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2010年01月07日 (木)
「その辺、テキトーに座って。コップ使う?」
ブゥンと低く唸り始めた電子レンジの中でお弁当がゆっくり回るのを見ながら、カウンターの向こうの先生に声を掛けたけど、返事がない。上半身を反らしてカウンターの端から覗くと、困り顔の先生がさっきと全然変わらない姿勢のままで立っていた。ガタイのいい白いTシャツとライトブラウンのハーフカーゴパンツ姿がなぜか、拗ねてるみたいに見えておかしい。
「せんせ、こっちで食べる? ソファのほうがいい?」
タイミングよくピピピと鳴ったレンジからお弁当を取り出しながら訊くと、先生は低くうーっと唸ってテーブルに歩み寄ってきた。いつも空席で滅多に使われることのないいすの背を引いて、そおっとゆっくり座る。大また開きで寝そべるようにどてっとエラソーに座る、理科準備室での普段の様子と大違いで、すごくおかしい。
「あー、お腹空いたー。いっただきまーす」
あっためたお弁当を先生の目の前に、その横にタンブラーグラスを二つ並べて置いてから、先生の斜め向かいのあたしのいつもの席に座った。緊張して固まってるのか、変に動作の遅い先生をほっといてサンドウィッチに手を伸ばす。パリパリのレタスとマヨネーズで和えたツナとトマト、そしてふんわりしたパン。
「これ、おいしい」
一口食べてから顔を上げると先生と目が合った。先生は「そっか」って言ってぎこちなく笑って、それからやっと自分のお弁当に手を伸ばした。あったまってくっついたラップを力任せに引きちぎってお弁当の蓋をムリヤリ開けて、容器の横に引っ付いていた割り箸を取った。パッケージをぱりっと破ってお箸を出して、手のひらにはさむ。
「いただきます」
いつものとおり、丁寧に両手を合わせて小さく頭を下げてから、先生はおっきな空揚げに箸を伸ばした。あたしだったら絶対にムリってサイズを、かぷかぷっと二回に分けてかぶりついて、いとも簡単に口の中に収めた。
「わーっ」
思わず出た言葉に軽く目を見開いて先生が訊いてくる。なんでもないよって笑い返しながらレモンソーダのペットボトルに手を伸ばした。蓋をねじると、硬い円柱の中で怒ってるみたいにじゅわじゅわ音を立てる。泡でいっぱいになるのを吹きこぼれないように加減してグラスに注ぎながら、膨らんだ頬っぺたがもきゅもきゅと動くのを見た。
-つづく-
ブゥンと低く唸り始めた電子レンジの中でお弁当がゆっくり回るのを見ながら、カウンターの向こうの先生に声を掛けたけど、返事がない。上半身を反らしてカウンターの端から覗くと、困り顔の先生がさっきと全然変わらない姿勢のままで立っていた。ガタイのいい白いTシャツとライトブラウンのハーフカーゴパンツ姿がなぜか、拗ねてるみたいに見えておかしい。
「せんせ、こっちで食べる? ソファのほうがいい?」
タイミングよくピピピと鳴ったレンジからお弁当を取り出しながら訊くと、先生は低くうーっと唸ってテーブルに歩み寄ってきた。いつも空席で滅多に使われることのないいすの背を引いて、そおっとゆっくり座る。大また開きで寝そべるようにどてっとエラソーに座る、理科準備室での普段の様子と大違いで、すごくおかしい。
「あー、お腹空いたー。いっただきまーす」
あっためたお弁当を先生の目の前に、その横にタンブラーグラスを二つ並べて置いてから、先生の斜め向かいのあたしのいつもの席に座った。緊張して固まってるのか、変に動作の遅い先生をほっといてサンドウィッチに手を伸ばす。パリパリのレタスとマヨネーズで和えたツナとトマト、そしてふんわりしたパン。
「これ、おいしい」
一口食べてから顔を上げると先生と目が合った。先生は「そっか」って言ってぎこちなく笑って、それからやっと自分のお弁当に手を伸ばした。あったまってくっついたラップを力任せに引きちぎってお弁当の蓋をムリヤリ開けて、容器の横に引っ付いていた割り箸を取った。パッケージをぱりっと破ってお箸を出して、手のひらにはさむ。
「いただきます」
いつものとおり、丁寧に両手を合わせて小さく頭を下げてから、先生はおっきな空揚げに箸を伸ばした。あたしだったら絶対にムリってサイズを、かぷかぷっと二回に分けてかぶりついて、いとも簡単に口の中に収めた。
「わーっ」
思わず出た言葉に軽く目を見開いて先生が訊いてくる。なんでもないよって笑い返しながらレモンソーダのペットボトルに手を伸ばした。蓋をねじると、硬い円柱の中で怒ってるみたいにじゅわじゅわ音を立てる。泡でいっぱいになるのを吹きこぼれないように加減してグラスに注ぎながら、膨らんだ頬っぺたがもきゅもきゅと動くのを見た。
-つづく-
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