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2006年06月02日 (金)
「俺は、俺の母親がいなくなったのは、あいつらのせいだと思ってたんだ。言い訳じゃないけど俺もまだ子どもだったから、そうやって二人のせいにするしかなかったんだよな。今から思えば、和真にもその母親にも、随分とひどいことをした。多分あいつは、今もそれを忘れてないんだろう。まあ、ムリもないけど」
ぽつぽつと言い辛そうに話すと、司さんはあたしの視線を避けるように顔を上げて、まるで運転に集中してるみたいに真正面を見た。メガネに街の灯りが乱反射して、その表情は全然見えないけど。
「でも、それって、昔のことでしょ?」
「いや、今もいろいろと周囲の状況なんかあってね、とてもじゃないけど溝は深まるばかり。まあ、俺も悪いんだけどさ。千紗ちゃんにも、和真との関係を知らずに手ぇ出しちゃったし」
「え、でもあのときは」
確か、途中で。
「うん、セックスはしてないけど。でも俺らは前から険悪だし、互いに話できるような状況じゃないから。挙句、姉さんまであれだしさ。ホント、うちって節操ない人間が揃ってるよな、親父のこと責められないよな」
乾いた声で司さんは笑うけど、全然笑いごとじゃないよ。
それってつまり、ユーキさんはあたしと司さんがしちゃったって思ってるってことじゃない。ちゃんと誤解くらい解いといてよねっ!
抗議の意味をこめて睨みつけると、司さんはその場を取り繕うように咳ばらいをした。赤信号にちょっと乱暴にブレーキを踏み込んで車を停めて、そして急いで新しいタバコを取り出す。火を点ける横顔が一瞬だけ強く照らし出される。ふうっと息を吐き出す唇を、あたしはじっと見つめた。
「ま、そんな感じ。わかった?」
「うん、まあ。なんとなく」
ゆらゆらと昇って行く白い煙は、キスしたとき苦い。そのことを思い出しても、今のあたしはもう怖いとは思わない。司さんと二人っきりでも怖くない。そのことがいいことかどうか、それはわからないけど。
「司さんは、ユーキさんが嫌いってわけじゃないんだ?」
「好きかと訊かれると困るけど、そうだね、特に嫌いってわけじゃないよ」
指先でタバコを弾きながら司さんは頷いた。
-つづく-
ぽつぽつと言い辛そうに話すと、司さんはあたしの視線を避けるように顔を上げて、まるで運転に集中してるみたいに真正面を見た。メガネに街の灯りが乱反射して、その表情は全然見えないけど。
「でも、それって、昔のことでしょ?」
「いや、今もいろいろと周囲の状況なんかあってね、とてもじゃないけど溝は深まるばかり。まあ、俺も悪いんだけどさ。千紗ちゃんにも、和真との関係を知らずに手ぇ出しちゃったし」
「え、でもあのときは」
確か、途中で。
「うん、セックスはしてないけど。でも俺らは前から険悪だし、互いに話できるような状況じゃないから。挙句、姉さんまであれだしさ。ホント、うちって節操ない人間が揃ってるよな、親父のこと責められないよな」
乾いた声で司さんは笑うけど、全然笑いごとじゃないよ。
それってつまり、ユーキさんはあたしと司さんがしちゃったって思ってるってことじゃない。ちゃんと誤解くらい解いといてよねっ!
抗議の意味をこめて睨みつけると、司さんはその場を取り繕うように咳ばらいをした。赤信号にちょっと乱暴にブレーキを踏み込んで車を停めて、そして急いで新しいタバコを取り出す。火を点ける横顔が一瞬だけ強く照らし出される。ふうっと息を吐き出す唇を、あたしはじっと見つめた。
「ま、そんな感じ。わかった?」
「うん、まあ。なんとなく」
ゆらゆらと昇って行く白い煙は、キスしたとき苦い。そのことを思い出しても、今のあたしはもう怖いとは思わない。司さんと二人っきりでも怖くない。そのことがいいことかどうか、それはわからないけど。
「司さんは、ユーキさんが嫌いってわけじゃないんだ?」
「好きかと訊かれると困るけど、そうだね、特に嫌いってわけじゃないよ」
指先でタバコを弾きながら司さんは頷いた。
-つづく-
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