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2007年11月17日 (土)
これはもしかして、あたしが許すって言うまで動かないつもりなのかも。そんな場合じゃないのはわかってるのに『ポチ』なんて名前がふと頭を横切ってしまう。目の前の、体育会系な短い黒髪の頭をなでなでしたくなって……。
なでなで。
「あ」
無意識で、さわってしまった。
思わず出てしまった右手に藤元先生が小さく、けれど全身を震わせるみたいに震える。いきなりさわられてびっくりしただろうに、それでも顔は上げないままだというのはすごいかも、なんて思いながら、あたしは真っ黒い丸い頭をすりすりと撫でた。
前髪は少し長めだけど、後頭部からはどんどん短くなって行って、えりあしなんかほとんど刈り上げみたいなことになってるから、指先にちょっとチクチクする。たわしみたいな毛並みをざらりと撫で上げると、先生はまたびくっと大きな肩を揺らした。
なんて言うか……可愛いっ。
「あのね、センセ。あたし別に怒ってないよ?」
短い髪をムリヤリ指先でつまんで軽く引っ張ってみる。やっぱり痛いのか、太い首にスジがきゅっと浮いた。肩が凝っちゃいそうに力が入っているのがわかる。
緊張してるのかな。あたしが何を言うのかって、思ってるのかな。そう考えるとちょっとおかしい。担任の先生なのにこんなに身体のおっきな男の人なのに、あたしみたいな子ども相手にびくびくしちゃってるなんて。
「ただ、なんて言うか。うーん……」
佐上先生の冷たい態度も物憂げなまなざしも素敵だと思う。間近で見るとドキドキするくらいキレイだし、あんなカッコイイ人に抱かれたって誰にも言えないけど将来があるとも思えないけど、でも。
「ちょっと寂しい……の、かな」
多分、あたしはたまたまあの場にいたからそうなっただけで、本当はあたしじゃなくてもいいんだと思う。だから先生はあたしに優しくしないんだと思う。
それがわかっていても、あたしはまた先生に抱かれる機会があることを望んでいた。この関係が誰にも知られないことを、表向きだけでも平和に続くことを望んでいた。
「あたし、それでも好きなんだ」
両頬を手のひらで挟むようにしてゆっくりと持ち上げた。先生があたしにされるがままに顔を上げる。強くひそめた眉のあいだの、ひどく複雑なまなざしがあたしを見る。
――もしも、罪滅ぼしをしたいのなら。
乾いた唇にふれるだけの軽いキスをして、ほっぺたをすり寄せるようにして抱き付いた。剃り残しのヒゲがちょっとチクチクする。三秒ほどの間隔のあと、硬直していた腕が曖昧な動きで背に回ってくるのを確認してから、耳元に息を吹きかけるように囁いた。
「だから、協力してね。センセ」
この人はきっと、断らない。
-つづく-
なでなで。
「あ」
無意識で、さわってしまった。
思わず出てしまった右手に藤元先生が小さく、けれど全身を震わせるみたいに震える。いきなりさわられてびっくりしただろうに、それでも顔は上げないままだというのはすごいかも、なんて思いながら、あたしは真っ黒い丸い頭をすりすりと撫でた。
前髪は少し長めだけど、後頭部からはどんどん短くなって行って、えりあしなんかほとんど刈り上げみたいなことになってるから、指先にちょっとチクチクする。たわしみたいな毛並みをざらりと撫で上げると、先生はまたびくっと大きな肩を揺らした。
なんて言うか……可愛いっ。
「あのね、センセ。あたし別に怒ってないよ?」
短い髪をムリヤリ指先でつまんで軽く引っ張ってみる。やっぱり痛いのか、太い首にスジがきゅっと浮いた。肩が凝っちゃいそうに力が入っているのがわかる。
緊張してるのかな。あたしが何を言うのかって、思ってるのかな。そう考えるとちょっとおかしい。担任の先生なのにこんなに身体のおっきな男の人なのに、あたしみたいな子ども相手にびくびくしちゃってるなんて。
「ただ、なんて言うか。うーん……」
佐上先生の冷たい態度も物憂げなまなざしも素敵だと思う。間近で見るとドキドキするくらいキレイだし、あんなカッコイイ人に抱かれたって誰にも言えないけど将来があるとも思えないけど、でも。
「ちょっと寂しい……の、かな」
多分、あたしはたまたまあの場にいたからそうなっただけで、本当はあたしじゃなくてもいいんだと思う。だから先生はあたしに優しくしないんだと思う。
それがわかっていても、あたしはまた先生に抱かれる機会があることを望んでいた。この関係が誰にも知られないことを、表向きだけでも平和に続くことを望んでいた。
「あたし、それでも好きなんだ」
両頬を手のひらで挟むようにしてゆっくりと持ち上げた。先生があたしにされるがままに顔を上げる。強くひそめた眉のあいだの、ひどく複雑なまなざしがあたしを見る。
――もしも、罪滅ぼしをしたいのなら。
乾いた唇にふれるだけの軽いキスをして、ほっぺたをすり寄せるようにして抱き付いた。剃り残しのヒゲがちょっとチクチクする。三秒ほどの間隔のあと、硬直していた腕が曖昧な動きで背に回ってくるのを確認してから、耳元に息を吹きかけるように囁いた。
「だから、協力してね。センセ」
この人はきっと、断らない。
-つづく-
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