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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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この指を伸ばす先-31
2007年04月06日 (金)
 反射的に目の前のファイルを受け取ろうと右手を出して、指からまだ水が滴っていることに理香は慌てた。指先でつまむようにしてジャケットとパンツのポケットを順に探るが、最初から入っていないものが見つけられるはずはない。濡れた両手をプルプルと振りながら困り切ったハの字眉で見上げてくる理香に、亮治は堪えきれず吹き出しながら、上着のポケットから丁寧にたたんだ男物の薄いハンカチを取り出した。
「これくらいは持っておけ。社会人の常識だろう」
「悪かったですねー、常識なくって」
 ぷうっと頬を膨らませた理香の手の中にハンカチを押し付けながら、亮治はわざとらしく髪を掻き上げた。
「まったく、俺の秘書がこれとは情けない。もうちょっと利口になってくれ、理香」
「な……っ」
 小馬鹿にした言葉に理香は怒りに目を吊り上げる。確かに、社会人としてと言われても仕方ないことではあるが、それも元を辿れば亮治の暴挙によって着替えることを強要されたのが原因だ。それに、何より。
「あたし、望んで秘書になったんじゃありません!」
「そうだ。おまえじゃない」
 撥ね付けるように叫んだ細い肩を抱き寄せると、亮治はそのあごに素早く指をかけて上向かせた。覆い被さるように理香の顔を真正面から見つめる。
「俺が望んだ。俺がおまえを望んだ」
 低く抑えられた声が囁くように脅すように、理香の耳に忍び込んでくる。双眸の放つ強い光に怯えて黙り込んだ理香を亮治はゆっくりと抱きしめた。
「だから、おまえは俺のものだ」
 どくんと、跳ねるように理香の心臓が鳴った。
 理香は自分が亮治に捨てられた日のこともそのあとの苦しみも忘れてはいなかった。いや、忘れようと何度も努力はしてきたが、それが報われることはなかったと言うのが正しい。その後のできごとのすべてが亮治のせいではなく、ひとつの恋の終焉から立ち直るために自らが選んだことの結果であることはわかっていたけれど、それは理香にとっては二度と思い出したくない悪夢でもあったはず、だった。

 -つづく-
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