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2006年11月23日 (木)
「えっ?」
彼の手の中にあったのは、タバコの箱によく似たものだった。ポップな書体で書かれた『フィット感抜群』という文字が、電灯を映し込んだようにきらりと光る。
「こんどー……む……?」
ぼんやりと同じ言葉を繰り返した。どうしてそんなものがここにと思いかけて、自分の中から出てきた答えに顔が熱くなる。頬を手で押さえて天井を眺めるようにして、彼と彼の手の中のものから視線をそらした。
「全く、あの人はいったい何を考えて……」
曖昧な顔を続けたまま、シズくんはわたしの隣にやや乱暴にどさりと腰を降ろした。ブツブツ言いながらも手の中の箱に視線を注いでいる。
「あ、じゃあ有理の言ってた『その下の毛布』って……?」
「見てみる? なんとなく検討つくけど」
溜息をつきながら立ち上がると、彼はソファの下部内蔵の引き出しを開けた。つられるように立ち上がり、彼の行動を見つめる。
予想通りというべきか予想以上というべきか、引き出しの中にはきちんと畳まれた数枚のタオルとシーツ、枕のようなクッション、やわらかそうな毛布、そして数個のボックスティッシュが並んでいた。これはどう見ても男女の蜜事の必需品で、その、つまり。
「ホントに、何考えてんだあの人たちは。店だぞ、ここ」
深い溜息をついて苦笑いを浮かべてガリガリと頭を掻いて、けれど彼はなぜか大きく頷いた。
「ま、いっか。せっかくの好意だし、使わせてもらおうかな」
「えっ?」
けれど、わたしの疑問には反応もせず、彼はシーツを引っ張り出した。背もたれを一旦強く引き上げてから倒して、全面をフラットにする。その上にシーツを掛ける。片手での作業はひどくやりずらそうだったけれどさすがに手伝うことはできなくて、わたしは彼の行動を黙って見おろしていた。
「さて、と」
丁寧にシーツをソファに被せてしわを伸ばすと、シーツの上からぽんぽんとソファを叩いて満足そうに一つ頷いて、そして彼は立ち上がった。顔の角度を少し変えただけで彼の視線はわたしを真正面から捕らえる。妖しげな光を浮かべたその瞳は。
「ね、美雪さん」
-つづく-
彼の手の中にあったのは、タバコの箱によく似たものだった。ポップな書体で書かれた『フィット感抜群』という文字が、電灯を映し込んだようにきらりと光る。
「こんどー……む……?」
ぼんやりと同じ言葉を繰り返した。どうしてそんなものがここにと思いかけて、自分の中から出てきた答えに顔が熱くなる。頬を手で押さえて天井を眺めるようにして、彼と彼の手の中のものから視線をそらした。
「全く、あの人はいったい何を考えて……」
曖昧な顔を続けたまま、シズくんはわたしの隣にやや乱暴にどさりと腰を降ろした。ブツブツ言いながらも手の中の箱に視線を注いでいる。
「あ、じゃあ有理の言ってた『その下の毛布』って……?」
「見てみる? なんとなく検討つくけど」
溜息をつきながら立ち上がると、彼はソファの下部内蔵の引き出しを開けた。つられるように立ち上がり、彼の行動を見つめる。
予想通りというべきか予想以上というべきか、引き出しの中にはきちんと畳まれた数枚のタオルとシーツ、枕のようなクッション、やわらかそうな毛布、そして数個のボックスティッシュが並んでいた。これはどう見ても男女の蜜事の必需品で、その、つまり。
「ホントに、何考えてんだあの人たちは。店だぞ、ここ」
深い溜息をついて苦笑いを浮かべてガリガリと頭を掻いて、けれど彼はなぜか大きく頷いた。
「ま、いっか。せっかくの好意だし、使わせてもらおうかな」
「えっ?」
けれど、わたしの疑問には反応もせず、彼はシーツを引っ張り出した。背もたれを一旦強く引き上げてから倒して、全面をフラットにする。その上にシーツを掛ける。片手での作業はひどくやりずらそうだったけれどさすがに手伝うことはできなくて、わたしは彼の行動を黙って見おろしていた。
「さて、と」
丁寧にシーツをソファに被せてしわを伸ばすと、シーツの上からぽんぽんとソファを叩いて満足そうに一つ頷いて、そして彼は立ち上がった。顔の角度を少し変えただけで彼の視線はわたしを真正面から捕らえる。妖しげな光を浮かべたその瞳は。
「ね、美雪さん」
-つづく-
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