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2007年03月03日 (土)
反射的に首をまわして理香は声の主を確かめた。そこにいたのは、ドア全体を覆い隠そうとするかのような、見事な体格の男性だった。地味な黒っぽいスーツの上からも筋肉の盛り上がりが見える。元は柔道部かラグビー部かあるいは相撲部だろうと奇妙に冷静に頷いてから、理香は自分の格好を思い出した。
「きゃ……っ!」
慌てて腰まわりに落ちていた毛布を引き上げて身体を隠し、お尻だけで器用に後ずさる。マットレスは壁際に設置されていたため、逃げると言うほどの移動ではない。そもそも、全裸に毛布一枚ではどこへも出られない。それでも手足をできるだけ引き寄せるように身を固くして理香は相手を見上げた。
「だ、だれ……あなた、だれ、ですかっ」
「申し遅れました。私は井出です、井出達也。今日からあなたの……そう、同僚になります。どうぞよろしく」
男は全く動揺を見せないままにっこり笑うと、首から下げたプラスティック製の名札を指先ではさみ、そこに書かれた自分の名前を示した。理香が視線を向けたのを確認してから軽く頭を下げる。
「え、井出、さん? 同僚って、えええ?」
話が見えず混乱する理香に淡い同情の混じったまなざしを向けながら、達也は左手に下げていた大きな鞄を軽く持ち上げた。
「着替えをお持ちしました。その格好ではさすがに落ち着かないでしょう」
語尾に軽い笑みをにじませながら言うと、達也はゆっくりと一歩を踏み出した。理香の表情が変わらないのを確認してから、もう一歩進ませる。理香が手を伸ばせばギリギリ届くマットレスの一番端に左手の鞄を置くと大きな歩幅で後ずさる。
「着替え終えたら出てきてください」
それだけを言うと達也は軽く一礼をし、そのままドアから出て行った。
-つづく-
「きゃ……っ!」
慌てて腰まわりに落ちていた毛布を引き上げて身体を隠し、お尻だけで器用に後ずさる。マットレスは壁際に設置されていたため、逃げると言うほどの移動ではない。そもそも、全裸に毛布一枚ではどこへも出られない。それでも手足をできるだけ引き寄せるように身を固くして理香は相手を見上げた。
「だ、だれ……あなた、だれ、ですかっ」
「申し遅れました。私は井出です、井出達也。今日からあなたの……そう、同僚になります。どうぞよろしく」
男は全く動揺を見せないままにっこり笑うと、首から下げたプラスティック製の名札を指先ではさみ、そこに書かれた自分の名前を示した。理香が視線を向けたのを確認してから軽く頭を下げる。
「え、井出、さん? 同僚って、えええ?」
話が見えず混乱する理香に淡い同情の混じったまなざしを向けながら、達也は左手に下げていた大きな鞄を軽く持ち上げた。
「着替えをお持ちしました。その格好ではさすがに落ち着かないでしょう」
語尾に軽い笑みをにじませながら言うと、達也はゆっくりと一歩を踏み出した。理香の表情が変わらないのを確認してから、もう一歩進ませる。理香が手を伸ばせばギリギリ届くマットレスの一番端に左手の鞄を置くと大きな歩幅で後ずさる。
「着替え終えたら出てきてください」
それだけを言うと達也は軽く一礼をし、そのままドアから出て行った。
-つづく-
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