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2006年07月11日 (火)
スーパーと併設された専門店の建ち並ぶファッションフロアのその一角は、浴衣で埋め尽くされていた。浴衣、帯、下駄が一万円以下で揃う手軽なセットから、一流デザイナーの名を冠するブランド物まで、値段も様々だ。それらを通りすがりに軽い気持ちで眺めていると、千紗は強く手を引かれた。
千紗の恋人であり、結城財閥の御曹司でもある和真にとって、お手軽値段の商品は選択の範囲外だ。どうせなら良い物を選べと、特設会場の斜め向かいにある老舗の呉服屋へと引っ張り込まれてしまう。何がなんだかわからないうちに千紗は浴衣と帯を選ばされ、有無を言わさず店舗の奥の畳スペースに連れて行かれた。あっという間に、選んだばかりの浴衣を手馴れた店員に着付けられる。
支払いは千紗が着替え終わるよりも前に、和真の財布に十数枚と差し込まれたカードで既に済んでいるのはわかっていた。いつものことと言えばいつものことなのだが、父親が早くに亡くなったあと母親と二人で倹しい暮らしを送る千紗にとって、その行為は無駄遣いにも思えるため、なかなか素直に受け取れない。
「あ、あの……」
「じゃあ、行こうか」
ためらいがちに目を上げた千紗に笑顔と抱き寄せる腕が寄ってくる。
「ありがとうございました」
千紗に浴衣を着付けてくれた中年の女性店員が、店を出る二人に笑顔で頭を下げる。軽い笑顔でそれに応える和真の横顔に、先程見せた驚愕の表情は跡形もない。
さっきのあの顔って、どういう意味だったんだろう。
気付かれないよう、千紗はそっと視線だけを上げて隣の顔を盗み見た。
-つづく-
千紗の恋人であり、結城財閥の御曹司でもある和真にとって、お手軽値段の商品は選択の範囲外だ。どうせなら良い物を選べと、特設会場の斜め向かいにある老舗の呉服屋へと引っ張り込まれてしまう。何がなんだかわからないうちに千紗は浴衣と帯を選ばされ、有無を言わさず店舗の奥の畳スペースに連れて行かれた。あっという間に、選んだばかりの浴衣を手馴れた店員に着付けられる。
支払いは千紗が着替え終わるよりも前に、和真の財布に十数枚と差し込まれたカードで既に済んでいるのはわかっていた。いつものことと言えばいつものことなのだが、父親が早くに亡くなったあと母親と二人で倹しい暮らしを送る千紗にとって、その行為は無駄遣いにも思えるため、なかなか素直に受け取れない。
「あ、あの……」
「じゃあ、行こうか」
ためらいがちに目を上げた千紗に笑顔と抱き寄せる腕が寄ってくる。
「ありがとうございました」
千紗に浴衣を着付けてくれた中年の女性店員が、店を出る二人に笑顔で頭を下げる。軽い笑顔でそれに応える和真の横顔に、先程見せた驚愕の表情は跡形もない。
さっきのあの顔って、どういう意味だったんだろう。
気付かれないよう、千紗はそっと視線だけを上げて隣の顔を盗み見た。
-つづく-
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