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2007年04月27日 (金)
初めて見た瞬間、目が離せなくなった。
この人だと思った。この人が欲しいと思った。誰かを好きになったことは何度もあったけれど、あれほど強く一人の女性に固執したことはない。本人の意思を無視してもとさえ思ったし、実際にそれを行った。
ここまで入れ込んだ理由は、本当はわかっていた。けれど、気付きたくなかった。言いたくなかった。思い出したくなかった。
――絶対に。
「はい、お疲れー」
朝の四時、お客さんが全員帰ったクラブは、異様なまでの静けさを取り戻す。全ての音と派手なカクテルライトが消えたのを確認し、片耳にだけ入れていた耳栓を抜く。
「お疲れさんー」
いつのまにか流しの中でちょっとした小山になっていた洗い物を一つ一つ片付けながらふと顔を上げると、ナチュラルハイ丸出しの声で挨拶をしながら幾人かのスタッフがカウンターに近寄ってきていた。どうやら掃除が終わったらしい。仕事明けのその表情は、見る者の頬を緩めるほどに間抜けだった。
「シズー。こっち、ミネラルウォータとジンジャエール二つずつ」
「ウーロン茶ちょうだい」
「俺、ビールね」
カウンタに張り付くように並んで口々に叫ぶ様子は、親鳥にエサをねだる雛に似ているような気がする。思わず漏れそうになった笑いを笑顔にすり変えて頷き、それぞれの手に望みの物を渡して行く。
「はいどうぞ。お疲れさまでした」
「さんきゅー」
「んじゃ俺は、ビールと……、あ、なんかすっげー腹減ったんだけど、なんかない?」
基本的にスタッフの飲食代は全品半額だが、ラストまで残った場合はオーナーが自腹分の半額を持ってくれることになっている。食べ放題飲み放題と言うわけだが、さすがにそこまで厚かましいことを言い出す者はそうそういない。大抵はのどを潤す程度、小腹を宥める程度だ。
-つづく-
この人だと思った。この人が欲しいと思った。誰かを好きになったことは何度もあったけれど、あれほど強く一人の女性に固執したことはない。本人の意思を無視してもとさえ思ったし、実際にそれを行った。
ここまで入れ込んだ理由は、本当はわかっていた。けれど、気付きたくなかった。言いたくなかった。思い出したくなかった。
――絶対に。
「はい、お疲れー」
朝の四時、お客さんが全員帰ったクラブは、異様なまでの静けさを取り戻す。全ての音と派手なカクテルライトが消えたのを確認し、片耳にだけ入れていた耳栓を抜く。
「お疲れさんー」
いつのまにか流しの中でちょっとした小山になっていた洗い物を一つ一つ片付けながらふと顔を上げると、ナチュラルハイ丸出しの声で挨拶をしながら幾人かのスタッフがカウンターに近寄ってきていた。どうやら掃除が終わったらしい。仕事明けのその表情は、見る者の頬を緩めるほどに間抜けだった。
「シズー。こっち、ミネラルウォータとジンジャエール二つずつ」
「ウーロン茶ちょうだい」
「俺、ビールね」
カウンタに張り付くように並んで口々に叫ぶ様子は、親鳥にエサをねだる雛に似ているような気がする。思わず漏れそうになった笑いを笑顔にすり変えて頷き、それぞれの手に望みの物を渡して行く。
「はいどうぞ。お疲れさまでした」
「さんきゅー」
「んじゃ俺は、ビールと……、あ、なんかすっげー腹減ったんだけど、なんかない?」
基本的にスタッフの飲食代は全品半額だが、ラストまで残った場合はオーナーが自腹分の半額を持ってくれることになっている。食べ放題飲み放題と言うわけだが、さすがにそこまで厚かましいことを言い出す者はそうそういない。大抵はのどを潤す程度、小腹を宥める程度だ。
-つづく-
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