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2005年12月24日 (土)
「や、やだちょっと。は、恥ずかしい、じゃないですか……」
「ごめんごめん」
くすくすと笑いながら、ユーキさんは自分のカップを取り上げた。真っ黒な液体が入っていた。多分、ブラックコーヒー。彼にそんなつもりはないんだろうけど、なんだか年齢の差を見せ付けられたような気がする。ミルクが入ってないと飲めないあたしと違って、そういうのが美味しいって思う人なんだろうな。ユーキさん、おとなだもんね。
どうしよう。あたし、どうしよう。
「あの、ユーキさん」
声をかけると、彼はカップから眼を上げてあたしを見た。
「あたし、その。ええと……」
スカートのポケットから取り出したミニタオルで手のひらの汗を拭きながら、あたしは懸命に考えた。どう言っていいのかわからない。どう言おう。どんなふうに言ったらわかってもらえるんだろう。そっと視線を向けると、彼は軽く首を傾けたままあたしをじっと見てくれていた。優しく細まったまなざしがどうしたのと問い掛けてくれている。
「あの、あたしっ」
手の中のミニタオルを握って、絞るように握りしめた。
「あたし、ユーキさんのこと、好きになっちゃった、みたい、なんです」
「そうなの? それはありがと」
そう言うと、ユーキさんはくすくすと笑う。どう見ても本気に取られているようには思えない。
「違うんです。本気で聞いてください。あたし、ユーキさんが好きなんです。好きに、なっちゃったんです!」
小声で、でも勇気を振り絞ってちゃんと言った途端、彼の口からカップが離れてがしゃんとテーブルに置かれた。何も言ってくれなかった。その沈黙に耐えられなくて、でもそれ以上は何を言うこともできなくて、あたしは俯いて手の中で可哀想なくらいに握りしめられたクマを見つめていた。
唐突に何を言い出すんだろうと思ってるんだろうか。からかってると思われてるだろうか。
じゃあ、前に綺麗だって言ってくれたのも可愛いって言ってくれたのも、好きだって何回も誘ってくれたのも、嘘だったんだろうか。それとも、高校生なんて子どもだと思ってからかっただけで、こないだのことも遊びで、ちょっと気が向いたからとかで一回えっちしただけだったんだろうか。もしそうだったら、どうしよう。
もう好きになっちゃったのに。
「千紗ちゃん」
数十秒か、それとも数秒か。長くて短い沈黙のあと、彼は低い声であたしの名前を呼んだ。あたしをじっと見ていた。言葉にできない不安を感じるような暗い目だった。
「ありがとう、千紗ちゃん」
ぽつりと呟くように彼は言った。言葉は『ありがとう』だけど、でも喜んでくれているようには見えなかった。あたし、断られるんだろうか。
どうしよう、涙が出そう。
「でも、千紗ちゃん。俺はね、普通じゃないんだ」
聞き取れないくらい低い声で、彼は言った。
「深入りしないほうが、いいと思うよ」
どういう意味?
-つづく-
「ごめんごめん」
くすくすと笑いながら、ユーキさんは自分のカップを取り上げた。真っ黒な液体が入っていた。多分、ブラックコーヒー。彼にそんなつもりはないんだろうけど、なんだか年齢の差を見せ付けられたような気がする。ミルクが入ってないと飲めないあたしと違って、そういうのが美味しいって思う人なんだろうな。ユーキさん、おとなだもんね。
どうしよう。あたし、どうしよう。
「あの、ユーキさん」
声をかけると、彼はカップから眼を上げてあたしを見た。
「あたし、その。ええと……」
スカートのポケットから取り出したミニタオルで手のひらの汗を拭きながら、あたしは懸命に考えた。どう言っていいのかわからない。どう言おう。どんなふうに言ったらわかってもらえるんだろう。そっと視線を向けると、彼は軽く首を傾けたままあたしをじっと見てくれていた。優しく細まったまなざしがどうしたのと問い掛けてくれている。
「あの、あたしっ」
手の中のミニタオルを握って、絞るように握りしめた。
「あたし、ユーキさんのこと、好きになっちゃった、みたい、なんです」
「そうなの? それはありがと」
そう言うと、ユーキさんはくすくすと笑う。どう見ても本気に取られているようには思えない。
「違うんです。本気で聞いてください。あたし、ユーキさんが好きなんです。好きに、なっちゃったんです!」
小声で、でも勇気を振り絞ってちゃんと言った途端、彼の口からカップが離れてがしゃんとテーブルに置かれた。何も言ってくれなかった。その沈黙に耐えられなくて、でもそれ以上は何を言うこともできなくて、あたしは俯いて手の中で可哀想なくらいに握りしめられたクマを見つめていた。
唐突に何を言い出すんだろうと思ってるんだろうか。からかってると思われてるだろうか。
じゃあ、前に綺麗だって言ってくれたのも可愛いって言ってくれたのも、好きだって何回も誘ってくれたのも、嘘だったんだろうか。それとも、高校生なんて子どもだと思ってからかっただけで、こないだのことも遊びで、ちょっと気が向いたからとかで一回えっちしただけだったんだろうか。もしそうだったら、どうしよう。
もう好きになっちゃったのに。
「千紗ちゃん」
数十秒か、それとも数秒か。長くて短い沈黙のあと、彼は低い声であたしの名前を呼んだ。あたしをじっと見ていた。言葉にできない不安を感じるような暗い目だった。
「ありがとう、千紗ちゃん」
ぽつりと呟くように彼は言った。言葉は『ありがとう』だけど、でも喜んでくれているようには見えなかった。あたし、断られるんだろうか。
どうしよう、涙が出そう。
「でも、千紗ちゃん。俺はね、普通じゃないんだ」
聞き取れないくらい低い声で、彼は言った。
「深入りしないほうが、いいと思うよ」
どういう意味?
-つづく-
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