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2009年10月21日 (水)
その日パパが帰ってきたのは、一時を少し回った辺りだった。リビングのソファに寝転んで、深夜番組を見ながら友だちとメールをしながら音楽を聴きながら雑誌を眺めていると、がちゃんバタンと乱暴にドアが開くのがわかった。続いて不規則な足音がドタドタとなだれ込んでくる。おーい、帰ったぞーと、大きな声が狭い廊下に響いた。
やっぱり、また飲んでる。
残業で忙しいのかもというかすかな希望を打ち破る間抜けな声が、おーい、おーいと何度も繰り返す。イラっとしながら、それでもあたしは玄関に向かった。こっちに背を向けるように玄関にうずくまって靴を脱ぐ、崩れたスーツ姿を本気で蹴りたくなる時もあるけど、でも。
「おかえり、パパ」
「お、春奈。まーだ起きてたのか」
肩越しに振り返ると、パパはしまりのない笑顔を見せた。
「まだ起きてたのなら、ちょうどよかった。ほら、食べろ食べろ」
ろれつの回らない口調で言いながら小さな紙袋を差し出してくる。どこかで見たことのあるロゴは、ちょっと前にテレビで取り上げてた超人気店のドーナッツの。
「それ、今すごく人気あるらしいぞ。春奈、食べたことあるか?」
「ううん、ないけど」
パパがしゃべるたび身動きするたび、お酒とタバコのにおいがもわっという感じでこっちへ流れてくる。思わず顔をしかめたあたしのことになんか気付かずに、パパはうんうんと満足そうに何度も頷いた。
「そうか、まだ春奈は食べたことなかったか。じゃあちょうどよかったな」
玄関にバッグを置いて、笑顔のままよっこいしょと口の中で言いながらパパは立ち上がった。そのままふらふらとリビングへ向かって歩き出した。よたよたしながら上着を脱いでネクタイを抜き取って、そのままぽいと廊下に捨てていく。
「あー、もうっ」
また始まった。
とりあえず玄関の二重施錠を確認してから、パパの服を拾って歩く。いつものことだからどうするのかも決まっている。リビングのパパのイスの背に上着とネクタイを掛けて、カバンを足元に置く。明日の朝これを見て、またやったとパパは頭をかかえるんだろう。そう言うの、かわいそうと思わなくもないけど。
「おー、ありがと、ありがと」
服を片付けるあたしにヘラヘラ笑いながら、パパはさっきまであたしが寝転んでいたソファにどかっと座った。角が当たって痛かったのか、ちょっと顔をしかめながらお尻の下から雑誌を抜き出してから改めてソファに座り直した。天井を見るように背もたれに頭を乗せて、ふうっと大きく息をつく。
-つづく-
やっぱり、また飲んでる。
残業で忙しいのかもというかすかな希望を打ち破る間抜けな声が、おーい、おーいと何度も繰り返す。イラっとしながら、それでもあたしは玄関に向かった。こっちに背を向けるように玄関にうずくまって靴を脱ぐ、崩れたスーツ姿を本気で蹴りたくなる時もあるけど、でも。
「おかえり、パパ」
「お、春奈。まーだ起きてたのか」
肩越しに振り返ると、パパはしまりのない笑顔を見せた。
「まだ起きてたのなら、ちょうどよかった。ほら、食べろ食べろ」
ろれつの回らない口調で言いながら小さな紙袋を差し出してくる。どこかで見たことのあるロゴは、ちょっと前にテレビで取り上げてた超人気店のドーナッツの。
「それ、今すごく人気あるらしいぞ。春奈、食べたことあるか?」
「ううん、ないけど」
パパがしゃべるたび身動きするたび、お酒とタバコのにおいがもわっという感じでこっちへ流れてくる。思わず顔をしかめたあたしのことになんか気付かずに、パパはうんうんと満足そうに何度も頷いた。
「そうか、まだ春奈は食べたことなかったか。じゃあちょうどよかったな」
玄関にバッグを置いて、笑顔のままよっこいしょと口の中で言いながらパパは立ち上がった。そのままふらふらとリビングへ向かって歩き出した。よたよたしながら上着を脱いでネクタイを抜き取って、そのままぽいと廊下に捨てていく。
「あー、もうっ」
また始まった。
とりあえず玄関の二重施錠を確認してから、パパの服を拾って歩く。いつものことだからどうするのかも決まっている。リビングのパパのイスの背に上着とネクタイを掛けて、カバンを足元に置く。明日の朝これを見て、またやったとパパは頭をかかえるんだろう。そう言うの、かわいそうと思わなくもないけど。
「おー、ありがと、ありがと」
服を片付けるあたしにヘラヘラ笑いながら、パパはさっきまであたしが寝転んでいたソファにどかっと座った。角が当たって痛かったのか、ちょっと顔をしかめながらお尻の下から雑誌を抜き出してから改めてソファに座り直した。天井を見るように背もたれに頭を乗せて、ふうっと大きく息をつく。
-つづく-
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