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2006年03月08日 (水)
どうしよう。困ったなあ……。
マンションの入り口の門の前であたしは立ち尽くしていた。
電話番号を消したくらいだから、鍵なんて持ち歩いているわけがない。部屋に帰ればあるんだけど。ママに見つからないように、机の鍵の掛かる引出しの奥に、ティッシュにくるんでこっそり置いてるんだけど。でも、もうマンションに来ちゃったし。このままじゃ、部屋に行けない。
管理人さんにわけを話せばもしかしたら入れてくれるかな。でもあたしの顔なんて覚えてるわけもないし、あたしとユーキさんは今は何の関係もないし。前に付き合ってたって言っても、それを証明するようなものなんてある筈もないし。そんなことを散々考えてから、あたしは部屋へ直接コールすることにした。
部屋にユーキさんが居るとは限らないし、居ても出てくれるとも限らないし。でも、もしかしたら、居てくれるかもしれない。あたしが相手でも出てくれるかもしれない。少しでも話ができるかも……しれない。
お願い、神さま。
震える手で部屋番号の「1202」を押した。
「はい」
三つ目の呼び出し音が途中で途切れて、意外なほどあっさり声が返ってきた。
「――どちらさん?」
「ユーキさんっ!」
何ヶ月ぶりかのその声に、あたしは思わず叫んだ。
驚いたように一拍置いてから、スピーカの向こうから弾けるような明るい笑い声が聞こえてくる。それはあの日以来聞いたことのない、優しい懐かしい声で、だから。
「なんだ、大きな声だな。どうしたの?」
「あたし、雑誌見て。それで心配になって……」
それ以上は言えなかった。嬉しくて涙が出そうで、言葉にならない。
-つづく-
マンションの入り口の門の前であたしは立ち尽くしていた。
電話番号を消したくらいだから、鍵なんて持ち歩いているわけがない。部屋に帰ればあるんだけど。ママに見つからないように、机の鍵の掛かる引出しの奥に、ティッシュにくるんでこっそり置いてるんだけど。でも、もうマンションに来ちゃったし。このままじゃ、部屋に行けない。
管理人さんにわけを話せばもしかしたら入れてくれるかな。でもあたしの顔なんて覚えてるわけもないし、あたしとユーキさんは今は何の関係もないし。前に付き合ってたって言っても、それを証明するようなものなんてある筈もないし。そんなことを散々考えてから、あたしは部屋へ直接コールすることにした。
部屋にユーキさんが居るとは限らないし、居ても出てくれるとも限らないし。でも、もしかしたら、居てくれるかもしれない。あたしが相手でも出てくれるかもしれない。少しでも話ができるかも……しれない。
お願い、神さま。
震える手で部屋番号の「1202」を押した。
「はい」
三つ目の呼び出し音が途中で途切れて、意外なほどあっさり声が返ってきた。
「――どちらさん?」
「ユーキさんっ!」
何ヶ月ぶりかのその声に、あたしは思わず叫んだ。
驚いたように一拍置いてから、スピーカの向こうから弾けるような明るい笑い声が聞こえてくる。それはあの日以来聞いたことのない、優しい懐かしい声で、だから。
「なんだ、大きな声だな。どうしたの?」
「あたし、雑誌見て。それで心配になって……」
それ以上は言えなかった。嬉しくて涙が出そうで、言葉にならない。
-つづく-
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