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2008年10月12日 (日)
「だから! 美雪さんが、男と手を繋いで歩いてたって!」
男と?
「スクランブル交差点を、知らない男と手を繋いで寄り添って歩いてたって……!」
手を繋いで?
「そうだよ! 誰だよ、その男っ!」
男と、手を繋いで……?
「だから、そうだって言ってるじゃん! ちょっと、俺の話聞いてんのっ?」
「聞いてるけど」
聞いてはいるけれど、話そのものよりも普段とはあまりに違う彼に驚いてしまう。いつもどこか落ち着いた年齢相当以上の雰囲気をかもし出していたはずの今の彼は、まるで母親がいなくて寂しかったと訴え甘える子どもだ。かんしゃくを起こしたような言葉遣いに、歳が離れていたせいか、なかなか夕食の団欒の話題に入れず困っていた子どもの頃の弟を思い浮かべてしまう。ぼくの話も聞いてよ。そう叫んでいた弟は、あのときは五つか六つだった。
――なーんて思い出してる場合じゃなかった。
そっと目を上げると、薄闇を透かすようにギラギラと光るまなざしがわたしに注がれていた。初めて見るその表情は、怖くてかっこよくて、そして不思議に愛しい。
「あのね、シズくん。それ誤解だから」
「誤解?」
「そう」
オウム返しのその言葉に一つ頷いて見せる。
「確かに浅谷には行ったし、その、男の人と手を繋いでたってのもホントだけど」
「ホントなの? 誰だよ、その男っ?」
語尾をひったくると、噛み付かんばかりの勢いで身を乗り出してくる。いつも落ち着き払っている彼がと思うとおかしさがこみ上げてくるけれど、今ここで笑ってしまったら収拾がつかなくなりそうだ。
「名前は知らないの。スクランブル交差点の真ん中で困っていたみたいだったから、わたしから声をかけたの。だってその人、白い杖を持ってたから」
「え……?」
わたしの言葉を理解した彼の表情に酸欠を起こすほど大笑いしてしまったけれど、それまでされたことを思えば、多分そんなにひどくはないと思う。
-つづく-
男と?
「スクランブル交差点を、知らない男と手を繋いで寄り添って歩いてたって……!」
手を繋いで?
「そうだよ! 誰だよ、その男っ!」
男と、手を繋いで……?
「だから、そうだって言ってるじゃん! ちょっと、俺の話聞いてんのっ?」
「聞いてるけど」
聞いてはいるけれど、話そのものよりも普段とはあまりに違う彼に驚いてしまう。いつもどこか落ち着いた年齢相当以上の雰囲気をかもし出していたはずの今の彼は、まるで母親がいなくて寂しかったと訴え甘える子どもだ。かんしゃくを起こしたような言葉遣いに、歳が離れていたせいか、なかなか夕食の団欒の話題に入れず困っていた子どもの頃の弟を思い浮かべてしまう。ぼくの話も聞いてよ。そう叫んでいた弟は、あのときは五つか六つだった。
――なーんて思い出してる場合じゃなかった。
そっと目を上げると、薄闇を透かすようにギラギラと光るまなざしがわたしに注がれていた。初めて見るその表情は、怖くてかっこよくて、そして不思議に愛しい。
「あのね、シズくん。それ誤解だから」
「誤解?」
「そう」
オウム返しのその言葉に一つ頷いて見せる。
「確かに浅谷には行ったし、その、男の人と手を繋いでたってのもホントだけど」
「ホントなの? 誰だよ、その男っ?」
語尾をひったくると、噛み付かんばかりの勢いで身を乗り出してくる。いつも落ち着き払っている彼がと思うとおかしさがこみ上げてくるけれど、今ここで笑ってしまったら収拾がつかなくなりそうだ。
「名前は知らないの。スクランブル交差点の真ん中で困っていたみたいだったから、わたしから声をかけたの。だってその人、白い杖を持ってたから」
「え……?」
わたしの言葉を理解した彼の表情に酸欠を起こすほど大笑いしてしまったけれど、それまでされたことを思えば、多分そんなにひどくはないと思う。
-つづく-
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