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2006年06月19日 (月)
「さっきから気になってたんだ。なんか変だって」
なにが、へんなの?
訊きたいけど、怖くて訊けない。聞きたくない。
「なんで、姉さんを葵さんって言うの?」
は?
「兄貴のことだって、そうだし」
え?
「俺のことは結城さんって言うのに」
「だって、ユーキさんはユーキさんでしょ?」
ようやく意味のわかった言葉に確認に近い疑問を返す。言ってることはわかるけど、何を言わんとしているのかが全然わからない。手のひらに変な汗が沸いてくるのがわかる。ユーキさんはあたしの言葉に不服そうに眉をひそめて、優しく睨んだ。
「そりゃそうだけど。でも俺一人が名字って、千紗ちゃん、冷たくない?」
えっとこれは、もしかして……。
「和真って呼んでよ」
「はえ?」
間抜けな声を上げたまま、口が閉まらない。高まった鼓動が徐々に弱まって行く。安堵と脱力でぺちゃりと座席に伏せそうになった。あたしのリアクションに驚いたのか、彼の両手が肩から離れる。真ん丸な眼であたしを見てるのがなんとなくわかる、けど。
「どうしたの?」
「ユーキさん、可愛いーっ」
曖昧に笑いながら力を取り戻すと、妙に真剣な眼と合う。ユーキさんがそんなつまんないこと気にしてたなんて、全然思わなかった。
「だから、『結城さん』じゃなくて」
子どもみたいなその表情。
あたしよりずっと年上なのに。おとななのに。おとなの男の人なのに。えっちのときはあんなにひどいことするくせに。ついさっきまでご主人さまだったくせに。
「そんなこと気にしてたんだ?」
「そんなことってなんだよ。重要なんだよ、俺にとっては」
そういうと、ぷいとそっぽを向く。
あ。拗ねた。
-つづく-
なにが、へんなの?
訊きたいけど、怖くて訊けない。聞きたくない。
「なんで、姉さんを葵さんって言うの?」
は?
「兄貴のことだって、そうだし」
え?
「俺のことは結城さんって言うのに」
「だって、ユーキさんはユーキさんでしょ?」
ようやく意味のわかった言葉に確認に近い疑問を返す。言ってることはわかるけど、何を言わんとしているのかが全然わからない。手のひらに変な汗が沸いてくるのがわかる。ユーキさんはあたしの言葉に不服そうに眉をひそめて、優しく睨んだ。
「そりゃそうだけど。でも俺一人が名字って、千紗ちゃん、冷たくない?」
えっとこれは、もしかして……。
「和真って呼んでよ」
「はえ?」
間抜けな声を上げたまま、口が閉まらない。高まった鼓動が徐々に弱まって行く。安堵と脱力でぺちゃりと座席に伏せそうになった。あたしのリアクションに驚いたのか、彼の両手が肩から離れる。真ん丸な眼であたしを見てるのがなんとなくわかる、けど。
「どうしたの?」
「ユーキさん、可愛いーっ」
曖昧に笑いながら力を取り戻すと、妙に真剣な眼と合う。ユーキさんがそんなつまんないこと気にしてたなんて、全然思わなかった。
「だから、『結城さん』じゃなくて」
子どもみたいなその表情。
あたしよりずっと年上なのに。おとななのに。おとなの男の人なのに。えっちのときはあんなにひどいことするくせに。ついさっきまでご主人さまだったくせに。
「そんなこと気にしてたんだ?」
「そんなことってなんだよ。重要なんだよ、俺にとっては」
そういうと、ぷいとそっぽを向く。
あ。拗ねた。
-つづく-
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