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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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この指を伸ばす先-59
2007年07月18日 (水)
 裕福な家庭で育ったとは言いがたい理香にとって、オーダーメイドスーツなど夢のまた夢だった。仕事場に着て行けるようなきちんとしたスーツは、三年前に量販店のリクルートセールで買ったジャケットとパンツとタイトスカートの三点セット、それに喪服を兼ねたワンピースとボレロのアンサンブルの二つだけだ。入社式も新人研修もこれらの組み合わせで通した。
 どちらかと言えばカジュアルな服装が好きな理香は、夏場はサンダル、秋冬はブーツがメインで、パンプスもバッグもきちんとしたものは片手で数えられるほどしか持っていない。女子社員の制服があった昨日まではどんな服装で出勤しても着替えれば済んだため、ジーンズにTシャツ足元はスニーカーというラフな格好で通勤しても何の問題もなかったが、なぜか制服が支給されない秘書職に就いてしまった今、毎朝のように着て行く服に悩まなければならないだろう。昨日なしくずし的に手に入れた黒のパンツスーツを頭数に入れても、一週間も経たないうちに困窮するのはわかりきっている。そんな自分に比べてこの男の優雅なことを思うと意味もなく苛立ってくる。
「どこへ行くんですか。あたし、仕事が……」
「だから、俺がおまえの上司だと昨日言っただろう。俺と一緒に来ればいい。それがおまえの仕事だ」
 言いながら亮治は理香の腰を軽く叩き、自分が先に立って歩き出した。
 自分と一緒にいるのが仕事だと言う亮治の理論は呆れるほど乱暴なものだが、理香は秘書の実態を知らない。そのようなものなのかと首を捻りながら、理香は亮治のあとを追った。
「急げよ。予定時間に遅れる」
「はいっ」
 わざわざアパートまで迎えに来るとは何事かと思ったが、仕事と言うのは嘘ではないようだった。本当に急な仕事が入ったのかもしれない。自分が知らないだけで、大切な会談があるのかもしれない。
 亮治の仕事内容さえも知らないが、役員が一人で出歩くのは威厳に欠けるのだろうと理香は考えた。さして役に立たない秘書であっても鞄持ち程度には使える。能力的に考えても、自分にできることはその程度だ。もっと重要な仕事は達也に振り分けるのだろうと、努めて前向きに思考を巡らせる。昨日の今日で亮治を信用するのは難しいが、上司命令とあっては従わないわけにもいかない。そう考えるほどには理香も会社に馴染んでいた。
「で、どこへ行くんですか?」
 慣れないパンプスとタイトスカートで懸命に歩いてくる理香をちらりと振り返り、亮治は立ち止まった。アパート前の、狭い道の端に停められていたメタリックシルバーの国産高級車をあごで指し、ポケットから取り出したカギを右手で示しながら軽く頷く。
「これだ。乗れ」
 どこへ行くのかって訊いたんだけど。
 内心で不服げに唇を尖らせ、けれど理香はおとなしく助手席のドアを開けてその隙間に滑り込んだ。

 -つづく-
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