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2006年05月31日 (水)
「千紗ちゃんさあ」
「司さんって」
二人同時に声を出して、そして同時に黙った。目が合うと笑ってしまう。
千紗ちゃんからどうぞ。ううん、司さんから。いや俺はあとでいいから。あたしこそ。そんな感じで二、三回譲り合って、そして結局あたしから話し始めた。
ホントは、司さんが言いかけたことのほうがずっと気になるんだけど。あたしの疑問なんて、たいしたことない……かもしれないし。訊くまでもないのかもしれないし。
「前から気になってたんだけど。司さんとユーキさんって、そんなに仲悪いの?」
「なんで?」
タバコを咥え込んだ唇が、司さんがしゃべるたびにピョコピョコ動くのがちょっとおかしい。軽く頭を傾けると、やわらかそうな前髪がさらりと流れる。
「え、なんでって。だって」
結城の跡目争いで、昔から仲が悪かった兄弟がまるで社内で戦争でも起こしそうなほど険悪になっていると雑誌に書かれていたからと言うと、司さんは眉をひそめた。
「まあ……そう見えても、ムリはないけどね」
長くなったタバコの灰を指先で弾いて落としながら、困ったように司さんは笑った。
「本当は仲悪くないの? そう見えてるだけ?」
「いや、うーん……。どうだろう?」
どうだろうって、わかんないから訊いてんじゃない。
そう思ったけど、司さんの歯切れの悪い言葉とちょっと暗い目に、あたしは口を出せなかった。何度か頬を歪めるように唇を噛んで眉をひそめて、そして彼は溜息をついた。
「仲良くは、ないかな。残念だけど」
そう言いながら、司さんはまだ長いタバコを、ムリヤリ灰皿にねじこんだ。どこかイラついたような仕草に、言いたくないことを訊いてるんだろうなとそのときちょっと思ったけど、それでもあたしは黙っていた。
「昔の話なんだけどね」
「うん」
呟くような言葉に小さく頷くと、司さんは一瞬だけあたしを見た。
-つづく-
「司さんって」
二人同時に声を出して、そして同時に黙った。目が合うと笑ってしまう。
千紗ちゃんからどうぞ。ううん、司さんから。いや俺はあとでいいから。あたしこそ。そんな感じで二、三回譲り合って、そして結局あたしから話し始めた。
ホントは、司さんが言いかけたことのほうがずっと気になるんだけど。あたしの疑問なんて、たいしたことない……かもしれないし。訊くまでもないのかもしれないし。
「前から気になってたんだけど。司さんとユーキさんって、そんなに仲悪いの?」
「なんで?」
タバコを咥え込んだ唇が、司さんがしゃべるたびにピョコピョコ動くのがちょっとおかしい。軽く頭を傾けると、やわらかそうな前髪がさらりと流れる。
「え、なんでって。だって」
結城の跡目争いで、昔から仲が悪かった兄弟がまるで社内で戦争でも起こしそうなほど険悪になっていると雑誌に書かれていたからと言うと、司さんは眉をひそめた。
「まあ……そう見えても、ムリはないけどね」
長くなったタバコの灰を指先で弾いて落としながら、困ったように司さんは笑った。
「本当は仲悪くないの? そう見えてるだけ?」
「いや、うーん……。どうだろう?」
どうだろうって、わかんないから訊いてんじゃない。
そう思ったけど、司さんの歯切れの悪い言葉とちょっと暗い目に、あたしは口を出せなかった。何度か頬を歪めるように唇を噛んで眉をひそめて、そして彼は溜息をついた。
「仲良くは、ないかな。残念だけど」
そう言いながら、司さんはまだ長いタバコを、ムリヤリ灰皿にねじこんだ。どこかイラついたような仕草に、言いたくないことを訊いてるんだろうなとそのときちょっと思ったけど、それでもあたしは黙っていた。
「昔の話なんだけどね」
「うん」
呟くような言葉に小さく頷くと、司さんは一瞬だけあたしを見た。
-つづく-
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