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2011年01月07日 (金)
「まゆーっ! 何してんの、さっさとおいでっ」
元気な分だけ気の短いお母さんが叫ぶ。お腹が減ってイライラしてるんだろう。早く行かないとホントに怒り出しちゃう。それはそれでやっぱり困るし。
「はぁいっ! 今行くーっ」
思いっきり叫び返してドアに向かって一歩を踏み出した途端、ぐらりと足元が揺れた。うわっ地震だぁって思いかけて、でも部屋の中のものは何一つ動いていないことに気づいた。
――あれ、れぇ……?
ぐるんと天地がひっくりかえって、お腹の底から一気にこみ上げてきた吐き気にしゃがもうとしたけれど、足元はどこにもない。いつのまにか閉じていたまぶたの裏がぐるんぐるん回って、手足が先のほうから消えて行くような、どこかに吸い込まれてしまうような、そして……。
「――……ゆっ、まゆっ!」
びっくりするくらいすぐそばでヒロ兄ちゃんの声がした。いつも落ち着いてるヒロ兄ちゃんっぽくない、とっても慌てた声。声の方向に顔を向けようとがんばってはみるけれど、なんだか身体がだるくて重くて、手も足も全然動かない。
「まゆ、大丈夫か? まゆっ」
あたしの手を大きな手がぐうっと握っているのがわかる。ヒロ兄ちゃんの声しか聞こえないし、これってお兄ちゃんが手を握ってるのかな。なんでだろう、ヘンなの。だってヒロ兄ちゃんはいつだってあたしのことなんか子ども扱いで全然そういうんじゃなくて、がんばってバレンタインのチョコを手作りしても、笑顔でありがとうって言ってくれるけど、でもそれだけだったのに。
「まゆっ!」
糊でしっかりと貼り付けた紙同士を剥がすように、ゆっくり開けたまぶたの隙間から、痛いくらいにまぶしい光が差し込んでくる。そこに誰かがいることだけはわかるけど、強すぎる光のせいで真っ白の影になって、顔なんか全然見えない。
「まゆ! よかった、よかったなぁっ!」
「あ、う……?」
ぐうっと抱きしめられても状況がわからない。目を細めて眉を寄せて、やっとそこにいるのがヒロ兄ちゃんだと確認できて、でも。
「ヒロ、兄ちゃ……」
「よかった! もう大丈夫だぞ、まゆ。待ってろ、すぐにお医者さん呼んでくるから」
叫ぶようにそれだけを言って、ヒロ兄ちゃんはバタバタと駆け出してしまった。光に目が慣れてきて、ぼんやりとだけど少しずつ周囲が見えてくる。白い天井と白い壁、白いカーテン。そして、どうやらベッドに寝転んでいるらしい、あたし。
――なにがどうなってんの……?
-つづく-
元気な分だけ気の短いお母さんが叫ぶ。お腹が減ってイライラしてるんだろう。早く行かないとホントに怒り出しちゃう。それはそれでやっぱり困るし。
「はぁいっ! 今行くーっ」
思いっきり叫び返してドアに向かって一歩を踏み出した途端、ぐらりと足元が揺れた。うわっ地震だぁって思いかけて、でも部屋の中のものは何一つ動いていないことに気づいた。
――あれ、れぇ……?
ぐるんと天地がひっくりかえって、お腹の底から一気にこみ上げてきた吐き気にしゃがもうとしたけれど、足元はどこにもない。いつのまにか閉じていたまぶたの裏がぐるんぐるん回って、手足が先のほうから消えて行くような、どこかに吸い込まれてしまうような、そして……。
「――……ゆっ、まゆっ!」
びっくりするくらいすぐそばでヒロ兄ちゃんの声がした。いつも落ち着いてるヒロ兄ちゃんっぽくない、とっても慌てた声。声の方向に顔を向けようとがんばってはみるけれど、なんだか身体がだるくて重くて、手も足も全然動かない。
「まゆ、大丈夫か? まゆっ」
あたしの手を大きな手がぐうっと握っているのがわかる。ヒロ兄ちゃんの声しか聞こえないし、これってお兄ちゃんが手を握ってるのかな。なんでだろう、ヘンなの。だってヒロ兄ちゃんはいつだってあたしのことなんか子ども扱いで全然そういうんじゃなくて、がんばってバレンタインのチョコを手作りしても、笑顔でありがとうって言ってくれるけど、でもそれだけだったのに。
「まゆっ!」
糊でしっかりと貼り付けた紙同士を剥がすように、ゆっくり開けたまぶたの隙間から、痛いくらいにまぶしい光が差し込んでくる。そこに誰かがいることだけはわかるけど、強すぎる光のせいで真っ白の影になって、顔なんか全然見えない。
「まゆ! よかった、よかったなぁっ!」
「あ、う……?」
ぐうっと抱きしめられても状況がわからない。目を細めて眉を寄せて、やっとそこにいるのがヒロ兄ちゃんだと確認できて、でも。
「ヒロ、兄ちゃ……」
「よかった! もう大丈夫だぞ、まゆ。待ってろ、すぐにお医者さん呼んでくるから」
叫ぶようにそれだけを言って、ヒロ兄ちゃんはバタバタと駆け出してしまった。光に目が慣れてきて、ぼんやりとだけど少しずつ周囲が見えてくる。白い天井と白い壁、白いカーテン。そして、どうやらベッドに寝転んでいるらしい、あたし。
――なにがどうなってんの……?
-つづく-
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