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2011年12月17日 (土)
「ま、これでもやっとくかー」
主任が帰ってくるまでの時間つぶしにと、お世辞にもきれいとは言えない走り書きの束をファイルから抜き取った。暇なときによろしくと渡されていたものだ。これをワードで清書し、会議録としてファイリングしておくのがわたしの仕事だった。
誰もいないのを幸い、一文節ずつ声に出して確認しながらキーボードを叩いていると、遠くから響いていた足音がカツリと止まり、そしてドアが開いた。
「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れさまです」
テンプレートのような返事をしながら顔を上げると、うつむき加減に入ってきた主任が部屋を横切って自分の机に向かうのが見えた。きれいに片付いた机の上に大きなビジネスバッグをどかっと置く。いかにも重そうな音を聞きながら、わたしは椅子から腰を上げた。立ったままバッグの中からパソコンと書類ケースを引っ張り出すと、主任が書類ケースだけを差し出してくる。受け取るとずしりとした重量が腕に響いた。
「これ、よろしく」
「はい」
わたしが頷いたのを確認するように頷き返すと、主任はデスクの端に置かれた電源タップに持って返ってきたばかりのノートパソコンのプラグを差し込んだ。上着を脱いで椅子の背に掛け、どかりと音を立てて椅子に座る。自分の世界に入り込んだようなその仕草に、どうやら主任には優先事項があるらしいと気付いてしまう。これの入力は一人でやることになっているらしい。仕方ないなと小さく息をついて席に戻ろうとくるりときびすを返しかけたところで、背後から白井さんと声をかけられた。
「はい?」
残っている事務がわたし一人だとわかっているのか、申し訳なさそうに軽く目を落としながら主任が言う。
「あの、悪いけど、それは今日中でお願いしたいんだ」
「はい、聞いています」
ご心配なくと笑顔を見せると、主任はなぜか一瞬言葉に詰まったように止まった。
「……主任?」
問いかけの視線を向けたわたしになんでもないと小さく首を振って、主任は画面に目を戻した。汗で額に張り付いた髪を指先で梳きながら画面を見つめる横顔は、いかにも仕事ができる男と言った雰囲気で、ちょっとときめいてしまう。
-つづく-
主任が帰ってくるまでの時間つぶしにと、お世辞にもきれいとは言えない走り書きの束をファイルから抜き取った。暇なときによろしくと渡されていたものだ。これをワードで清書し、会議録としてファイリングしておくのがわたしの仕事だった。
誰もいないのを幸い、一文節ずつ声に出して確認しながらキーボードを叩いていると、遠くから響いていた足音がカツリと止まり、そしてドアが開いた。
「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れさまです」
テンプレートのような返事をしながら顔を上げると、うつむき加減に入ってきた主任が部屋を横切って自分の机に向かうのが見えた。きれいに片付いた机の上に大きなビジネスバッグをどかっと置く。いかにも重そうな音を聞きながら、わたしは椅子から腰を上げた。立ったままバッグの中からパソコンと書類ケースを引っ張り出すと、主任が書類ケースだけを差し出してくる。受け取るとずしりとした重量が腕に響いた。
「これ、よろしく」
「はい」
わたしが頷いたのを確認するように頷き返すと、主任はデスクの端に置かれた電源タップに持って返ってきたばかりのノートパソコンのプラグを差し込んだ。上着を脱いで椅子の背に掛け、どかりと音を立てて椅子に座る。自分の世界に入り込んだようなその仕草に、どうやら主任には優先事項があるらしいと気付いてしまう。これの入力は一人でやることになっているらしい。仕方ないなと小さく息をついて席に戻ろうとくるりときびすを返しかけたところで、背後から白井さんと声をかけられた。
「はい?」
残っている事務がわたし一人だとわかっているのか、申し訳なさそうに軽く目を落としながら主任が言う。
「あの、悪いけど、それは今日中でお願いしたいんだ」
「はい、聞いています」
ご心配なくと笑顔を見せると、主任はなぜか一瞬言葉に詰まったように止まった。
「……主任?」
問いかけの視線を向けたわたしになんでもないと小さく首を振って、主任は画面に目を戻した。汗で額に張り付いた髪を指先で梳きながら画面を見つめる横顔は、いかにも仕事ができる男と言った雰囲気で、ちょっとときめいてしまう。
-つづく-
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