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2006年05月27日 (土)
「大丈夫、千紗ちゃん」
カチャカチャと手枷を外してくれる長い指も抱き起こしてくれる手も、似てるけど。すごく似てるけど。
「遅くなってごめん。すぐに戻ってくるつもりだったんだけど、急用が入っちゃって」
あたしを気遣ってくれているようなその眼も。
「危ないのわかってたのに、本当にごめん」
優しい声は、言葉の選び方まで似てる。
「起きられる? ムリしなくていいから。急に動くとスジを痛めるよ」
なのになんで、タバコのにおいがするの?
「とりあえず、服着ようね」
まるで風邪で寝込んでいた子どもを相手にするように、司さんはあたしの全身を、特に汚れたところをおしぼりみたいな布で丁寧に拭って、そして服を着せてくれた。
それは前にユーキさんがしてくれたことにあまりにも似ていたから、あたしは新しく溢れてきた涙をごしごしと子どものようにこぶしでこすった。それに気付いた司さんが新しいおしぼりをくれた。汗も涙も鼻水も全部ごっちゃに拭き取って、ドロドロに汚れたおしぼりを平気な顔で受け取った司さんだけど、でもあのときあたしにひどいことをしたのってこの人だったのよね、なんてちょっと思い出したりして。今日だって、ここに連れてきたのは司さんだし。葵さんがこう言う人だってわかってて、それでもあたしと二人っきりにしたみたいだったし。
それでももう、恨めないけど。嫌いになれないけど。怖いとさえ、思わなくなってしまったんだけど。
「大丈夫? 立てる?」
困ったなあ。
ちょっと眉をひそめてあたしを見るその顔に頷くと、あたしが反応を示したことにほっとしたように軽く溜息をついて、そして曖昧な笑みを浮かべた。肩を抱くように、あたしが立ち上がるのを手伝ってくれる。
-つづく-
カチャカチャと手枷を外してくれる長い指も抱き起こしてくれる手も、似てるけど。すごく似てるけど。
「遅くなってごめん。すぐに戻ってくるつもりだったんだけど、急用が入っちゃって」
あたしを気遣ってくれているようなその眼も。
「危ないのわかってたのに、本当にごめん」
優しい声は、言葉の選び方まで似てる。
「起きられる? ムリしなくていいから。急に動くとスジを痛めるよ」
なのになんで、タバコのにおいがするの?
「とりあえず、服着ようね」
まるで風邪で寝込んでいた子どもを相手にするように、司さんはあたしの全身を、特に汚れたところをおしぼりみたいな布で丁寧に拭って、そして服を着せてくれた。
それは前にユーキさんがしてくれたことにあまりにも似ていたから、あたしは新しく溢れてきた涙をごしごしと子どものようにこぶしでこすった。それに気付いた司さんが新しいおしぼりをくれた。汗も涙も鼻水も全部ごっちゃに拭き取って、ドロドロに汚れたおしぼりを平気な顔で受け取った司さんだけど、でもあのときあたしにひどいことをしたのってこの人だったのよね、なんてちょっと思い出したりして。今日だって、ここに連れてきたのは司さんだし。葵さんがこう言う人だってわかってて、それでもあたしと二人っきりにしたみたいだったし。
それでももう、恨めないけど。嫌いになれないけど。怖いとさえ、思わなくなってしまったんだけど。
「大丈夫? 立てる?」
困ったなあ。
ちょっと眉をひそめてあたしを見るその顔に頷くと、あたしが反応を示したことにほっとしたように軽く溜息をついて、そして曖昧な笑みを浮かべた。肩を抱くように、あたしが立ち上がるのを手伝ってくれる。
-つづく-
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