り返ると、難しい顔の有理が仁王立ちしていた。思わずと言った様子でシズくんが身体ごと手を引く。
「その辺はあとでゆっくり、二人で話しなさい」
 強い口調で、でも優しい顔でそう言いながら、彼女はどこからともなくポケットティッシュを取り出した。長い両足を折り曲げるようにわたしの顔の前に屈み込むと、抜き出した一枚でそっと目元を押さえてくれた。ぽんぽんと軽く叩くように涙を拭き取ると彼女は少し困ったような笑顔で頷いた。わたしを右手を取って引っ張りながら一緒に立ち上がってくれる。
「シズ、あんたわかってんの? あたしの親友に勝手に手ぇ出して、挙句泣かせて……ホント許さないわよ?」
 有理の言葉に、彼は申し訳なさそうに目を伏せた。ワックスでキラキラ光る綺麗な黒髪を下げて、叱られている子犬のようにうつむく。
「で、何がどうだっての。ちゃんと説明しなさい、あたしにも美雪にも。隠し立てなんてしたら、この場で絞め殺してやるから」
 言いながら彼女はシズくんの向かいの、二人がけのソファにどかりと腰を降ろした。
「ホラ、さっさと吐いちまいな」
 ミニのプリーツスカートから伸びる脚を高々と組むと、彼女は取り出したタバコに火を点けた。視界の端でオーナーが苦笑しているのが見える。確かに、その姿はとても品がいいとは言えないけれど、女性らしいとは言えないけれど、でも。

  -つづく-
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