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2007年01月08日 (月)
どこか遠くから聞こえてくる彼の声は、いつもの軽妙な調子とは随分違った。おそらくは誰かが近くにいて、その人に聞かれないように掛けてきたのだろう。それが誰なのかは考えるまでもないけれど。
「まだ起きてた? ごめんね、こんな時間に」
「え……あ、うん」
正負の入り混じった、ひどく複雑な感情がのどを塞いで言葉が出ない。相槌とも返事ともつかない単音を組み合わせただけの声で応えて、息を止めるようにして耳を澄ませて眼を閉じて、彼の息遣いを追った。
彼が今何をしているのか、どこにいるのか。知りたくない。見たくない。けれど、知りたい。
「もうすぐ、その……帰れそうなんだけど。今からそっち行ってもいい?」
かすれ気味に聞こえてきた言葉に、声を返すことができなかった。求めることも拒絶することもできないままに顔を上げる。闇に慣れた目を壁に張り付いた時計に向けた。黄色で縁取られた円の中で、やや斜めに伸びた短針とそれよりも少しずれた角度を保つ長針が表わす時間は、一時五分。
「もういいよ」
携帯電話を耳に押し当てたまま寝返りを打って、そして溜息をついた。
ベッドに入ったのが十時頃だから、三時間近くもこうして悶々としていたことになる。三時間。それを考えると急にバカバカしくなってきた。男のことでここまで悩んで眠れないなんて本当にバカだと思う。
わたし、何やってるんだろう。
「日付け変わっちゃったし、こなくていいよ。おやすみ」
一方的にそれだけを言って通話を切った。携帯電話を放り出すように枕元に置いて、身体を丸めて溜息をついて、強く眼を閉じる。
寝よう、本当に。もう寝ちゃおう。
-つづく-
「まだ起きてた? ごめんね、こんな時間に」
「え……あ、うん」
正負の入り混じった、ひどく複雑な感情がのどを塞いで言葉が出ない。相槌とも返事ともつかない単音を組み合わせただけの声で応えて、息を止めるようにして耳を澄ませて眼を閉じて、彼の息遣いを追った。
彼が今何をしているのか、どこにいるのか。知りたくない。見たくない。けれど、知りたい。
「もうすぐ、その……帰れそうなんだけど。今からそっち行ってもいい?」
かすれ気味に聞こえてきた言葉に、声を返すことができなかった。求めることも拒絶することもできないままに顔を上げる。闇に慣れた目を壁に張り付いた時計に向けた。黄色で縁取られた円の中で、やや斜めに伸びた短針とそれよりも少しずれた角度を保つ長針が表わす時間は、一時五分。
「もういいよ」
携帯電話を耳に押し当てたまま寝返りを打って、そして溜息をついた。
ベッドに入ったのが十時頃だから、三時間近くもこうして悶々としていたことになる。三時間。それを考えると急にバカバカしくなってきた。男のことでここまで悩んで眠れないなんて本当にバカだと思う。
わたし、何やってるんだろう。
「日付け変わっちゃったし、こなくていいよ。おやすみ」
一方的にそれだけを言って通話を切った。携帯電話を放り出すように枕元に置いて、身体を丸めて溜息をついて、強く眼を閉じる。
寝よう、本当に。もう寝ちゃおう。
-つづく-
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