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2006年03月11日 (土)
逃げなきゃ。あたし、どうにかしてここから逃げなきゃ。
玄関ドアまでの距離は二歩。さっき鍵をかける音がしたから、ちょっと手間取るかもしれないけど、でもやってやれないことはないはず。一歩さりげなく下がって、それでドアノブつかんで開錠して、一気に飛び出せばいい。でもそう思った瞬間、なぜかあたしは悲鳴を上げていた。
「動くな」
脅すように短く告げられた意味さえわからないほどの、右肩の痛み。
いつのまにかあたしの背後に立っていた黒いスーツを着た男の人に、肩甲骨に手首がつくくらいに腕をひねられて、肩が外れそうに痛くて、でもそれ以上にあたしの腕を容赦なくつかんでる強い手が怖い。
「痛いよっ、放してよっ!」
「おとなしくしてろ」
あたしの言葉なんか聞いてないような、何を言っても聞いてくれないような、冷たい言葉が背後から返ってくる。
この人、あたしが痛がってることなんて気にしていないんだ。暴れたらこのまま腕を折る気なんだ。そういうことしても平気なんだ。もしそれでも逃げようとしたら、多分、もっとひどいことして……。そう考えて思わず固まる。あたしが動かなくなったのを確認したように、腕をつかむ力が弱まる。バリバリと変な音がして、後ろ手につかまれた手首に服の上から何かが巻きつけられた。食い込む感じがしないから紐じゃない。これは……粘着テープか何か?
「そうそう、いいコだからそのままおとなしくしてて」
ユーキさんによく似た人は楽しそうに言いながら、あたしにタバコの煙を吐きかけた。きついにおいに咳き込みそうになって思いっきり顔をそむけると、手を伸ばしてあごをつかまれた。むりやり上を向かせられる。あたしと目が合うと、彼はにっこりと笑った。
その表情は、呼吸するのを忘れそうになるくらいに涙が出そうになるくらいに、ユーキさんに似てる。似てるのに、なんで?
「ようこそ、お嬢さん。歓迎するよ」
低く笑う声に、全身に鳥肌が立った。
-つづく-
玄関ドアまでの距離は二歩。さっき鍵をかける音がしたから、ちょっと手間取るかもしれないけど、でもやってやれないことはないはず。一歩さりげなく下がって、それでドアノブつかんで開錠して、一気に飛び出せばいい。でもそう思った瞬間、なぜかあたしは悲鳴を上げていた。
「動くな」
脅すように短く告げられた意味さえわからないほどの、右肩の痛み。
いつのまにかあたしの背後に立っていた黒いスーツを着た男の人に、肩甲骨に手首がつくくらいに腕をひねられて、肩が外れそうに痛くて、でもそれ以上にあたしの腕を容赦なくつかんでる強い手が怖い。
「痛いよっ、放してよっ!」
「おとなしくしてろ」
あたしの言葉なんか聞いてないような、何を言っても聞いてくれないような、冷たい言葉が背後から返ってくる。
この人、あたしが痛がってることなんて気にしていないんだ。暴れたらこのまま腕を折る気なんだ。そういうことしても平気なんだ。もしそれでも逃げようとしたら、多分、もっとひどいことして……。そう考えて思わず固まる。あたしが動かなくなったのを確認したように、腕をつかむ力が弱まる。バリバリと変な音がして、後ろ手につかまれた手首に服の上から何かが巻きつけられた。食い込む感じがしないから紐じゃない。これは……粘着テープか何か?
「そうそう、いいコだからそのままおとなしくしてて」
ユーキさんによく似た人は楽しそうに言いながら、あたしにタバコの煙を吐きかけた。きついにおいに咳き込みそうになって思いっきり顔をそむけると、手を伸ばしてあごをつかまれた。むりやり上を向かせられる。あたしと目が合うと、彼はにっこりと笑った。
その表情は、呼吸するのを忘れそうになるくらいに涙が出そうになるくらいに、ユーキさんに似てる。似てるのに、なんで?
「ようこそ、お嬢さん。歓迎するよ」
低く笑う声に、全身に鳥肌が立った。
-つづく-
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