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R18 らぶえっち小説Blog
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メメント・アモル-7
2011年01月20日 (木)
「えっと、それはその……」
 あたしの知ってるヒロ兄ちゃんは大学生だったから、ここまでネクタイは似合わなかった。髪は短かったし、メガネもかけてなかった。あたしが今年二十四歳って話だったから、ヒロ兄ちゃんは三十歳になっているはず。もともと落ち着いてる人だったからものすごく印象が変わったってわけでもないけど、でもよく見ると違う。当たり前だけど、やっぱり違う。ここにいるヒロ兄ちゃんは、あたしが知ってるヒロ兄ちゃんとまったく同じじゃない。
 ――でも、じゃあ、あたしは……?
 ヒロ兄ちゃんが好きだったあたしは、きっと高校生のままの今のあたしとは違う。残念ながら見た目はほとんど変わってないけど、それでもちゃんと大学に行ってイタリア語の勉強していた。結婚して辞めちゃったけど、小さな司法書士事務所の事務員の仕事に就いてたって教えてもらった。これって、結構ちゃんとした社会人だよね。高校生のあたしは自分で言うのもなんだけど、ちょっと怠け者だった。でもそれ以後のあたしはどうやらそこそこ頑張ってたみたい。だから多分ヒロにいちゃんは……。
 そこまで考えた瞬間、どくんとイヤなカンジに心臓が鳴った。
 ――もしかしたら、今のあたしは、ヒロ兄ちゃんの好きな『あたし』じゃない?
「お兄ちゃんは、なんであたしと結婚したの?」
 ヒロ兄ちゃんはどんな『あたし』が好きなの? 『あたし』のどこが気に入ったの? あたしはどうやったらヒロ兄ちゃんの好きな『あたし』になれるの? そんなことが訊きたくて口をついた言葉は、我ながら選択を間違えていた。
「なんだ。唐突だな」
 おかしそうにくすっと笑ったその表情は、まず間違いなく、あたしがホントに訊きたいことが伝わってるとは思えない明るいものだった。
「まゆは忘れてるから違和感があるかもしれないけど、まぁいろいろとあって。でも俺だって、まゆのことはかわいいってずーっと思ってたんだよ」
「そんなのうそっ」
 だって、ヒロ兄ちゃんは中学生の頃から彼女がいた。それをあたしに見せ付けたりもした。今でも忘れてない。ヒロ兄ちゃんと手をつないで歩くお揃いのブレザーを着た髪の長い女の人が、あたしの声に振り向ったときの余裕の笑顔を。
「ウソじゃないって」
 そんな大昔の話よく覚えてんなって溜息混じりにこぼしながら、ヒロ兄ちゃんはカリカリと頭を掻いた。
「それは高校生のときの話だろ。もう十二年も経ってんだから時効だって。俺は三年前からまゆひとすじなんだぞ」
 ――三年前……?

 -つづく-
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