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2009年07月04日 (土)
でも、ああいう噂って、どこまでホントかわからないしねー。
大きなカネロニを口に運ぶ、豪快ながらも上品さを失わない食事姿を上目遣いでちらちらと見ながら、理香は丸くパスタを巻いたフォークをぱくっとくわえた。
確かに、ちょっとその……イイカンジだけど。
仕事中も穏やかで人当たりのいい高瀬だが、オフの表情はさらにやわらかく、けれど適度なバランスで男らしさが効いている。じっと見つめる理香に気付いたように高瀬は顔を上げた。ハーフサイズのボトルに手を伸ばし、空になっていた理香のグラスの上で傾けた。
「あ、いえ、あたしはもう……」
元上司との同席だから乾杯の一口だけは義務だと思って軽く唇をつけたつもりだったのだが、高瀬の選んだ甘い香りのするリンゴのスパークリングは、予想以上に理香の好みだった。あっという間にグラスを空けてしまっていた。アルコールに弱いことを自覚している理香が慌てて手のひらを向けるが、くすりと笑みを見せるだけで高瀬は行動を継続した。一瞬で泡で満たされるグラスの内側は、けれどコマ送りを見ているかのように大きな泡が次々と弾けて消え、やや黄みを帯びた発泡性の液体は半分以下に減る。
「大丈夫、これは三パーセントしかないから」
パステル調の色彩でリンゴを持った天使が描かれたラベルを目の前に掲げ、低アルコール飲料だと言いながら高瀬は理香の顔を覗き込むようにした。
「勿論、これから運転をするとか、誰かと予定はあるって言うのなら、ムリに勧めないけど?」
「あ、いえ。別にそういうことじゃ……」
理香は運転免許を持っていない。亮治に追い出されその勢いで会社を出ただけで、これからの予定もない。ただ帰って眠るだけだ。笑みを含んだ視線にうながされ、理香は頷いた。
「美味しかったし、じゃあ、もう少しだけ」
自分でグラスを持ち、ついと差し出す。友だち同士で集まったときに理香が好んで飲むジュースのようなカクテルよりもさらにアルコール度数が低いようにさえ感じた。
「美味しかった? それはよかった。これを選んだ甲斐があったよ」
八分目にまで注ぎ足した高瀬が嬉しそうに笑う。その目じりに小さくしわが入るのを見ながら理香はグラスに口を付けた。
-つづく-
大きなカネロニを口に運ぶ、豪快ながらも上品さを失わない食事姿を上目遣いでちらちらと見ながら、理香は丸くパスタを巻いたフォークをぱくっとくわえた。
確かに、ちょっとその……イイカンジだけど。
仕事中も穏やかで人当たりのいい高瀬だが、オフの表情はさらにやわらかく、けれど適度なバランスで男らしさが効いている。じっと見つめる理香に気付いたように高瀬は顔を上げた。ハーフサイズのボトルに手を伸ばし、空になっていた理香のグラスの上で傾けた。
「あ、いえ、あたしはもう……」
元上司との同席だから乾杯の一口だけは義務だと思って軽く唇をつけたつもりだったのだが、高瀬の選んだ甘い香りのするリンゴのスパークリングは、予想以上に理香の好みだった。あっという間にグラスを空けてしまっていた。アルコールに弱いことを自覚している理香が慌てて手のひらを向けるが、くすりと笑みを見せるだけで高瀬は行動を継続した。一瞬で泡で満たされるグラスの内側は、けれどコマ送りを見ているかのように大きな泡が次々と弾けて消え、やや黄みを帯びた発泡性の液体は半分以下に減る。
「大丈夫、これは三パーセントしかないから」
パステル調の色彩でリンゴを持った天使が描かれたラベルを目の前に掲げ、低アルコール飲料だと言いながら高瀬は理香の顔を覗き込むようにした。
「勿論、これから運転をするとか、誰かと予定はあるって言うのなら、ムリに勧めないけど?」
「あ、いえ。別にそういうことじゃ……」
理香は運転免許を持っていない。亮治に追い出されその勢いで会社を出ただけで、これからの予定もない。ただ帰って眠るだけだ。笑みを含んだ視線にうながされ、理香は頷いた。
「美味しかったし、じゃあ、もう少しだけ」
自分でグラスを持ち、ついと差し出す。友だち同士で集まったときに理香が好んで飲むジュースのようなカクテルよりもさらにアルコール度数が低いようにさえ感じた。
「美味しかった? それはよかった。これを選んだ甲斐があったよ」
八分目にまで注ぎ足した高瀬が嬉しそうに笑う。その目じりに小さくしわが入るのを見ながら理香はグラスに口を付けた。
-つづく-
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