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2006年03月10日 (金)
「ユーキさんっ!」
玄関先で黒いスーツを着た男の人に腕をつかまれたまま、髪を振り乱す勢いであたしはそっちを見た。突き当たりのリビングのドアが開いて、中から人が出てくる。
ゆっくりとこっちに歩いてくるその人影は、逆光で顔がよく見えないけど、でも。
「制服? 女子高生?」
優しい声が近付いてくるごとに少しずつ見えてくる。
濃いブラウンのスーツ。シャツの一番上のボタンが外れてネクタイが少しだけ緩められていて、ちょっとごつめのあごのラインが見える。その上の見慣れた顔。優しい顔。でもメガネをかけてるせいか、なんかこう……冷たいカンジで。そういうのって、ちょっとユーキさんっぽくない。ヘンなの。
「あいつの趣味もよくわからないな」
ユーキさんは唇の隙間から白い煙を吐きだすとあたしを見て、頬を歪めるように低く笑った。顔の動きにあわせたように、さらりと前髪が流れる。
――違う。
顔も声も背格好も似てるけど、すごく似てるけど、でも違う。だってユーキさんはメガネかけてないし、髪はもっと固い感じでいつも短くしてるし、それにタバコなんて吸ってないはず。タバコ吸ってるところ見たことないし、においがしたこともないし。だから、この人はユーキさんじゃない。そっくりだけど、ユーキさんじゃない!
あれ? だったらこの人は? これだけ似てて赤の他人だっていうのは考えにくくて。じゃあ兄弟とか親戚とか? そう思った瞬間に思い出した。
――あの記事には、なんて書いてあった?
ユーキさんの揉めてる相手は、確か、お兄さんで。お母さんが違っても、兄弟だったら顔が似ててもおかしくない、かも。じゃあ、もしかして。目の前のこの人は、ユーキさんと後継者争いをしてるっていう、ユーキさんのお兄さん?
すうっと、背中が冷たくなった。
-つづく-
玄関先で黒いスーツを着た男の人に腕をつかまれたまま、髪を振り乱す勢いであたしはそっちを見た。突き当たりのリビングのドアが開いて、中から人が出てくる。
ゆっくりとこっちに歩いてくるその人影は、逆光で顔がよく見えないけど、でも。
「制服? 女子高生?」
優しい声が近付いてくるごとに少しずつ見えてくる。
濃いブラウンのスーツ。シャツの一番上のボタンが外れてネクタイが少しだけ緩められていて、ちょっとごつめのあごのラインが見える。その上の見慣れた顔。優しい顔。でもメガネをかけてるせいか、なんかこう……冷たいカンジで。そういうのって、ちょっとユーキさんっぽくない。ヘンなの。
「あいつの趣味もよくわからないな」
ユーキさんは唇の隙間から白い煙を吐きだすとあたしを見て、頬を歪めるように低く笑った。顔の動きにあわせたように、さらりと前髪が流れる。
――違う。
顔も声も背格好も似てるけど、すごく似てるけど、でも違う。だってユーキさんはメガネかけてないし、髪はもっと固い感じでいつも短くしてるし、それにタバコなんて吸ってないはず。タバコ吸ってるところ見たことないし、においがしたこともないし。だから、この人はユーキさんじゃない。そっくりだけど、ユーキさんじゃない!
あれ? だったらこの人は? これだけ似てて赤の他人だっていうのは考えにくくて。じゃあ兄弟とか親戚とか? そう思った瞬間に思い出した。
――あの記事には、なんて書いてあった?
ユーキさんの揉めてる相手は、確か、お兄さんで。お母さんが違っても、兄弟だったら顔が似ててもおかしくない、かも。じゃあ、もしかして。目の前のこの人は、ユーキさんと後継者争いをしてるっていう、ユーキさんのお兄さん?
すうっと、背中が冷たくなった。
-つづく-
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