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2007年07月20日 (金)
運転席の亮治は、シートベルトを締めドアをロックしエンジンをかけると、車の切れ目にさりげなく入り込んだ。そのまま流れに乗って進む。その手馴れた工程を横目に見ながら、理香はシートベルトを締めた。
出合った頃からそうだった。理香が一つのことで苦戦しているあいだに、涼しげな表情を保ったまま三つ四つの事柄を済ませる。そんな亮治をカッコいいと思わなくもなかったが、それ以上に周囲からのさりげなくそして時にはあからさまな言葉に、思春期の理香が傷ついたことも事実だった。
『どうして、あんたなのかしらね』
そんなのあたしだって知らないわよっ。この人の性格の悪さも知らないくせに、勝手に憧れてんじゃないわよ!
そう叫べるならばと何度思ったことだろう。どうせ誰に言ったところで信じない。相手は、家柄正しく品行方正な生徒会長。比べて自分は、何か飛び抜けて優れたところがあるわけでもなく、いい意味でも悪い意味でも平凡な一生徒だった。周囲がそのような目を向けてくるのも仕方がないと諦めていた。何か危害が加えられるならばまだしも、厭味の言葉は聞き流せばそれでいいだけだと大人しく俯いて黙っていたが、その度ごとに胃の中がぐるぐると掻き回されるような思いをしてきた。
あー、思い出しただけで腹が立つ……。
ぎりりと力いっぱいこぶしを握りしめながら理香は奥歯をも噛みしめた。
――何もかも、この男が。
睨み付けた横顔のその瞳が、ふいに理香へと向けられた。
「理香」
「何よッ!」
反射的に出たケンカ腰の理香の返答に驚いた亮治の身体が一瞬止まった。やや不自然な動きで首を傾けるように横目を流し、けれど口元には落ち着いた笑みを浮かべる。
「どうした、理香」
「え、あ、い、いや、別に……」
あからさまに動揺した理香が亮治の視線から逃げるように顔をそむけ、こほりと咳ばらいをする。過去はどうあれ、今の亮治は直属の上司だ。現状を喜んでいるわけでは決してなく、できるならば亮治から解放されて庶務課へ戻りたいと思っているが、それとこれとは別の問題だ。
-つづく-
出合った頃からそうだった。理香が一つのことで苦戦しているあいだに、涼しげな表情を保ったまま三つ四つの事柄を済ませる。そんな亮治をカッコいいと思わなくもなかったが、それ以上に周囲からのさりげなくそして時にはあからさまな言葉に、思春期の理香が傷ついたことも事実だった。
『どうして、あんたなのかしらね』
そんなのあたしだって知らないわよっ。この人の性格の悪さも知らないくせに、勝手に憧れてんじゃないわよ!
そう叫べるならばと何度思ったことだろう。どうせ誰に言ったところで信じない。相手は、家柄正しく品行方正な生徒会長。比べて自分は、何か飛び抜けて優れたところがあるわけでもなく、いい意味でも悪い意味でも平凡な一生徒だった。周囲がそのような目を向けてくるのも仕方がないと諦めていた。何か危害が加えられるならばまだしも、厭味の言葉は聞き流せばそれでいいだけだと大人しく俯いて黙っていたが、その度ごとに胃の中がぐるぐると掻き回されるような思いをしてきた。
あー、思い出しただけで腹が立つ……。
ぎりりと力いっぱいこぶしを握りしめながら理香は奥歯をも噛みしめた。
――何もかも、この男が。
睨み付けた横顔のその瞳が、ふいに理香へと向けられた。
「理香」
「何よッ!」
反射的に出たケンカ腰の理香の返答に驚いた亮治の身体が一瞬止まった。やや不自然な動きで首を傾けるように横目を流し、けれど口元には落ち着いた笑みを浮かべる。
「どうした、理香」
「え、あ、い、いや、別に……」
あからさまに動揺した理香が亮治の視線から逃げるように顔をそむけ、こほりと咳ばらいをする。過去はどうあれ、今の亮治は直属の上司だ。現状を喜んでいるわけでは決してなく、できるならば亮治から解放されて庶務課へ戻りたいと思っているが、それとこれとは別の問題だ。
-つづく-
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