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2006年03月22日 (水)
子どもの頭をなでるように頭を手のひらで強くこすると、短く逆立った髪から次々と水が弾ける。それがおもしろくて、あたしは何度も髪から水を飛ばした。ユーキさんはあたしが遊んでるってことは全然気付いてないみたいで、立てひざのまま身動きもしない。大きな身体で黙って俯いてるユーキさんは、叱られている子犬みたいだった。
「ね。着替えようよ」
「――いいんだ」
俯いたままユーキさんは呟くように言った。
バスマットの上にぽとりと水が落ちて、ユーキさんは慌てたようにあたしから顔をそむけて、手首の辺りで口を押さえた。くぐもったうめき声と一緒に、濡れたシャツが張り付いた大きな肩が揺れる。
「俺のことなんて、どうでもいいんだよ」
「よくないよー。濡れたままでいると風邪引いちゃうよー」
もしかして、ホントに泣いてるのかな? 男の人でもユーキさんでも、泣いちゃったりするんだなあ。
「ユーキさんは、結城グループを背負って立つ身でしょー。ダメだよ、そんなんじゃ」
あたしのせいで風邪なんか引いちゃったら、どうするのよ。
「結城なんて、どうでもいいっ!」
唐突にユーキさんは顔を上げた。赤く滲んだ目とつりあがった眉があたしを睨みつける。唇の端が細かく震えていた。今まで一度も見たことのない、すごい形相だった。
「あのクソ野郎、殺してやる」
「だめだめ、そんなことしたら絶対にだめっ」
物騒な言葉を吐き捨てて、びしょ濡れのままお風呂場を出ようとするユーキさんの腰にあたしは慌てて抱きついた。
「だめだよ、お兄さんでしょ」
「あんなやつ、兄貴じゃない!」
「お兄さんだよ! 兄弟でそんなの、絶対にだめっ!」
「放せ!」
-つづく-
サイト版 プッシーキャットテイル
「ね。着替えようよ」
「――いいんだ」
俯いたままユーキさんは呟くように言った。
バスマットの上にぽとりと水が落ちて、ユーキさんは慌てたようにあたしから顔をそむけて、手首の辺りで口を押さえた。くぐもったうめき声と一緒に、濡れたシャツが張り付いた大きな肩が揺れる。
「俺のことなんて、どうでもいいんだよ」
「よくないよー。濡れたままでいると風邪引いちゃうよー」
もしかして、ホントに泣いてるのかな? 男の人でもユーキさんでも、泣いちゃったりするんだなあ。
「ユーキさんは、結城グループを背負って立つ身でしょー。ダメだよ、そんなんじゃ」
あたしのせいで風邪なんか引いちゃったら、どうするのよ。
「結城なんて、どうでもいいっ!」
唐突にユーキさんは顔を上げた。赤く滲んだ目とつりあがった眉があたしを睨みつける。唇の端が細かく震えていた。今まで一度も見たことのない、すごい形相だった。
「あのクソ野郎、殺してやる」
「だめだめ、そんなことしたら絶対にだめっ」
物騒な言葉を吐き捨てて、びしょ濡れのままお風呂場を出ようとするユーキさんの腰にあたしは慌てて抱きついた。
「だめだよ、お兄さんでしょ」
「あんなやつ、兄貴じゃない!」
「お兄さんだよ! 兄弟でそんなの、絶対にだめっ!」
「放せ!」
-つづく-
サイト版 プッシーキャットテイル
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