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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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メメント・アモル-1
2011年01月06日 (木)
「まだこんなの、取ってあったんだ……」
 押入れの一番奥でかわいそうなくらいほこりをかぶって転がっていた立方体は、あたしが小学校に上がる前にお隣のヒロ兄ちゃんがくれた修学旅行のお土産のクッキーの空箱だった。でもこれはもう空っぽよと苦笑いするお母さんに、それでもどうしても欲しいと握りしめて駄々をこね、他の宝物やお気に入りのおもちゃと一緒に、大切に大切にしまいこんでいた。
「あたしにもそんな頃があったよねー」
 お兄ちゃんがくれたってだけで、ただの空箱が宝物なんて。
 ボックスから引き抜いたティッシュで表面を拭う。さすがに十年が過ぎてヨレヨレになってしまっているけど、見慣れたネコのキャラクターは笑っているとも無表情ともつかないいつもの顔で、じっとこっちを見ていた。
「ま、いっか」
 ゴミ箱に放り込もうとして、手が止まる。少し考えてからあたしはほこりまみれになったティッシュだけを捨てた。
「これはこれで、思い出だし」
 うんと大きく頷いて壁の時計を見上げると、七時二分ほど前だった。いつの間にかすっかり夜になっていた。もうそろそろかな。あたしがそう思ったのとほとんど同時に、一階のドアがバタンと乱暴に開く音がした。
「まゆちゃんーっ! 浩樹くんたちが来たわよー」
「はーい」
 階段を伝って、階下のにぎやかな声が聞こえ始める。お招きに預かりましてと、いつものように上品な挨拶をする隣のおばさんと、いいから座って食べましょと応じる、元気すぎるくらい大きな声のお母さん。
 今日はヒロ兄ちゃんのお祝いパーティ。就職氷河期がささやかれる中、大手デパート系列会社に仕事が決まったってすごいことだし、お祝いの気持ちはもちろんあるけど、だからってお母さんみたいにはしゃいだりなんてできない。
 だってさ、だって――。
『通えない距離でもないんですけどね、でもまぁ、これも一つの機会ですから』
 一人暮らしをするんだとさわやかに笑って、いつものようにあたしの頭を撫でたヒロ兄ちゃんはきっと、あたしの気持ちには一生気づかないんだわ。

 -つづく-
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