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2006年12月04日 (月)
何度か平手打ちをした。着信拒否もした。部屋のドアを開けなかったこともある。嫌いだと言ったことは数え切れない。それでも彼はわたしを見捨てることはなかった。俺が悪いのだとそう言って、拗ねるわたしに何度でも謝った。
「わたし、でも……」
「と、言うわけで。これ」
わたしの言葉を遮るように強く言うと、彼は紙袋に手を入れた。引っ張り出されてきたのは小さな正方形の箱だった。
「え? なに?」
「俺の、気持ち」
歌うように言ってから、少し恥ずかしそうに彼は笑った。
「気持ち、って?」
目の前に置かれた箱を手に取る。
淡いピンクに濃い赤のリボンを掛けたようなデザインの包装紙だった。持ち上げてみると中身がないのではないかと思うほどに軽い。箱の裏を止めたリボンの形をしたシールをペリリと音を立てて剥がしてその包装を解くと、中からはやわらかそうなベルベットが貼り付けられた箱が出てきた。箱の一面に切れ込みが入っていて、おそらくはそこから中身を取り出すようになっているのだろう。
小さな箱。小さな中身。アクセサリーだろうか。そう考えた瞬間、鼓動が早まった。
折りしも季節はクリスマス間近だ。キリスト教の大切な祭を『恋人たちの聖夜』などという表現をするのは失礼ではないかとも思うこともあるけれど、それでもその華やかな響きに憧れるのは、それなりの年齢の男女ならば仕方のないことだろう。寂しいことに、今までのわたしには全く縁がなかったけれど。
「えっと……?」
そっと目だけを上げて彼を見る。穏やかなまなざしが小さく頷いた。開けてみてと、声にならない声に急かされて、箱の切れ込みに指を引っ掛けた。ぱくんと小さな手応えがした。
「う……わっ」
ハート型をした薄いピンクの宝石が、箱の中からわたしをじっと見上げていた。
-つづく-
「わたし、でも……」
「と、言うわけで。これ」
わたしの言葉を遮るように強く言うと、彼は紙袋に手を入れた。引っ張り出されてきたのは小さな正方形の箱だった。
「え? なに?」
「俺の、気持ち」
歌うように言ってから、少し恥ずかしそうに彼は笑った。
「気持ち、って?」
目の前に置かれた箱を手に取る。
淡いピンクに濃い赤のリボンを掛けたようなデザインの包装紙だった。持ち上げてみると中身がないのではないかと思うほどに軽い。箱の裏を止めたリボンの形をしたシールをペリリと音を立てて剥がしてその包装を解くと、中からはやわらかそうなベルベットが貼り付けられた箱が出てきた。箱の一面に切れ込みが入っていて、おそらくはそこから中身を取り出すようになっているのだろう。
小さな箱。小さな中身。アクセサリーだろうか。そう考えた瞬間、鼓動が早まった。
折りしも季節はクリスマス間近だ。キリスト教の大切な祭を『恋人たちの聖夜』などという表現をするのは失礼ではないかとも思うこともあるけれど、それでもその華やかな響きに憧れるのは、それなりの年齢の男女ならば仕方のないことだろう。寂しいことに、今までのわたしには全く縁がなかったけれど。
「えっと……?」
そっと目だけを上げて彼を見る。穏やかなまなざしが小さく頷いた。開けてみてと、声にならない声に急かされて、箱の切れ込みに指を引っ掛けた。ぱくんと小さな手応えがした。
「う……わっ」
ハート型をした薄いピンクの宝石が、箱の中からわたしをじっと見上げていた。
-つづく-
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