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2007年08月08日 (水)
目を伏せるようにしてあたしの指先を咥える先生の唇の感触をじかに感じながらも、あたしはまだ信じられなかった。
だって、佐上先生だよ? トイレに行く姿を見たってだけで大騒ぎになる人だよ?
プライベートなことは一切答えないって噂で、どこに住んでいるのかは勿論、好きな食べ物さえ言わないような人で。とてもキレイでカッコよくてみんなの人気者だけど、誰も近づけないような人で。でもそんな冷たい雰囲気さえ……素敵、で。
「赤くなってるな。傷じゃなくてヤケドだな、これは」
先生の唾液に濡れたままのあたしの人差し指を目を細めるようにして見ながら、先生はそう言った。
「痛いか?」
この人の奥さんって、どんな人だろう……?
「芝口?」
「あ、は、はいっ」
あたしのことを気にしてくれてるんだろうか。それは今まで見たこともないほどの、すごく……優しい目で。
「痛いか?」
「だ、だいじょうぶですっ」
再びすごい勢いで動き始めた心臓に語尾がひっくり返ってしまう。先生がそんなあたしの反応に少しだけおかしそうにくすっと笑った。
「あ、あの、ええと……」
上擦った声のまま、あたしは意味のない言葉を繰り返した。
「ええと、その、先生。あの……」
「なに?」
優しく目を細めたままの先生は、まだ手を放してくれない。
放して下さいって言う? やめてくださいって言う? ううん、言いたくない。ずっとこのまま握ってて欲しい。ずっと先生と二人でいれたらいいのに。指が震えるのが恥ずかしい。うわ、汗かいてきちゃった。
混乱する頭の中でいろんな気持ちが嵐のように吹き荒れる。
「あ、あの、先生、あ……」
のどまでが心臓になってしまったみたいで、声が出ない。でも先生は黙って微笑ってるだけで何も言ってくれない。先生の手があたしの手からそっと離れて、そのまますうっと上に……首を辿ってあごに辿り着いた。くいと上を向かされる。
「せん、せ……」
どうしていいのかわからずに硬直する背中に先生の手がゆっくりと回った。びくんと震えるあたしに、笑みを残したままの先生の顔が近づいてくる。
あと十センチ、五センチ……。
少しずつ降りてくる、先生のきれいな目、整った唇。
――もう、くちびるが、当たっちゃう……。
「あー、外すげー暑っつ――」
視界いっぱいの先生に耐え切れず目を閉じた瞬間、忘れかけていたもう一人の叫び声と同時にドアがガラリと開いた。
-つづく-
だって、佐上先生だよ? トイレに行く姿を見たってだけで大騒ぎになる人だよ?
プライベートなことは一切答えないって噂で、どこに住んでいるのかは勿論、好きな食べ物さえ言わないような人で。とてもキレイでカッコよくてみんなの人気者だけど、誰も近づけないような人で。でもそんな冷たい雰囲気さえ……素敵、で。
「赤くなってるな。傷じゃなくてヤケドだな、これは」
先生の唾液に濡れたままのあたしの人差し指を目を細めるようにして見ながら、先生はそう言った。
「痛いか?」
この人の奥さんって、どんな人だろう……?
「芝口?」
「あ、は、はいっ」
あたしのことを気にしてくれてるんだろうか。それは今まで見たこともないほどの、すごく……優しい目で。
「痛いか?」
「だ、だいじょうぶですっ」
再びすごい勢いで動き始めた心臓に語尾がひっくり返ってしまう。先生がそんなあたしの反応に少しだけおかしそうにくすっと笑った。
「あ、あの、ええと……」
上擦った声のまま、あたしは意味のない言葉を繰り返した。
「ええと、その、先生。あの……」
「なに?」
優しく目を細めたままの先生は、まだ手を放してくれない。
放して下さいって言う? やめてくださいって言う? ううん、言いたくない。ずっとこのまま握ってて欲しい。ずっと先生と二人でいれたらいいのに。指が震えるのが恥ずかしい。うわ、汗かいてきちゃった。
混乱する頭の中でいろんな気持ちが嵐のように吹き荒れる。
「あ、あの、先生、あ……」
のどまでが心臓になってしまったみたいで、声が出ない。でも先生は黙って微笑ってるだけで何も言ってくれない。先生の手があたしの手からそっと離れて、そのまますうっと上に……首を辿ってあごに辿り着いた。くいと上を向かされる。
「せん、せ……」
どうしていいのかわからずに硬直する背中に先生の手がゆっくりと回った。びくんと震えるあたしに、笑みを残したままの先生の顔が近づいてくる。
あと十センチ、五センチ……。
少しずつ降りてくる、先生のきれいな目、整った唇。
――もう、くちびるが、当たっちゃう……。
「あー、外すげー暑っつ――」
視界いっぱいの先生に耐え切れず目を閉じた瞬間、忘れかけていたもう一人の叫び声と同時にドアがガラリと開いた。
-つづく-
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