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2010年11月27日 (土)
「あっ、せんせーっ」
地下鉄と私鉄の乗り入れ駅の、一番細い南出口の階段を上がってすぐ。予算が余ったんでちょっと作ってみたんですが……あまり活用されてません? みたいな雰囲気の、小さな滑り台と二つ並んだブランコだけが置かれた小さな三角公園にその人はあたしを待ってくれていた。公園と歩道を分ける柵兼用の低い鉄棒にもたれて足を組んでいた先生が、読みかけの本から顔を上げてあたしを見た。
「どしたの、せんせ。そんなカッコして」
駆け寄ったあたしを見上げる姿は、ゴツめの身体に不思議なくらいぴったり沿った濃いグレイのスーツと黒い革靴で、誰もいない午後一時のほのぼのとした公園に違和感ありまくり。普段はTシャツとかポロシャツとか、カジュアルすぎるくらいカジュアルなのに、どうして今日はスーツ?
「なんかあったの?」
「ん、ああ」
頷く先生のあごは、たいていポツポツ残ってるひげが今日はキレイになくなってた。いつもは洗って乾かしただけが丸わかりで、うっかりしてると寝癖が残っちゃってたりもする髪には、ワックスで流れが作られてる。
「今日は入学式だったんでな、ちょっとな」
「えーっ、そのカッコでぇ?」
「ああ」
なんかおかしいかって先生は顔は太い首をひねって見せる。
確かに、おかしいとかおかしくないとかの問題じゃないけど、二重襟ボタンタウンのシャツと太い縦ストライプのネクタイと襟に差した王冠のラペルピンって組み合わせはおしゃれすぎて、さすがにちょっと教師には見えない。いかにも派手に遊んでますってカンジで、この人が担任って紹介されたら、新入生もその親とかも不安になっちゃうんじゃないかなぁ。
「そっかぁ? こんくらい、フツーじゃねぇの?」
「ん、んーっ。ふつー……なのかなぁ……」
頭の上にものすごい数のクエスチョンマークが出てきそうだけど、まぁでも校長や教頭からなにも言われてないんなら特に問題もないのかも。あたしたちの卒業式のときってどうだったっけって思い出そうとしても、あのときは他のことにいろいろと気を取られてたから藤元先生のカッコまで見てなかったし。
「まぁ確かに……ヘンじゃないけど、さ」
冷静に見れば『教師』ってカテゴリ的にちょっとって思うだけで、普段のカジュアル服よりオトナっぽくて断然カッコいい。少なくとも、あたしはかなり好き。
「――ま、これはさっき付けたんだけどな」
にやって笑いながら先生はラベルピンを指で弾いた。先生の指先で太陽の光を反射するスワロフスキーがまぶしいくらいにキラキラする。
-つづく-
地下鉄と私鉄の乗り入れ駅の、一番細い南出口の階段を上がってすぐ。予算が余ったんでちょっと作ってみたんですが……あまり活用されてません? みたいな雰囲気の、小さな滑り台と二つ並んだブランコだけが置かれた小さな三角公園にその人はあたしを待ってくれていた。公園と歩道を分ける柵兼用の低い鉄棒にもたれて足を組んでいた先生が、読みかけの本から顔を上げてあたしを見た。
「どしたの、せんせ。そんなカッコして」
駆け寄ったあたしを見上げる姿は、ゴツめの身体に不思議なくらいぴったり沿った濃いグレイのスーツと黒い革靴で、誰もいない午後一時のほのぼのとした公園に違和感ありまくり。普段はTシャツとかポロシャツとか、カジュアルすぎるくらいカジュアルなのに、どうして今日はスーツ?
「なんかあったの?」
「ん、ああ」
頷く先生のあごは、たいていポツポツ残ってるひげが今日はキレイになくなってた。いつもは洗って乾かしただけが丸わかりで、うっかりしてると寝癖が残っちゃってたりもする髪には、ワックスで流れが作られてる。
「今日は入学式だったんでな、ちょっとな」
「えーっ、そのカッコでぇ?」
「ああ」
なんかおかしいかって先生は顔は太い首をひねって見せる。
確かに、おかしいとかおかしくないとかの問題じゃないけど、二重襟ボタンタウンのシャツと太い縦ストライプのネクタイと襟に差した王冠のラペルピンって組み合わせはおしゃれすぎて、さすがにちょっと教師には見えない。いかにも派手に遊んでますってカンジで、この人が担任って紹介されたら、新入生もその親とかも不安になっちゃうんじゃないかなぁ。
「そっかぁ? こんくらい、フツーじゃねぇの?」
「ん、んーっ。ふつー……なのかなぁ……」
頭の上にものすごい数のクエスチョンマークが出てきそうだけど、まぁでも校長や教頭からなにも言われてないんなら特に問題もないのかも。あたしたちの卒業式のときってどうだったっけって思い出そうとしても、あのときは他のことにいろいろと気を取られてたから藤元先生のカッコまで見てなかったし。
「まぁ確かに……ヘンじゃないけど、さ」
冷静に見れば『教師』ってカテゴリ的にちょっとって思うだけで、普段のカジュアル服よりオトナっぽくて断然カッコいい。少なくとも、あたしはかなり好き。
「――ま、これはさっき付けたんだけどな」
にやって笑いながら先生はラベルピンを指で弾いた。先生の指先で太陽の光を反射するスワロフスキーがまぶしいくらいにキラキラする。
-つづく-
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