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2006年07月11日 (火)
なんで、こうなっちゃったんだろう?
内心溜息混じりに千紗は顔を上げた。
等身大の鏡に映るのは、白地に淡いピンクで描かれた桜模様の浴衣を着た、自らの姿。白地に薄紫色と薄桃色で交互にラインの入った帯は大きなリボン型に結ばれている。普段はまっすぐ肩に落ちているだけの髪は高く結い上げられ、花を形どった半透明のかんざしで飾られていた。髪の流れに沿って差し込まれた細い髪飾りにはラインストーンが嵌め込まれており、動くたびにきらきらと光る。
嬉しくないことはないんだけど、でも。
手早く店員が外していた値段タグを思い出し、千紗は大きな溜息をついた。
浴衣、帯、浴衣用の下着、髪飾り、バッグと下駄。
これ全部って、いくらぐらいしたのかな。なんでいっつもこんなことするんだろ。そりゃあ、浴衣は実はちょっと欲しかったんだけど、だから嬉しいけど、でも……。
「千紗ちゃん? どうしたの?」
畳敷きの店内の一角に置かれた、時代がかったついたての向こうから声が掛かった。着付けを終えても五分以上も出てこない千紗にいぶかしんでいるのだろう。
「はぁい。今行きますー」
千紗はポーチから取り出した香り付きリップを唇に素早く塗り、鏡に背を向けた。ゆっくりと、ついたてと壁の隙間に足を進める。
「お待たせー」
軽い詫びのこもった言葉に返事はなかった。ただ、息を飲む音が聞こえた。
上目遣いでおそるおそる顔を上げる千紗の目の前、ソフトシャツとブラックジーンズを着た彼女の年上の恋人は、声もなく立ち尽くしていた。
-つづく-
内心溜息混じりに千紗は顔を上げた。
等身大の鏡に映るのは、白地に淡いピンクで描かれた桜模様の浴衣を着た、自らの姿。白地に薄紫色と薄桃色で交互にラインの入った帯は大きなリボン型に結ばれている。普段はまっすぐ肩に落ちているだけの髪は高く結い上げられ、花を形どった半透明のかんざしで飾られていた。髪の流れに沿って差し込まれた細い髪飾りにはラインストーンが嵌め込まれており、動くたびにきらきらと光る。
嬉しくないことはないんだけど、でも。
手早く店員が外していた値段タグを思い出し、千紗は大きな溜息をついた。
浴衣、帯、浴衣用の下着、髪飾り、バッグと下駄。
これ全部って、いくらぐらいしたのかな。なんでいっつもこんなことするんだろ。そりゃあ、浴衣は実はちょっと欲しかったんだけど、だから嬉しいけど、でも……。
「千紗ちゃん? どうしたの?」
畳敷きの店内の一角に置かれた、時代がかったついたての向こうから声が掛かった。着付けを終えても五分以上も出てこない千紗にいぶかしんでいるのだろう。
「はぁい。今行きますー」
千紗はポーチから取り出した香り付きリップを唇に素早く塗り、鏡に背を向けた。ゆっくりと、ついたてと壁の隙間に足を進める。
「お待たせー」
軽い詫びのこもった言葉に返事はなかった。ただ、息を飲む音が聞こえた。
上目遣いでおそるおそる顔を上げる千紗の目の前、ソフトシャツとブラックジーンズを着た彼女の年上の恋人は、声もなく立ち尽くしていた。
-つづく-
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