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2007年03月08日 (木)
「喜べ、理香。俺にここまで愛される女はそういないぞ。自慢していい」
言いながら、亮治は再び視線を手元に落とした。右脇に置かれた最新式のラップトップ型パソコンに手を伸ばし、ピアノ曲を奏でるようにキーボードを叩いて必要な資料を呼び出し、山になった書類を次々と処理して行く。
「そんなの、自慢になるもんですか! 先輩なに考えてんですかっ!」
「いろんなこと、だ」
おかしそうにくすっと笑うと亮治は自分の左のこめかみを指先で軽く叩いた。
「常に、いろんなことを考えている。勿論、おまえのことも」
痛む手のひらをぱたぱたと振りながら、理香は回り切らない頭で、それでも思いつくままの断り文句を並べた。
「あっあの、あたし、簿記も筆記も苦手で書類書くのも遅いし、電話掛けるのも苦手で、勿論英語もできないし、だから秘書なんて全然勤まらないと思います。それに、やっと総務の仕事にも慣れてきた頃で、ええと、その……」
総務の仕事にこだわりがあったわけでも総務課に愛着があったわけでもないが、いきなり異動だ秘書だと言われても喜ぶことはできない。その相手が亮治とあっては戸惑うばかりだった。亮治が何を企んでいるのか、そして自分がどんな状況に置かれているのかまで理解できていない理香には、自分の発言がややずれていること、それに対して達也と亮治がちらりと顔を見合わせて苦笑を浮かべた事情などは気付くはずもない。
「そうなのか? そりゃ困ったな」
「人員増やしますか? 状況はマズくなりますけど」
「いや、余計な人間はいないほうがいい」
「だから、あたし役立たずですし、その『余計な人間』だと思うんですけどっ!」
「まあ、仕事のほうはな、なんとかなるだろう」
「そうですね」
「聞いてよっ!!」
わめく理香には目もくれず、男二人は軽く頷きあった。
-つづく-
言いながら、亮治は再び視線を手元に落とした。右脇に置かれた最新式のラップトップ型パソコンに手を伸ばし、ピアノ曲を奏でるようにキーボードを叩いて必要な資料を呼び出し、山になった書類を次々と処理して行く。
「そんなの、自慢になるもんですか! 先輩なに考えてんですかっ!」
「いろんなこと、だ」
おかしそうにくすっと笑うと亮治は自分の左のこめかみを指先で軽く叩いた。
「常に、いろんなことを考えている。勿論、おまえのことも」
痛む手のひらをぱたぱたと振りながら、理香は回り切らない頭で、それでも思いつくままの断り文句を並べた。
「あっあの、あたし、簿記も筆記も苦手で書類書くのも遅いし、電話掛けるのも苦手で、勿論英語もできないし、だから秘書なんて全然勤まらないと思います。それに、やっと総務の仕事にも慣れてきた頃で、ええと、その……」
総務の仕事にこだわりがあったわけでも総務課に愛着があったわけでもないが、いきなり異動だ秘書だと言われても喜ぶことはできない。その相手が亮治とあっては戸惑うばかりだった。亮治が何を企んでいるのか、そして自分がどんな状況に置かれているのかまで理解できていない理香には、自分の発言がややずれていること、それに対して達也と亮治がちらりと顔を見合わせて苦笑を浮かべた事情などは気付くはずもない。
「そうなのか? そりゃ困ったな」
「人員増やしますか? 状況はマズくなりますけど」
「いや、余計な人間はいないほうがいい」
「だから、あたし役立たずですし、その『余計な人間』だと思うんですけどっ!」
「まあ、仕事のほうはな、なんとかなるだろう」
「そうですね」
「聞いてよっ!!」
わめく理香には目もくれず、男二人は軽く頷きあった。
-つづく-
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