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R18 らぶえっち小説Blog
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マスカレイド-9
2007年08月21日 (火)
「藤元、先生……」
 そうだ、忘れかけていた。さっきからいたんだ、藤元先生。ずっと見られてたんだ。あたしが佐上先生にいろいろされてるところ、ずっと見てたんだ。
 ぼやけかけていた頭からさぁっと血の気が引く。
 だってこれってこの状況って、スキャンダル以外のなにものでもないでしょ。もし藤元先生が誰かにこのことを言ったら誰かを呼んできたら、あたしはよくて停学、ヘタしたら退学もの。でもそれは先生だって同じなのに、その声は楽しそうにしか聞こえない。
「入ってくるならくるでいいから、早く閉めろよ。誰かに見られたらマズいだろう、俺もおまえも」
 藤元先生も? どういうこと?
 わけがわからずにいるあたしに佐上先生がふっと笑いかけた。
「武志なら別にいいよな、芝口?」
 いいって、なにが。
 けどそれを訊く暇もなく、ガラガラとドアが閉まった。次いで聞こえてきたのは、カシャンと内側からカギが落とされる音。慌てて振り向くと、ゴミ箱を持って難しい顔をした藤元先生がそこに立っていた。
 ちょ、ちょっと待って。ちょっと、これってこれって……!
「これでおまえも共犯だ。まあ、止めなかったって時点で、潜在的共犯者ではあったわけだがな」
 けれどあたしの動揺なんか知ったこっちゃないって顔で、佐上先生はのどの奥を震わせて低く笑う。ゴミ箱を定位置に片付けてから藤元先生が振り返り、じろりと佐上先生を睨みつけた。
「ああ、世間はそう見るだろうさ。どうせ最初から俺を巻き込むつもりだったんだろう、おまえは」
「人聞きの悪いことを言うな。拗ねてるのか?」
「じゃなくて、怒ってんだよっ」
 機嫌悪そうに吐き捨てると、藤元先生はまったくあたしの方を見ないまま、戸棚の一番下の引出しを開けた。
「俺、こいつの担任なんだぞ。明日からどうしてくれんだよ」
 日焼けしたゴツい手が、奥の方から三泊旅行用の荷物くらいは入りそうな、黒いボストンバッグを取り出した。
「しかも、よりによって学校で。何を考えてんだ、何を」
「おまえにそんなことを言われるとは思わなかった。教え子に手を出したのはおまえの方が先だろう。忘れたとは言わせないぞ。体育祭の――」
「あれは! あっちから迫ってきて……!」
 佐上先生の語尾を引ったくるように叫びかけて、けれど藤元先生は言葉に詰まったように黙った。そして、普段の態度が嘘のような目であたしを見た。そのままぷいと目をそらすと、あたしに背を向けて大きなバッグの前にしゃがみこんだ。

 -つづく-
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