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2006年02月16日 (木)
「どうぞ」
お客さま用のカップも紅茶も、ユーキさんから見たら普段遣いのものなんだろうなあ。そんなことを考えながらあたしは二人の前に並べた。ユーキさんがあたしを見て軽く頭を下げる。目が合うとちょっと笑ってしまいそうになったけど、でもママがあたしたちの様子を観察してるだろうから、頬の筋肉を引き締めて黙って頭を下げ返す。
――なんか、変な感じ。
いつもはあたしとママが向かい合わせに座ってご飯を食べている台所のテーブルに、今はよそ行き顔のママとユーキさんが座って話している。ユーキさんがいつものあたしの席に座ってる。
「結城さんはおいくつ?」
「二十二です。休学していたので、もうしばらく大学生なんですが」
「休学? どこかお悪いの?」
「あ、いいえ。ちょっと……家の仕事を手伝っていたもので」
へえ、それは知らなかった。
普段は炊飯器を置くのに使っている折り畳みのパイプ椅子。それを少し離れたところに置いてそこに座って、あたしは二人の話を聞いていた。
「おうちのお仕事?」
「はい。家が会社を経営していまして、勉強も兼ねて二年間手伝っていました」
「あら、社長さん? 素敵ですねえ」
「そんないいものじゃないんですが」
なぜかユーキさんは苦笑いした。なんでだろう。
でも、知らなかった。ユーキさんのお父さんは社長なんだ。だからあんなにお金持ちなんだ。なんか、納得。どんな会社なんだろ?
「あの、えーと……。間違ってたら、ごめんなさい」
ママは難しい顔をすると額に手を当てて、そして唇を尖らせた。
「結城ってもしかして、まさか結城財閥……ええと、結城コンツェルン……?」
「――えっ?」
その瞬間、ユーキさんのよそ行きの笑顔がぴしっと凍りついた。
-つづく-
お客さま用のカップも紅茶も、ユーキさんから見たら普段遣いのものなんだろうなあ。そんなことを考えながらあたしは二人の前に並べた。ユーキさんがあたしを見て軽く頭を下げる。目が合うとちょっと笑ってしまいそうになったけど、でもママがあたしたちの様子を観察してるだろうから、頬の筋肉を引き締めて黙って頭を下げ返す。
――なんか、変な感じ。
いつもはあたしとママが向かい合わせに座ってご飯を食べている台所のテーブルに、今はよそ行き顔のママとユーキさんが座って話している。ユーキさんがいつものあたしの席に座ってる。
「結城さんはおいくつ?」
「二十二です。休学していたので、もうしばらく大学生なんですが」
「休学? どこかお悪いの?」
「あ、いいえ。ちょっと……家の仕事を手伝っていたもので」
へえ、それは知らなかった。
普段は炊飯器を置くのに使っている折り畳みのパイプ椅子。それを少し離れたところに置いてそこに座って、あたしは二人の話を聞いていた。
「おうちのお仕事?」
「はい。家が会社を経営していまして、勉強も兼ねて二年間手伝っていました」
「あら、社長さん? 素敵ですねえ」
「そんないいものじゃないんですが」
なぜかユーキさんは苦笑いした。なんでだろう。
でも、知らなかった。ユーキさんのお父さんは社長なんだ。だからあんなにお金持ちなんだ。なんか、納得。どんな会社なんだろ?
「あの、えーと……。間違ってたら、ごめんなさい」
ママは難しい顔をすると額に手を当てて、そして唇を尖らせた。
「結城ってもしかして、まさか結城財閥……ええと、結城コンツェルン……?」
「――えっ?」
その瞬間、ユーキさんのよそ行きの笑顔がぴしっと凍りついた。
-つづく-
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